1 00:00:27,569 --> 00:00:29,446 短命のはずだった 2 00:00:36,787 --> 00:00:40,082 2ヵ月早く生まれてしまった 3 00:00:44,169 --> 00:00:47,047 命は長くないと みんなが思った 4 00:00:49,007 --> 00:00:52,386 そして父が家に ある物を持ち帰る 5 00:00:54,596 --> 00:00:55,722 靴の箱だ 6 00:01:00,185 --> 00:01:02,479 ﹁THIS LIFE﹂ 〝シドニ︱・ポワチエ著〟 7 00:01:02,604 --> 00:01:05,022 僕の埋葬用だった 8 00:01:12,447 --> 00:01:15,158 僕の人生には たくさんの–– 9 00:01:15,284 --> 00:01:19,997 比類なき すばらしい転機があった 10 00:01:25,169 --> 00:01:30,591 シドニー 11 00:01:35,470 --> 00:01:37,973 僕の世界はシンプルだった 12 00:01:40,726 --> 00:01:44,188 電気の存在さえ知らなかった 13 00:01:44,438 --> 00:01:46,899 1927年 バハマ キャット島 14 00:01:47,691 --> 00:01:51,820 家に水を流す 水道管というものが–– 15 00:01:51,945 --> 00:01:54,364 あることも知らなかった 16 00:01:56,867 --> 00:02:00,704 観察することで 世界を学んできた 17 00:02:00,829 --> 00:02:03,207 動物や鳥を見て–– 18 00:02:03,332 --> 00:02:06,668 それが何か 自力で理解していくんだ 19 00:02:12,174 --> 00:02:15,802 僕は兄弟の末っ子でね 20 00:02:16,386 --> 00:02:19,056 よくいじめられたものだ 21 00:02:19,181 --> 00:02:21,141 幼かった頃は–– 22 00:02:21,266 --> 00:02:25,395 家に置いていかれることが 多かった 23 00:02:26,230 --> 00:02:30,025 両親はトマト農園を営んでいた 24 00:02:32,152 --> 00:02:35,697 学校教育は ほとんど受けてない 25 00:02:37,032 --> 00:02:41,119 物事の価値観や善悪 自分が何者かなどは–– 26 00:02:41,245 --> 00:02:46,083 すべて両親から 学ぶしかなかったんだ 27 00:02:47,292 --> 00:02:49,586 いつも2人を見てた 28 00:02:49,711 --> 00:02:53,465 レジナルド&エブリン・ ポワチエ 29 00:02:50,045 --> 00:02:53,465 どんなふうに 互いを思いやるのか 30 00:02:53,590 --> 00:02:55,717 友達に対する振る舞いや 31 00:02:56,218 --> 00:02:59,346 村の人たちに対する態度とかね 32 00:03:00,222 --> 00:03:03,058 僕はそれをできる限りマネた 33 00:03:03,183 --> 00:03:06,728 両親の行動の結果を 見てきたからね 34 00:03:08,647 --> 00:03:10,983 フロリダ政府が–– 35 00:03:11,108 --> 00:03:15,571 バハマからの トマトの輸入を禁止して 36 00:03:16,071 --> 00:03:18,031 父の事業は破綻した 37 00:03:18,448 --> 00:03:21,243 母はナッソーへ送られ 僕を連れて–– 38 00:03:21,368 --> 00:03:24,288 家を探すことになったんだ 39 00:03:24,538 --> 00:03:28,876 1938年 バハマ ナッソ︱ 40 00:03:25,539 --> 00:03:28,876 船が港に近づくと 動く物が見えた 41 00:03:29,001 --> 00:03:32,171 カブトムシ型の物が 走ってくる 42 00:03:35,632 --> 00:03:37,718 母に質問すると–– 43 00:03:38,218 --> 00:03:41,430 “車よ”と言われた 44 00:03:42,181 --> 00:03:45,058 僕は“車って何?”と 45 00:03:45,934 --> 00:03:49,813 母の説明を聞き 興味をそそられたよ 46 00:03:51,607 --> 00:03:54,026 通りの店の窓をのぞくと–– 47 00:03:54,151 --> 00:03:56,778 さまざまな物を売ってた 48 00:03:56,904 --> 00:03:58,947 店内には女性がいて–– 49 00:03:59,072 --> 00:04:05,120 まったく同じ顔の女性と 向かい合ってるのが見えてね 50 00:04:05,579 --> 00:04:09,958 女性が動くと 向かい側の女性も同様に動く 51 00:04:10,834 --> 00:04:12,294 鏡だったんだ 52 00:04:12,419 --> 00:04:15,380 だが僕は鏡を知らなかった 53 00:04:15,506 --> 00:04:19,051 鏡の存在さえ知らなかったんだ 54 00:04:20,010 --> 00:04:25,098 世間知らずで 外見を気にしたこともなかった 55 00:04:26,099 --> 00:04:29,686 キャット島にいた 白人は1人だけ 56 00:04:29,811 --> 00:04:33,690 ナッソーでも白人を見たが–– 57 00:04:33,815 --> 00:04:36,652 それほど多くはなかった 58 00:04:37,027 --> 00:04:41,323 人口の90%は 黒人だったからね 59 00:04:42,908 --> 00:04:46,662 僕は同じ年頃の男子と つるんでた 60 00:04:46,787 --> 00:04:49,456 数ヵ月しないうちに–– 61 00:04:49,581 --> 00:04:51,834 友達3~4人が少年院へ 62 00:04:51,959 --> 00:04:57,339 息子が非行に走るのではと 心配した父は 僕を–– 63 00:04:58,090 --> 00:05:00,008 フロリダへ行かせた 64 00:05:00,926 --> 00:05:02,970 1942年 フロリダ州 マイアミ 65 00:05:03,679 --> 00:05:08,225 15歳でバハマを離れた時 僕は自分を理解していた 66 00:05:08,350 --> 00:05:12,563 10年半 キャット島で 暮らし–– 67 00:05:12,688 --> 00:05:15,023 4年半 ナッソーで過ごした 68 00:05:15,148 --> 00:05:19,111 その自己認識を持って フロリダ州マイアミへ 69 00:05:19,486 --> 00:05:24,950 船から降りた瞬間に フロリダの現実に言われた 70 00:05:25,534 --> 00:05:27,202 “勘違いするな” 71 00:05:27,327 --> 00:05:29,705 “有色人種専用” 72 00:05:29,121 --> 00:05:31,707 キャット島にいた時は 73 00:05:30,455 --> 00:05:34,001 オプラ・ウィンフリ︱ 74 00:05:31,832 --> 00:05:34,001 全員が黒人だった 75 00:05:34,126 --> 00:05:39,089 みんな パワフルで 善人で優しい 76 00:05:39,214 --> 00:05:40,549 そして黒人なの 77 00:05:40,799 --> 00:05:44,303 でも人種という概念はなかった 78 00:05:44,428 --> 00:05:47,806 生きてきた中で 見てきたものが–– 79 00:05:47,931 --> 00:05:51,226 彼の世界の すべてだったからよ 80 00:05:51,351 --> 00:05:54,188 その世界観で自分を理解してた 81 00:05:54,313 --> 00:05:58,692 だから彼は アメリカで困ることになる 82 00:05:59,234 --> 00:06:01,945 兄の家に置いてもらった 83 00:06:02,362 --> 00:06:04,615 アメリカで唯一の親戚だ 84 00:06:05,324 --> 00:06:07,075 マイアミでは兄に–– 85 00:06:07,201 --> 00:06:11,455 デパートの配達員の仕事を 紹介された 86 00:06:11,580 --> 00:06:15,751 ある女性の家への配達を 言い渡され–– 87 00:06:15,876 --> 00:06:19,087 自転車でマイアミビーチへ 88 00:06:19,213 --> 00:06:23,842 言われた住所に着いて 玄関前に立ち–– 89 00:06:23,967 --> 00:06:26,512 呼び鈴を鳴らした 90 00:06:27,346 --> 00:06:30,516 すると女性が出てきて言った 91 00:06:30,641 --> 00:06:32,893 “玄関で何をしてるの?” 92 00:06:33,393 --> 00:06:39,066 当然 僕の答えは “荷物を届けに来ました” 93 00:06:39,191 --> 00:06:42,152 彼女は “裏口へ回りな”と言い–– 94 00:06:42,277 --> 00:06:44,112 乱暴にドアを閉めた 95 00:06:44,238 --> 00:06:49,535 僕はそれまで人種差別を 経験したことがなかった 96 00:06:51,036 --> 00:06:53,080 理解できなかったんだ 97 00:06:53,205 --> 00:06:56,208 “目の前にいるのに なぜ裏口へ?” 98 00:06:56,333 --> 00:07:00,212 どうすべきか 分からなくて–– 99 00:07:00,337 --> 00:07:05,300 玄関前に荷物を 置いていくことにしたんだ 100 00:07:05,425 --> 00:07:09,888 そして仕事を終えて 兄の家へ帰ると–– 101 00:07:10,764 --> 00:07:13,267 家は真っ暗に見えた 102 00:07:14,893 --> 00:07:16,979 明かりがついてない 103 00:07:17,104 --> 00:07:20,899 疑問に思いながら 玄関へ近づく 104 00:07:21,024 --> 00:07:23,277 すると兄の奥さんが–– 105 00:07:23,402 --> 00:07:26,989 僕を家に引っ張り入れ 扉を閉めた 106 00:07:29,074 --> 00:07:34,037 “一体 何をしたの?”と 聞かれた僕は–– 107 00:07:34,162 --> 00:07:39,501 “何もしてない 僕が何をした?”と答えた 108 00:07:40,043 --> 00:07:43,172 彼女は “よ” 109 00:07:43,881 --> 00:07:45,799 “何かしたでしょ?”と 110 00:07:54,850 --> 00:08:00,355 だから街を出ようと 決めたんだ 111 00:08:02,024 --> 00:08:07,529 クリーニング店に 服を持っていった時のこと 112 00:08:08,363 --> 00:08:12,159 白人だけが住む地区に 店はあった 113 00:08:12,409 --> 00:08:15,913 帰り道に バス停へ向かったが–– 114 00:08:16,038 --> 00:08:18,040 バスは走っておらず 115 00:08:19,917 --> 00:08:23,045 1台の車が目の前に止まった 116 00:08:23,170 --> 00:08:25,923 中には警官が乗ってたんだ 117 00:08:28,675 --> 00:08:31,053 “何をしてる?”と聞かれ–– 118 00:08:31,178 --> 00:08:35,182 “家へ帰ろうとしてるだけ”と 答えた 119 00:08:35,307 --> 00:08:38,184 “なぜここに?”と 問い詰められてね 120 00:08:38,769 --> 00:08:41,020 警官は銃を出して–– 121 00:08:41,145 --> 00:08:46,818 車の窓ガラスの外側に 傾けたんだ 122 00:08:48,278 --> 00:08:51,615 そして銃口を 僕の額に押し付けた 123 00:08:52,574 --> 00:08:53,575 ここだ 124 00:08:55,786 --> 00:08:58,330 彼は同僚に聞いた 125 00:08:58,914 --> 00:09:02,417 “こいつをどうする?”とね 126 00:09:02,543 --> 00:09:05,629 実際は差別語で呼ばれた 127 00:09:06,421 --> 00:09:08,507 警官は こう続けた 128 00:09:08,632 --> 00:09:14,263 “お前を見逃したら 歩いて ちゃんと家に帰るか?” 129 00:09:15,305 --> 00:09:18,350 “後ろを振り返らず 帰れるか?” 130 00:09:19,685 --> 00:09:24,273 “ええ できます”と 僕は答えた 131 00:09:24,940 --> 00:09:29,486 “一度でも後ろを見たら 撃つぞ”と脅された 132 00:09:32,489 --> 00:09:36,034 50以上の街区を通り過ぎる間 133 00:09:36,159 --> 00:09:41,915 窓のある建物を過ぎるたびに 目だけ動かしてみた 134 00:09:42,040 --> 00:09:48,505 すると僕の後方に 警官の車が見えた 135 00:09:53,427 --> 00:09:55,304 ついてきてたんだ 136 00:09:59,099 --> 00:10:03,395 兄が住んでる家の小道まで 137 00:10:04,438 --> 00:10:07,983 道中ずっとね 138 00:10:09,526 --> 00:10:12,905 家に着くと 車は去っていった 139 00:10:14,281 --> 00:10:17,534 2~3ヵ月ほどで–– 140 00:10:17,659 --> 00:10:23,373 それまでの人生観がすべて ひっくり返されたよ 141 00:10:25,125 --> 00:10:28,003 社会構造を理解し始め–– 142 00:10:28,128 --> 00:10:33,509 権力が行使される状況を 目の当たりにしたんだ 143 00:10:44,603 --> 00:10:48,649 この街には いられないと悟った 144 00:10:48,774 --> 00:10:50,442 出ていかないと 145 00:10:50,734 --> 00:10:52,653 フロリダと異なり–– 146 00:10:52,945 --> 00:10:57,407 差別のない場所は あるのだろうか 147 00:11:00,285 --> 00:11:03,413 数人から聞いた話では–– 148 00:11:03,539 --> 00:11:07,000 黒人に優しい場所が あるらしい 149 00:11:07,125 --> 00:11:08,210 NYだ 150 00:11:11,463 --> 00:11:13,048 長距離バスで行き–– 151 00:11:12,881 --> 00:11:16,301 1943年 ニュ︱ヨ︱ク市 152 00:11:13,173 --> 00:11:16,301 50丁目と8番街の角に 降り立った 153 00:11:16,677 --> 00:11:19,847 通りを歩いてみて–– 154 00:11:20,222 --> 00:11:23,517 とにかく ビックリ仰天だったよ 155 00:11:23,934 --> 00:11:26,812 黒人の男性に 声をかけられてね 156 00:11:26,937 --> 00:11:30,232 “調子は? どこへ行くんだい?” 157 00:11:30,357 --> 00:11:33,902 “ハーレムに行きたい”と 答えると–– 158 00:11:34,027 --> 00:11:35,529 彼は言った 159 00:11:35,654 --> 00:11:38,782 “階段を下りて Aラインに乗れ”と 160 00:11:38,907 --> 00:11:43,537 〝インタ︱ボロ︱・ ラピッド・トランジット〟 161 00:11:40,826 --> 00:11:42,202 本当か疑ったよ 162 00:11:42,327 --> 00:11:46,373 “階段で地下へ行け”と 言われたんだ 163 00:11:49,585 --> 00:11:51,086 僕は“了解”と 164 00:11:53,046 --> 00:11:56,466 恐る恐る階段を 下りていくと–– 165 00:11:56,592 --> 00:12:00,053 が聞こえた 166 00:12:00,179 --> 00:12:03,557 次の瞬間 電車が来たんだ 167 00:12:14,401 --> 00:12:17,362 116丁目まで行き 下車した 168 00:12:17,487 --> 00:12:21,200 人の流れに身を任せ 階段を上ると–– 169 00:12:21,325 --> 00:12:24,161 そこはハーレムだった 170 00:12:24,286 --> 00:12:25,495 ワオ! 171 00:12:28,749 --> 00:12:31,043 〝サヴォイ〟 172 00:12:35,839 --> 00:12:39,551 至る所に黒人がいて 挨拶を交わした 173 00:12:39,676 --> 00:12:41,762 すごく興奮したね 174 00:12:49,853 --> 00:12:53,440 黒人の芸術家が ハ︱レムでは突出してた 175 00:12:51,188 --> 00:12:54,608 文化批評家/ ミュ︱ジシャン グレッグ・テイト 176 00:12:53,565 --> 00:12:55,943 偉大な人物を輩出してる 177 00:12:56,068 --> 00:12:57,361 例えばエリントン 178 00:12:57,486 --> 00:12:59,446 レナ・ホーンや ビリー・ホリデイ 179 00:12:59,571 --> 00:13:01,949 スターが大勢いたんだ 180 00:13:02,241 --> 00:13:05,160 当時のアーティストは–– 181 00:13:05,285 --> 00:13:08,539 客の目の前で 生の実力を試される 〝バ︱ドランド〟 182 00:13:08,664 --> 00:13:11,124 それが当時のシドニーを–– 183 00:13:11,250 --> 00:13:13,502 待ち受ける世界だった 184 00:13:11,250 --> 00:13:15,504 シドニ︱・ポワチエ 1943年 185 00:13:14,127 --> 00:13:16,004 何を求めてNYへ? 186 00:13:16,129 --> 00:13:18,090 自分探しのためさ 187 00:13:18,799 --> 00:13:22,052 だが長い間 成果はなかった 188 00:13:22,344 --> 00:13:25,722 49丁目と ブロードウェイの角の–– 189 00:13:25,848 --> 00:13:30,435 飲食店で求人の貼り紙を見て 店に入った 190 00:13:30,561 --> 00:13:33,438 “いつからできる?”と 聞かれて–– 191 00:13:33,689 --> 00:13:35,941 “今すぐ”と答えたんだ 192 00:13:36,066 --> 00:13:37,484 雇ってくれたよ 193 00:13:38,569 --> 00:13:43,323 1晩4ドルの給料に まかない付きだった 194 00:13:43,448 --> 00:13:45,742 初仕事が終わった夜は–– 195 00:13:46,785 --> 00:13:48,453 バスターミナルへ 196 00:13:48,579 --> 00:13:52,249 〝グレイハウンド バスタ︱ミナル レストラン〟 197 00:13:48,954 --> 00:13:52,249 トイレで寝ようと 思ってね 198 00:13:52,374 --> 00:13:55,252 5セントの有料トイレに–– 199 00:13:55,377 --> 00:13:58,088 お金を入れて入った 200 00:13:58,213 --> 00:14:01,884 便座に座って ドアに対して足を上げ 201 00:14:02,009 --> 00:14:03,177 寝るんだ 202 00:14:03,302 --> 00:14:05,888 もちろん 快適ではない 203 00:14:07,139 --> 00:14:11,768 ある夜 僕はキッチンの すぐそばで–– 204 00:14:11,894 --> 00:14:13,687 新聞を読んでた 205 00:14:13,812 --> 00:14:17,065 ウェーターの1人に 見られて–– 206 00:14:17,191 --> 00:14:20,068 “読み方を学んでる”と 説明した 207 00:14:20,194 --> 00:14:23,238 彼は“一緒に読もうか”と 208 00:14:23,822 --> 00:14:26,408 それから毎晩 209 00:14:26,867 --> 00:14:30,996 そのユダヤ人の ウェーターが–– 210 00:14:31,538 --> 00:14:36,418 新聞を読んでると 僕の所に来てくれた 211 00:14:36,543 --> 00:14:41,840 読み方を覚えるのに 付き合ってくれたんだ 212 00:14:41,965 --> 00:14:45,928 これが僕の旅の始まりさ 213 00:14:46,053 --> 00:14:49,431 何もしなければ 人は通り過ぎるだけ 214 00:14:49,848 --> 00:14:53,852 だが努力してれば 誰かが助けてくれる 215 00:14:50,140 --> 00:14:53,852 モ︱ガン・フリ︱マン 216 00:14:53,977 --> 00:14:57,147 その応援があれば 頑張れるんだ 217 00:14:57,648 --> 00:14:58,982 そういうものさ 218 00:15:01,193 --> 00:15:04,154 ハーレムの125丁目で–– 219 00:15:04,279 --> 00:15:07,574 アムステルダムニュースの 新聞を買った 220 00:15:07,699 --> 00:15:10,327 求人広告のある黒人新聞だ 221 00:15:10,452 --> 00:15:13,914 いつも その新聞で 職を探してきた 222 00:15:14,039 --> 00:15:16,291 皿洗いやポ︱タ︱など 223 00:15:16,416 --> 00:15:18,752 僕ができる仕事が載ってた 224 00:15:18,877 --> 00:15:23,382 〝俳優求む アメリカン・ 〟 225 00:15:19,211 --> 00:15:23,382 そこに俳優募集の求人を 見つけたんだ 226 00:15:23,507 --> 00:15:28,178 僕は思った “俳優を探してる?” 227 00:15:28,303 --> 00:15:31,014 “僕にもできるかな?”と 228 00:15:32,182 --> 00:15:37,062 そして劇場に行くと 少しして男性が出てきた 229 00:15:37,604 --> 00:15:42,401 巨大な男 フレデリック・ オニ︱ルだったんだ ANT 共同創設者 フレデリック・オニ︱ル 230 00:15:43,026 --> 00:15:46,822 僕は舞台に上がり 台本をめくった 231 00:15:46,947 --> 00:15:49,867 客席に座ってた フレデリックが–– 232 00:15:49,992 --> 00:15:52,536 “ジョンのセリフを読め”と 233 00:15:52,661 --> 00:15:55,581 僕は“はい”と答えて読んだ 234 00:15:56,206 --> 00:15:58,709 “彼は… 言った” 235 00:15:58,834 --> 00:16:01,587 “どこへ… 行く?” 236 00:16:01,712 --> 00:16:07,467 するとフレデリックに “出ていけ”と どなられたよ 237 00:16:07,718 --> 00:16:09,595 “時間が無駄になった” 238 00:16:09,720 --> 00:16:12,181 “皿洗いの仕事でも してろ”とね 239 00:16:12,306 --> 00:16:14,892 その瞬間 決意したんだ 240 00:16:15,309 --> 00:16:18,353 “俳優になってやる” 241 00:16:18,729 --> 00:16:24,443 “準備して 戻ってきて 見せつけるぞ”と 242 00:16:24,568 --> 00:16:27,696 昔はりに 悩んだらしいね 243 00:16:27,196 --> 00:16:30,991 ﹁ディック・ キャベット・ショ︱﹂ 244 00:16:27,821 --> 00:16:30,991 どんな感じか 聞かせてくれる? 245 00:16:31,116 --> 00:16:32,993 例えば このセリフ 246 00:16:33,952 --> 00:16:35,454 “家に帰る”を–– 247 00:16:35,579 --> 00:16:37,539 こう言ってた 248 00:16:37,664 --> 00:16:39,082 “うちに けえる” 249 00:16:39,208 --> 00:16:42,085 “俳優なら訛りを直せ”と 言われた 250 00:16:42,669 --> 00:16:44,671 だから努力したよ 251 00:16:44,796 --> 00:16:47,841 14ドルでラジオを買ってね 252 00:16:47,966 --> 00:16:51,678 ノーマン・ ブロークンシャイアという–– 253 00:16:51,803 --> 00:16:56,642 ニュ︱スキャスタ︱の 番組を聴いてた 254 00:16:52,262 --> 00:16:56,642 ノ︱マン・ ブロ︱クンシャイア 255 00:16:57,893 --> 00:16:59,478 すばらしい声なんだ 256 00:16:59,603 --> 00:17:01,396 〝放送中〟 257 00:17:00,020 --> 00:17:02,523 いかがお過ごしですか? 258 00:17:02,648 --> 00:17:04,233 ブロークンシャイアです 259 00:17:04,358 --> 00:17:08,444 彼の言葉を聴いて 繰り返し マネした 260 00:17:08,569 --> 00:17:11,823 25年間 マイクの前で 話してきたが–– 261 00:17:11,949 --> 00:17:14,660 すごく緊張感のある仕事だ 262 00:17:14,785 --> 00:17:19,080 おかげで訛りは ほとんどなくなった 263 00:17:19,330 --> 00:17:21,250 本を買って勉強もしたよ 264 00:17:21,375 --> 00:17:24,211 セリフを読めるようにね 265 00:17:24,336 --> 00:17:27,506 劇団のオーディションを 再び受けたら–– 266 00:17:27,631 --> 00:17:28,966 合格できた 267 00:17:29,424 --> 00:17:31,718 僕にとって劇団や︱ アメリカン・ ニグロ・シアタ︱ 268 00:17:31,844 --> 00:17:34,972 演じることは 心の癒やしだった 269 00:17:36,473 --> 00:17:38,976 劇団には仕事後に通った 270 00:17:39,101 --> 00:17:42,771 当時14~18ヵ所で 働いててね 271 00:17:43,438 --> 00:17:47,776 夜に劇団の講義を受けたり 稽古をしてたんだ 272 00:17:47,901 --> 00:17:50,571 当時 僕は17~18歳だった 273 00:17:50,696 --> 00:17:54,575 演技することで 人前に立つのが得意になり–– 274 00:17:54,700 --> 00:17:57,327 ストレス発散もできた 275 00:17:57,452 --> 00:18:01,957 キャラクターを通して 心の中の混乱や苦しみも–– 276 00:18:02,541 --> 00:18:04,668 表現できたんだ 277 00:18:04,793 --> 00:18:08,505 俳優でなら 自分を生かせると感じた 278 00:18:08,630 --> 00:18:10,799 何者にでもなれる 279 00:18:10,924 --> 00:18:15,387 社会的に人生を 制限されてきたが–– 280 00:18:15,512 --> 00:18:20,225 演劇という魔法で 見返すことができる 281 00:18:21,727 --> 00:18:24,313 暴君 顔を見せよ 282 00:18:24,438 --> 00:18:25,731 名を名乗れ 283 00:18:26,982 --> 00:18:30,652 今や 黒人演劇は消えてしまった 284 00:18:31,486 --> 00:18:33,113 我が名はマクベス 285 00:18:33,322 --> 00:18:36,575 第二次世界大戦後から 80年代まで–– 286 00:18:36,700 --> 00:18:39,786 黒人演劇は 黒人芸術の代表だった 287 00:18:39,912 --> 00:18:41,038 ANTは︱ 288 00:18:40,746 --> 00:18:45,417 作家/歴史家 ネルソン・ジョ︱ジ 289 00:18:41,163 --> 00:18:45,417 数々の偉大な劇団の 先駆けだった 290 00:18:45,542 --> 00:18:47,544 “アメリカン・ ニグロ・シアター” 291 00:18:47,669 --> 00:18:49,129 優秀な若者が–– 292 00:18:49,254 --> 00:18:52,841 舞台で才能を発揮できる場所だ 293 00:18:53,133 --> 00:18:55,719 黒人演劇に出演経験のない–– 294 00:18:55,844 --> 00:18:59,806 黒人俳優が登場したのは 1990年代からだ 295 00:19:00,182 --> 00:19:03,727 オ︱ディションに行き 部屋に入ると︱ 296 00:19:02,142 --> 00:19:05,229 ハリ︱・ ベラフォンテの肉声 297 00:19:03,852 --> 00:19:08,440 向かい側には 不愛想な黒人がいた 298 00:19:06,438 --> 00:19:10,442 シドニ︱・ポワチエ 299 00:19:08,565 --> 00:19:11,652 そっけない感じだったよ 300 00:19:11,777 --> 00:19:15,989 彼を見た時 ライバルになると察した 301 00:19:16,114 --> 00:19:18,116 これからずっとね 302 00:19:18,408 --> 00:19:21,286 シドニーのような スターになり–– 303 00:19:21,411 --> 00:19:26,917 ステキな経験をしなければと 思って生きてきた 304 00:19:27,584 --> 00:19:28,335 それで… 305 00:19:28,460 --> 00:19:30,087 緊張感があるね 306 00:19:31,338 --> 00:19:34,091 父とハリーは親友よ 307 00:19:34,216 --> 00:19:36,510 ANTの初期から︱ 308 00:19:35,259 --> 00:19:39,221 娘 シドニ︱・ ポワチエ・ハ︱トソング 309 00:19:36,635 --> 00:19:39,221 ずっと一緒だったの 310 00:19:40,097 --> 00:19:42,391 仲がいい時もあれば–– 311 00:19:42,891 --> 00:19:46,228 仲たがいしてた時期もあった 312 00:19:46,353 --> 00:19:48,522 夫婦みたいな関係ね 313 00:19:48,647 --> 00:19:52,109 別居して離婚して 元サヤに戻る 314 00:19:52,234 --> 00:19:54,152 口論もするよ 315 00:19:54,278 --> 00:19:57,364 いろいろなことで 意見が食い違う 316 00:19:57,489 --> 00:20:00,242 冗談抜きでね 317 00:20:00,367 --> 00:20:02,995 ちゃんと意見交換をする 318 00:20:03,120 --> 00:20:06,582 26年間 彼から 多くを学んできた 319 00:20:06,707 --> 00:20:09,626 彼が僕から学んだかは謎だ 320 00:20:09,877 --> 00:20:13,672 アーティストだから 互いにエゴがある 321 00:20:13,797 --> 00:20:15,090 言ってやれ ハニー 322 00:20:18,302 --> 00:20:19,303 だから… 323 00:20:20,387 --> 00:20:23,640 18歳の時 バードランドで–– 324 00:20:20,387 --> 00:20:24,433 〝バ︱ドランド〟 325 00:20:23,765 --> 00:20:26,268 シドニーを見た 326 00:20:25,017 --> 00:20:28,770 クインシ︱・ ジョ︱ンズ 327 00:20:26,518 --> 00:20:29,188 ハリーと マーロン・ブランドもいた 328 00:20:29,313 --> 00:20:33,108 すごかったね 歴史的な俳優たちだ 329 00:20:33,567 --> 00:20:36,153 みんな激しい性格でね 330 00:20:36,278 --> 00:20:38,780 愛し合い ケンカもする 331 00:20:39,364 --> 00:20:42,075 親密で 結束が固かった 332 00:20:42,576 --> 00:20:43,619 共に働き–– 333 00:20:43,744 --> 00:20:46,079 互いにムカつき合いもした 334 00:20:46,663 --> 00:20:48,498 それは今もだろう 335 00:20:48,624 --> 00:20:50,542 ある芝居でシドニ︱が 336 00:20:49,416 --> 00:20:52,503 ﹁Days Of Our Youth﹂ 1948年 337 00:20:50,667 --> 00:20:52,503 俺の代役になってさ 338 00:20:52,628 --> 00:20:55,797 劇団は無給だから 生活のため︱ 339 00:20:54,713 --> 00:20:58,467 ハリ︱・ベラフォンテ 340 00:20:56,256 --> 00:20:58,467 俺は清掃員をしてた 341 00:20:58,592 --> 00:21:02,971 公演の夜 ハリーが 主役の劇にも関わらず–– 342 00:21:03,096 --> 00:21:07,768 清掃員の仕事に 行かなくてはならなかった 343 00:21:07,893 --> 00:21:10,687 だから父が代わりに出たの 344 00:21:10,812 --> 00:21:15,192 その夜 偶然 ブロードウェイの プロデューサーが来てて–– 345 00:21:15,317 --> 00:21:21,073 父を「女の平和」に キャスティングした 346 00:21:21,198 --> 00:21:23,659 ハリーは怒ったでしょうね 347 00:21:23,784 --> 00:21:25,577 当時 20世紀フォックスの︱ 〝20世紀フォックス〟 348 00:21:25,702 --> 00:21:29,915 スカウトが東海岸に来てて シドニーを見た 349 00:21:30,040 --> 00:21:33,710 彼を西海岸へ送り 選考して採用したんだ 350 00:21:33,836 --> 00:21:36,630 俺は“謙虚でいろ”と 彼に常々言う 351 00:21:36,755 --> 00:21:40,259 彼のキャリアは ゴミの上に築かれてるから 352 00:21:40,384 --> 00:21:43,929 成功してなければ 辛らつになってたね 353 00:21:44,054 --> 00:21:46,431 成功したけど辛らつだ 354 00:21:57,484 --> 00:21:58,068 よう 355 00:21:58,193 --> 00:21:59,027 ルーサー 356 00:21:59,152 --> 00:22:01,446 ずっと君を捜してた 357 00:22:01,572 --> 00:22:03,991 ﹁﹂ 358 00:22:02,114 --> 00:22:04,575 マンキウィッツ 監督の作品で︱ 359 00:22:04,700 --> 00:22:06,034 キャリアが始まった 360 00:22:05,200 --> 00:22:07,828 監督 ジョセフ・L・ マンキウィッツ 361 00:22:06,159 --> 00:22:06,743 やあ 362 00:22:06,869 --> 00:22:07,828 どうも 363 00:22:07,953 --> 00:22:12,165 彼はアメリカの黒人映画を 作ろうとしてた 364 00:22:11,665 --> 00:22:14,042 1950年 365 00:22:12,291 --> 00:22:15,002 とても興味深い作品だ 366 00:22:15,127 --> 00:22:16,712 史上初だろう 367 00:22:16,837 --> 00:22:21,633 僕はLA病院の 若い黒人医師を演じた 368 00:22:21,758 --> 00:22:23,135 医師のブルックスだ 369 00:22:23,260 --> 00:22:25,220 ああ 聞いてる 370 00:22:25,345 --> 00:22:28,056 革新的な作品だった 371 00:22:28,307 --> 00:22:29,808 白人の医師がいい 372 00:22:29,933 --> 00:22:31,685 違いは分かるまい 373 00:22:31,810 --> 00:22:33,020 選ぶ権利は? 374 00:22:33,145 --> 00:22:34,146 ない! 375 00:22:34,271 --> 00:22:37,524 黒人が中心人物の 映画を作る–– 376 00:22:37,649 --> 00:22:40,736 度胸のある人は 業界にいなかった 377 00:22:40,861 --> 00:22:43,655 当時 映画の中での–– 378 00:22:43,780 --> 00:22:48,660 黒人の描かれ方は ひどいものだったよ 379 00:22:48,785 --> 00:22:52,456 マッシュポテトは ナイフなしで食べられる 380 00:22:50,412 --> 00:22:53,832 ステピン・フェチット 381 00:22:52,581 --> 00:22:53,832 真面目に答えろ 382 00:22:53,957 --> 00:22:58,545 1940年代の 黒人俳優は三枚目ばかり 383 00:22:58,670 --> 00:23:00,380 ステピン・フェチットに–– 384 00:23:00,506 --> 00:23:01,673 マンタン・モアランドだ 385 00:23:01,798 --> 00:23:04,718 一緒に夜ふかし してもいいですか? 386 00:23:02,007 --> 00:23:04,718 マンタン・モアランド 387 00:23:04,843 --> 00:23:05,886 いいや 388 00:23:06,011 --> 00:23:08,931 他の使用人に示しがつかない 389 00:23:09,056 --> 00:23:09,973 確かに 390 00:23:10,098 --> 00:23:12,851 それが黒人のスターだった 391 00:23:12,976 --> 00:23:15,103 面白さが必須条件だ 392 00:23:15,521 --> 00:23:19,358 マンタンやステピン ハティ・マクダニエルがいた 393 00:23:19,483 --> 00:23:21,527 つらかっただろうなと–– 394 00:23:21,652 --> 00:23:24,446 自分が映画に出て 感じたよ 395 00:23:21,860 --> 00:23:24,446 ハティ・マクダニエル 396 00:23:24,571 --> 00:23:28,075 彼らのセリフや役柄を 考えるとね 397 00:23:28,450 --> 00:23:30,744 なんて怠惰な男なんだ 398 00:23:31,203 --> 00:23:35,082 怠けてない のんびりしてるだけ 399 00:23:35,332 --> 00:23:39,586 映画業界の 黒人に対する扱いは–– 400 00:23:39,711 --> 00:23:41,505 ひどく無神経だった 401 00:23:41,630 --> 00:23:42,881 行かないで 402 00:23:43,006 --> 00:23:45,217 1939年に ハティ・マクダニエルが 403 00:23:43,465 --> 00:23:47,052 第12回 アカデミ︱賞 404 00:23:45,342 --> 00:23:47,386 アカデミ︱賞を取った 405 00:23:47,511 --> 00:23:50,889 でも彼女への待遇は ひどかった 406 00:23:49,179 --> 00:23:52,349 娘 パメラ・ポワチエ 407 00:23:51,014 --> 00:23:54,643 彼女は所詮メイド役 408 00:23:55,310 --> 00:23:57,312 演技は見事でもね 409 00:23:57,938 --> 00:24:02,484 黒人に求められるのは そんな役ばかりだった 410 00:24:02,609 --> 00:24:03,527 感謝を… 411 00:24:03,652 --> 00:24:08,365 シドニーは下働きの役は やらなかったと思う 412 00:24:08,740 --> 00:24:10,659 変顔などはせず–– 413 00:24:11,243 --> 00:24:12,828 こびも売らない 414 00:24:13,287 --> 00:24:15,289 ジョークも言わなかった 415 00:24:15,414 --> 00:24:17,666 彼が演じるのは一見–– 416 00:24:17,791 --> 00:24:20,836 物静かで従順な男に見える 417 00:24:21,670 --> 00:24:24,423 だが実際は違うんだ 418 00:24:25,215 --> 00:24:28,051 人が死ねば 病院が責められる 419 00:24:28,177 --> 00:24:29,636 皆 僕を責める 420 00:24:29,761 --> 00:24:31,305 医者だからな 421 00:24:31,430 --> 00:24:34,308 いや違う 黒人だからだ 422 00:24:34,766 --> 00:24:37,394 シドニーが映画を変えた 423 00:24:37,519 --> 00:24:40,939 あんな黒人俳優は いなかったよ 424 00:24:41,064 --> 00:24:45,569 それまでと異なる黒人像を 作り上げた 425 00:24:45,694 --> 00:24:47,696 がむしゃらだった 426 00:24:47,988 --> 00:24:50,657 僕は貧しい家の出身だ 427 00:24:50,782 --> 00:24:53,702 カリブ海の教養のない家庭さ 428 00:24:54,077 --> 00:24:58,498 だから僕の家族は アメリカのことを–– 429 00:24:58,624 --> 00:25:01,084 金稼ぎの場所と見てた 430 00:25:01,752 --> 00:25:05,756 稼ぎ始めたなら 実家に金を入れるべきだ 431 00:25:06,340 --> 00:25:08,133 だが送金できず–– 432 00:25:08,258 --> 00:25:12,137 家族にひどいことを してしまった 433 00:25:12,262 --> 00:25:13,347 見捨てたんだ 434 00:25:13,472 --> 00:25:17,100 金を同封できないから 手紙も書けない 435 00:25:17,226 --> 00:25:20,521 父は親思いで 愛してたからこそ–– 436 00:25:20,646 --> 00:25:23,023 罪悪感もあったと思う 437 00:25:23,148 --> 00:25:25,192 8年離れてたからね 438 00:25:26,235 --> 00:25:29,988 両親と再会したのは 渡米の8年後だった 439 00:25:26,735 --> 00:25:29,988 ナッソ︱ 440 00:25:30,447 --> 00:25:32,282 ナッソーの映画館で–– 441 00:25:32,407 --> 00:25:35,744 「復讐鬼」を家族と見たんだ 442 00:25:35,869 --> 00:25:37,120 重要なんだ 443 00:25:37,246 --> 00:25:38,372 両親にとって–– 444 00:25:38,497 --> 00:25:41,875 映画を見ること自体 初めてだった 445 00:25:42,000 --> 00:25:45,420 夢のような体験だっただろう 446 00:25:45,712 --> 00:25:49,508 内容を理解してたかは 分からないが 447 00:25:49,633 --> 00:25:52,010 夢中で見てくれてたよ 448 00:25:52,135 --> 00:25:57,391 “あれは うちの息子だ!”と 言ってね 449 00:25:57,516 --> 00:26:02,437 この成功のあと 僕はハーレムの皿洗いに戻った 450 00:26:02,563 --> 00:26:06,608 挫折したものの また成功すると信じてた 451 00:26:06,733 --> 00:26:10,362 そして美しい ファニ︱タと結婚し︱ 452 00:26:09,278 --> 00:26:12,865 1950年4月29日 453 00:26:10,487 --> 00:26:12,865 前向きに生きようとした 454 00:26:13,073 --> 00:26:16,201 長女の誕生後まもなくして 455 00:26:16,326 --> 00:26:18,954 第2子の妊娠が判明した 456 00:26:19,454 --> 00:26:22,624 母は とても楽観的な人で–– 457 00:26:22,749 --> 00:26:25,252 父は少し悲観的だった 458 00:26:26,003 --> 00:26:29,673 でも母の楽天主義の方が 強かったわ 459 00:26:29,798 --> 00:26:34,761 人の気持ちも読める母に 父は引かれたんだと思う 460 00:26:34,887 --> 00:26:38,807 無条件に人を 愛することのできる母に–– 461 00:26:38,932 --> 00:26:41,310 心を奪われたのよ 462 00:26:42,561 --> 00:26:47,524 当時コロンビア大の クラスでは 私が︱ 463 00:26:46,356 --> 00:26:49,943 ファニ︱タ・ハ︱ディ 464 00:26:48,317 --> 00:26:50,903 唯一の黒人女子だった 465 00:26:51,028 --> 00:26:53,739 “二重苦”ってやつね 466 00:26:54,573 --> 00:26:56,909 私はアメリカにおける–– 467 00:26:57,034 --> 00:27:01,496 黒人と白人の現状について 論文を書いた 468 00:27:01,622 --> 00:27:04,416 “着想はどこから?”と 聞かれ–– 469 00:27:04,541 --> 00:27:07,127 “経験者からよ”と答えたわ 470 00:27:07,377 --> 00:27:11,298 出会った時のシドニーの 学力は小3程度で–– 471 00:27:11,423 --> 00:27:14,384 常に学習意欲にあふれてた 472 00:27:14,510 --> 00:27:16,303 とにかく–– 473 00:27:16,428 --> 00:27:21,141 気になったことは全部 知りたがったの 474 00:27:21,642 --> 00:27:25,812 彼が知らないだろうと 思ったことは–– 475 00:27:25,938 --> 00:27:28,565 必ず教えるようにしてた 476 00:27:28,690 --> 00:27:30,901 役に立てばと思ってね 477 00:27:31,026 --> 00:27:34,404 そのうち彼は 打診された映画を–– 478 00:27:34,530 --> 00:27:37,241 吟味できるようになった 479 00:27:37,366 --> 00:27:39,618 お金がすべてじゃないわ 480 00:27:40,285 --> 00:27:44,957 父はある役を エージェントに打診された 481 00:27:45,082 --> 00:27:48,126 でも父は断ったの 482 00:27:45,082 --> 00:27:50,128 娘 アニカ・ポワチエ 483 00:27:48,252 --> 00:27:50,629 驚かれたそうよ 484 00:27:50,754 --> 00:27:54,925 “ギャラは 君の年収より高いのに”とね 485 00:27:55,300 --> 00:27:58,929 次女が生まれる直前でね 486 00:27:59,263 --> 00:28:00,639 金はなかった 487 00:28:00,973 --> 00:28:04,142 ﹁無警察地帯﹂ 488 00:28:02,641 --> 00:28:04,810 清掃員の役を打診された 489 00:28:04,935 --> 00:28:07,229 清掃員を演じるのはいい 490 00:28:07,354 --> 00:28:11,191 だが その作品では 殺人が起きるんだ 491 00:28:11,316 --> 00:28:14,278 殺人の犯人や関係者たちに–– 492 00:28:14,403 --> 00:28:17,281 こう思われてしまう 493 00:28:17,865 --> 00:28:21,201 “清掃員に 殺人を目撃された”と 494 00:28:21,410 --> 00:28:25,455 そのせいで清掃員の娘が 殺されてしまうの 495 00:28:26,123 --> 00:28:30,502 脚本上 芝生に倒れた 娘の遺体を見て–– 496 00:28:30,627 --> 00:28:35,465 清掃員が気持ちを語るシーンは なかったの 497 00:28:35,591 --> 00:28:39,678 でも制作陣は 変更する気はなかった 498 00:28:41,096 --> 00:28:44,558 そしてシドニーは こう言った 499 00:28:44,683 --> 00:28:49,438 “父のレジナルドなら 子供を殺されて––” 500 00:28:49,563 --> 00:28:51,690 “黙ってるわけがない” 501 00:28:51,815 --> 00:28:54,568 父は祖父の考えを 軸に︱ 502 00:28:53,275 --> 00:28:57,029 娘 ビバリ︱・ポワチエ= ヘンダ︱ソン 503 00:28:54,693 --> 00:28:57,029 意思決定をしてた 504 00:28:57,571 --> 00:28:59,907 こんなことを言ってたわ 505 00:29:00,032 --> 00:29:04,953 “出演作のクレジットには ポワチエと出る” 506 00:29:05,078 --> 00:29:07,539 “父の名は汚せない” 507 00:29:07,915 --> 00:29:10,000 そんな役はできない 508 00:29:10,959 --> 00:29:16,256 僕は父の息子だから 509 00:29:16,757 --> 00:29:20,219 引き受けることは できなかった 510 00:29:21,136 --> 00:29:24,139 僕は母の息子だから 511 00:29:24,348 --> 00:29:27,017 そうして役を蹴ったの 512 00:29:27,601 --> 00:29:31,146 出産にかかる費用を 支払うために–– 513 00:29:31,271 --> 00:29:34,399 ローンを組み 借金までしてね 514 00:29:34,525 --> 00:29:37,986 父は自分がすべき 決断をしたの 515 00:29:35,484 --> 00:29:37,986 娘 シェリ・ポワチエ 516 00:29:38,111 --> 00:29:43,033 世間が父に 期待してなかったとしても 517 00:29:43,325 --> 00:29:46,078 父は自分に期待してた 518 00:29:46,620 --> 00:29:51,166 自分を信じられるのは 母のおかげであり… 519 00:29:57,339 --> 00:29:58,841 父のおかげだ 520 00:30:10,143 --> 00:30:13,564 まず机の下に潜り 頭を守る 521 00:30:15,941 --> 00:30:18,694 冷戦時 アメリカでは–– 522 00:30:18,819 --> 00:30:22,239 ある種の 被害妄想が広まった 523 00:30:20,737 --> 00:30:22,239 作家/歴史家 ネルソン・ジョ︱ジ 524 00:30:22,364 --> 00:30:25,367 “共産主義に 生活が脅かされる”と 525 00:30:25,492 --> 00:30:28,996 共産主義者は 秘密裏に工作員を–– 526 00:30:29,121 --> 00:30:32,207 映画業界に送り込んでいた 527 00:30:32,332 --> 00:30:36,253 銀幕で宣伝工作すべく あらゆる手を使ったのだ 528 00:30:36,378 --> 00:30:38,672 彼らは敵! 非国民よ 529 00:30:38,797 --> 00:30:41,675 同性愛者で共産主義者だ! 530 00:30:41,800 --> 00:30:43,385 共産主義者! 531 00:30:43,510 --> 00:30:46,180 共産主義者は 国務省に︱ 532 00:30:44,386 --> 00:30:47,472 ジョセフ・マッカ︱シ︱ 533 00:30:46,305 --> 00:30:49,183 1人も いてはならない 534 00:30:49,308 --> 00:30:53,729 ちょうどハワード大入学の 時期だった 535 00:30:53,854 --> 00:30:57,357 初めて見た テレビ放送が︱ 536 00:30:55,272 --> 00:30:59,693 政治家/活動家 アンドリュ︱・ヤング 元国連大使 537 00:30:57,482 --> 00:30:59,693 マッカ︱シ︱の 公聴会でね 538 00:30:59,818 --> 00:31:02,237 寮の共同スペースで見たよ 539 00:31:02,362 --> 00:31:03,697 すごく怖かった 540 00:31:03,822 --> 00:31:05,699 国や政府内では–– 541 00:31:05,824 --> 00:31:10,037 忠誠宣誓を求める声が 高まっています 542 00:31:08,493 --> 00:31:10,746 〝共産主義から 国を守れ〟 543 00:31:10,162 --> 00:31:14,166 共産主義者や支持者と 疑われた者の中に–– 544 00:31:14,291 --> 00:31:16,877 ポール・ロブソンがいた 545 00:31:17,002 --> 00:31:20,255 共産主義者なのに モスクワから帰国を? 546 00:31:20,797 --> 00:31:24,051 なぜ私が 共産主義者だと言える? ポ︱ル・ロブソン 547 00:31:24,384 --> 00:31:25,761 実に不快だ 548 00:31:25,886 --> 00:31:28,263 質問を言い直してくれ 549 00:31:30,599 --> 00:31:33,852 ﹁巨人ジョ︱ンズ﹂ 1933年 550 00:31:33,977 --> 00:31:36,021 1930年代 ポ︱ルは 551 00:31:36,146 --> 00:31:39,608 アフリカ系アメリカ人の 代表的人物で︱ 552 00:31:39,733 --> 00:31:42,402 黒人エンタメ界の 頂点にいた 553 00:31:41,109 --> 00:31:45,239 ポワチエ伝記作家 アラム・グ︱ス︱ジアン 554 00:31:42,528 --> 00:31:45,614 後に登場する シドニ︱やハリ︱に︱ 555 00:31:45,739 --> 00:31:48,033 一目置かれていた 556 00:31:49,910 --> 00:31:54,915 労働者階級を支持したため 彼は“赤”だと疑われた 557 00:31:55,040 --> 00:31:57,125 本人は しらを切ったがね 558 00:31:58,168 --> 00:32:02,130 ポールは シドニーやハリーにとって 559 00:32:02,548 --> 00:32:05,342 良くも悪くも手本となった 560 00:32:05,467 --> 00:32:10,806 どちら側について 闘っていくべきかを示したんだ 561 00:32:10,931 --> 00:32:15,227 〝ドル札から ジムクロウを排除せよ〟 562 00:32:13,225 --> 00:32:15,227 業界を追放され–– 563 00:32:15,352 --> 00:32:19,439 パスポートも剥奪され 国外でも働けなくなった 564 00:32:19,648 --> 00:32:23,485 自由のために 民衆は闘うだろう 565 00:32:23,610 --> 00:32:27,030 与えられないなら 奪いに行く 566 00:32:27,155 --> 00:32:31,827 どんなに たたかれても 耐えるポールの姿を–– 567 00:32:31,952 --> 00:32:33,662 シドニーは見た 568 00:32:34,204 --> 00:32:37,875 それが身の振り方の ヒントに︱ スパイク・リ︱ 569 00:32:39,626 --> 00:32:41,420 なったんだ 570 00:32:42,504 --> 00:32:45,382 授業を聞け サンティーニ 571 00:32:45,507 --> 00:32:46,884 聞いてるよ 572 00:32:47,593 --> 00:32:49,761 ﹁暴力教室﹂ 573 00:32:49,887 --> 00:32:51,722 1955年 574 00:32:51,221 --> 00:32:54,224 ミラ︱ 来い ちょっと話がある 575 00:32:54,349 --> 00:32:58,187 ﹁暴力教室﹂では 忠誠を求められた 576 00:32:54,933 --> 00:32:58,187 監督 リチャ︱ド・ ブルックス 577 00:32:58,312 --> 00:32:58,937 数回ね 578 00:32:59,062 --> 00:33:00,063 どうして? 579 00:32:59,062 --> 00:33:00,063 どうして? 580 00:32:59,313 --> 00:33:03,692 スタッズ・タ︱ケルの ラジオインタビュ︱ 581 00:32:59,313 --> 00:33:03,692 スタッズ・タ︱ケルの ラジオインタビュ︱ 582 00:33:00,397 --> 00:33:03,692 ポ︱ルと 知り合いだったし︱ 583 00:33:03,817 --> 00:33:07,279 彼を称賛してた からだろう 584 00:33:07,404 --> 00:33:11,241 それで目を付けられたのさ 585 00:33:11,366 --> 00:33:13,035 謙遜するな 586 00:33:13,160 --> 00:33:15,954 お前は他のらより賢い 587 00:33:16,079 --> 00:33:16,663 俺が? 588 00:33:16,788 --> 00:33:17,623 ああ 589 00:33:18,123 --> 00:33:19,917 リーダーが必要だ 590 00:33:20,042 --> 00:33:22,252 カウンターアタックという–– 591 00:33:22,377 --> 00:33:26,131 反共産主義の会報に シドニーが載った 592 00:33:24,796 --> 00:33:30,511 〝シドニ︱・ポワチエ 共産主義団体を支援〟 593 00:33:26,256 --> 00:33:30,511 さまざまな左派の著名人を 調査する会報だ 594 00:33:30,636 --> 00:33:34,014 1950年代 彼は 要注意人物とされた 595 00:33:34,556 --> 00:33:39,186 当時 映画業界で 仕事をしたい場合–– 596 00:33:39,311 --> 00:33:41,188 ある条件があった 597 00:33:41,313 --> 00:33:46,568 ブラックリストを作る権力者と 親しいことだ 598 00:33:46,693 --> 00:33:47,528 君は? 599 00:33:48,779 --> 00:33:50,239 行こうぜ 600 00:33:50,489 --> 00:33:52,908 俺を誘ったんだよ 601 00:33:53,033 --> 00:33:55,577 すべてを失う覚悟で拒んだ 602 00:33:55,702 --> 00:33:59,081 ノーと言わざるを 得ないこともある 603 00:33:59,206 --> 00:34:03,418 損得で行動するより 自分に正直でいたい 604 00:34:03,877 --> 00:34:05,128 勇敢な人だ 605 00:34:05,254 --> 00:34:08,924 あんなリスクを冒せば 追放もあり得た 606 00:34:06,713 --> 00:34:08,924 デンゼル・ワシントン 607 00:34:09,049 --> 00:34:13,554 意見を言う者は 潰される時代だったんだ 608 00:34:15,639 --> 00:34:19,476 父の教えで ずっと頭にあるのが–– 609 00:34:19,601 --> 00:34:22,103 真の男を測る基準だ 610 00:34:22,228 --> 00:34:25,940 どれだけ子供に 与えられたかで決まる 611 00:34:26,065 --> 00:34:30,237 それが僕の脳に くっきりと刻まれてる 612 00:34:30,779 --> 00:34:32,822 先は分からなかったが–– 613 00:34:32,947 --> 00:34:36,451 負けるわけには いかなかった 614 00:34:37,452 --> 00:34:42,456 そんな時 リチャードから 「黒い牙」に誘われた 615 00:34:42,583 --> 00:34:45,835 おかげで 僕のキャリアは花開く 616 00:34:46,210 --> 00:34:49,422 当時のアメリカは 目覚め始め–– 617 00:34:49,547 --> 00:34:53,844 変化が不可避だと 認識し始めてたのか? 618 00:34:51,550 --> 00:34:53,844 〝州内白人乗客専用 待合室〟 619 00:34:53,969 --> 00:34:55,429 それはない 620 00:34:55,721 --> 00:34:59,558 黒人の子供が学校に通ってる 621 00:34:59,683 --> 00:35:03,270 愛情に満ちた 真っ当な白人の親は︱ レアンダ︱・ペレス判事 愛情に満ちた 真っ当な白人の親は︱ レアンダ︱・ペレス判事 622 00:35:03,395 --> 00:35:07,399 子供を腐敗した学校から 転校させるべきだ 623 00:35:07,900 --> 00:35:10,360 これが1950年のアメリカだ 624 00:35:10,485 --> 00:35:11,612 〝有色人種席〟 625 00:35:11,737 --> 00:35:15,782 俳優で成功しただけでも 夢のようだが–– 626 00:35:15,908 --> 00:35:19,953 映画業界で 史上初の出来事が起きた 627 00:35:20,078 --> 00:35:22,372 黒人が主役になったのだ 628 00:35:26,126 --> 00:35:29,463 ﹁手錠のままの脱獄﹂ 629 00:35:27,669 --> 00:35:30,506 言われただろ ニガ︱ 黙れ 630 00:35:33,842 --> 00:35:37,221 監督 スタンリ︱・ クレイマ︱ 631 00:35:34,635 --> 00:35:37,221 ニガ︱と呼ぶな 殺すぞ 632 00:35:37,888 --> 00:35:39,056 やってみろ 633 00:35:41,225 --> 00:35:41,892 危ない! 634 00:35:41,475 --> 00:35:43,894 1958年 635 00:35:50,150 --> 00:35:56,114 ユダヤ人と黒人には 通ずるものがあると思ってるの 636 00:35:56,240 --> 00:35:58,200 ﹁手錠のままの脱獄﹂に 出た︱ 637 00:35:56,823 --> 00:36:00,327 バ︱ブラ・ ストライサンド 638 00:35:56,823 --> 00:36:00,327 バ︱ブラ・ ストライサンド 639 00:35:58,325 --> 00:36:00,702 ユダヤ人のトニ︱と︱ 640 00:35:58,325 --> 00:36:00,702 ユダヤ人のトニ︱と︱ 641 00:36:00,994 --> 00:36:04,248 黒人のシドニー・ポワチエね 642 00:36:04,373 --> 00:36:08,252 手錠でつながれた2人が 化学反応を起こす 643 00:36:08,377 --> 00:36:10,838 遺伝子レベルで通じ合う 644 00:36:11,672 --> 00:36:14,800 初めて見た映画だったの 645 00:36:14,925 --> 00:36:16,927 すごく印象的だった 646 00:36:17,052 --> 00:36:20,389 今でもシドニ︱の セリフを覚えてる 647 00:36:17,845 --> 00:36:21,515 ハル・ベリ︱ 648 00:36:20,514 --> 00:36:22,850 〝イライラしてる 半人前扱いするな〟 649 00:36:22,975 --> 00:36:25,602 ああ 俺もイライラしてる 650 00:36:25,727 --> 00:36:27,729 半人前扱いするな 651 00:36:28,021 --> 00:36:32,901 映画の中で 黒人が力を主張し–– 652 00:36:33,026 --> 00:36:36,738 白人から敬意を得る姿を 初めて見た 653 00:36:37,030 --> 00:36:41,034 物語の中で 黒人ノアは ある決断をした 654 00:36:44,454 --> 00:36:47,082 自由への道を犠牲にして… 655 00:36:47,207 --> 00:36:48,208 来い! 656 00:36:48,792 --> 00:36:51,461 届かない 無理だ! 657 00:36:51,587 --> 00:36:53,255 白人の友を救う 658 00:36:58,969 --> 00:37:03,140 多くの黒人にとっては 信じ難い行動だろう 659 00:37:03,432 --> 00:37:06,351 「手錠のままの脱獄」は–– 660 00:37:06,476 --> 00:37:10,480 黒人が白人を助ける映画の 典型的な例だ 661 00:37:10,606 --> 00:37:15,819 黒人がリスクを冒してまで 自己を犠牲にする 662 00:37:15,944 --> 00:37:20,657 窮地に立つ白人を 助けるためにね 663 00:37:20,782 --> 00:37:26,747 それが長年続く お決まりのパターンになった 664 00:37:26,872 --> 00:37:30,209 そうやって 困難な時でも見せる–– 665 00:37:30,334 --> 00:37:33,921 黒人の人間性や共感力を 描いたんだ 666 00:37:35,005 --> 00:37:38,634 だが くだらないと思う 黒人もいたようだ 667 00:37:38,884 --> 00:37:41,845 少しだけ考えてしまった 668 00:37:42,262 --> 00:37:45,015 俺は どうするだろう? 669 00:37:47,017 --> 00:37:48,727 俺も飛び降りるね 670 00:37:50,062 --> 00:37:52,856 苦労を共にした仲間だ 671 00:37:54,358 --> 00:37:56,193 見捨てはしない 672 00:37:57,069 --> 00:37:58,904 こんな意見もある 673 00:37:57,361 --> 00:38:01,114 ジェ︱ムズ・ ボ︱ルドウィン 674 00:37:57,361 --> 00:38:01,114 ジェ︱ムズ・ ボ︱ルドウィン 675 00:37:59,029 --> 00:38:02,199 〝中流階級の白人は 好むだろうが〟 676 00:37:59,029 --> 00:38:02,199 〝中流階級の白人は 好むだろうが〟 677 00:38:02,324 --> 00:38:04,326 〝黒人たちは叫ぶよ〟 678 00:38:03,450 --> 00:38:07,538 スタッズ・タ︱ケルの ラジオインタビュ︱ 679 00:38:04,451 --> 00:38:06,411 〝列車に戻れ バカ!〟 680 00:38:06,870 --> 00:38:08,247 どう思う? 681 00:38:08,372 --> 00:38:09,623 特に何も 682 00:38:09,748 --> 00:38:12,376 あれは革命的な映画だった 683 00:38:12,501 --> 00:38:13,168 ええ 684 00:38:13,293 --> 00:38:17,172 その事実は今も変わらない 685 00:38:17,714 --> 00:38:19,383 俺たちは大丈夫だ 686 00:38:19,675 --> 00:38:20,509 ああ 687 00:38:22,261 --> 00:38:25,138 「手錠のままの脱獄」で–– 688 00:38:25,264 --> 00:38:28,684 シドニ︱は俳優としての 実力を示した 689 00:38:28,809 --> 00:38:32,604 名前が作品名より先に 書かれたのは︱ 690 00:38:31,854 --> 00:38:35,899 〝トニ︱・カ︱ティス シドニ︱・ポワチエ出演 ﹁手錠のままの脱獄﹂〟 691 00:38:32,729 --> 00:38:35,899 主役級スターになった証しだ 692 00:38:36,024 --> 00:38:39,903 主役の2人がアカデミー賞に ノミネートされた 693 00:38:40,028 --> 00:38:44,491 ハティ以来 黒人のノミネートは初めてよ 694 00:38:44,616 --> 00:38:49,079 父はノミネートの盾を 壁に飾ってたわ 695 00:38:49,204 --> 00:38:51,957 それほどの一大事だったの 696 00:38:53,000 --> 00:38:56,003 シドニーへの注目は高まり–– 697 00:38:56,628 --> 00:39:00,716 黒人誌の表紙を飾る スターとなった 698 00:39:03,677 --> 00:39:06,388 彼は あらゆる点でステキだわ 699 00:39:06,513 --> 00:39:08,557 あんな笑顔の人いる? 700 00:39:08,682 --> 00:39:11,560 マーロン・ブランドくらいよ 701 00:39:15,814 --> 00:39:18,400 シドニーは まるで–– 702 00:39:18,525 --> 00:39:21,862 歩くヨルバ族の美しき仮面だ 703 00:39:21,987 --> 00:39:24,114 ベニン・ブロンズとかね 704 00:39:24,489 --> 00:39:25,741 まるで彫刻だ 705 00:39:25,866 --> 00:39:28,827 とても華やかで魅力的よね 706 00:39:28,952 --> 00:39:32,414 彼と結婚したかった 分かるでしょ? 707 00:39:32,539 --> 00:39:37,920 完璧で理想的な黒人像を 体現してる人だと思う 708 00:39:38,212 --> 00:39:39,838 彼は確信犯さ 709 00:39:39,963 --> 00:39:45,010 シドニーはイメージの重要性を 理解してたんだ 710 00:39:45,469 --> 00:39:47,596 父を見て泣く女性や–– 711 00:39:47,721 --> 00:39:49,723 卒倒する女性もいた 712 00:39:49,848 --> 00:39:51,767 夫たちも倒れてたわ 713 00:39:51,892 --> 00:39:56,438 みんなが父に 夢中になる姿を見てきた 714 00:39:56,897 --> 00:40:00,692 彼はとても優雅で 威厳があったわ 715 00:40:00,817 --> 00:40:02,152 彼を見ると“ワオ” 716 00:40:02,277 --> 00:40:04,988 映画スターはそうでなきゃ 717 00:40:07,908 --> 00:40:10,911 〝﹁レ︱ズン・ イン・ザ・サン﹂〟 718 00:40:08,784 --> 00:40:10,911 1959年に共演したから–– 719 00:40:11,036 --> 00:40:14,748 シドニ︱とは かなり仲よくなったよ 720 00:40:11,954 --> 00:40:14,748 ルイス・ ゴセット・Jr 721 00:40:19,002 --> 00:40:21,964 「レーズン・イン・ ザ・サン」の原作は–– 722 00:40:22,089 --> 00:40:25,551 学校で黒人に 必ず読まれてきた 723 00:40:33,517 --> 00:40:37,521 ミンクのコ︱トを シドニ︱が買ってきたの 724 00:40:36,144 --> 00:40:39,857 ファニ︱タ・ハ︱ディ 725 00:40:37,771 --> 00:40:41,775 私はコ︱トなんて 要らないと断ったわ 726 00:40:42,109 --> 00:40:44,903 コートを返品した お金で–– 727 00:40:45,028 --> 00:40:48,240 「レーズン・イン・ ザ・サン」に投資した 728 00:40:48,365 --> 00:40:50,492 私が最大の投資家となり–– 729 00:40:50,617 --> 00:40:54,037 彼はブロードウェイで 舞台を上演した 730 00:40:54,162 --> 00:40:58,709 成功するかは分からなかったが 感触はよかった 731 00:40:59,042 --> 00:41:02,629 1幕の終了後 客席がすごく静かでね 732 00:41:03,213 --> 00:41:05,007 失敗だと思った 733 00:41:05,132 --> 00:41:10,304 だが2幕では 観客が役者に感情移入してた 734 00:41:10,429 --> 00:41:12,681 劇が終わる頃には皆–– 735 00:41:13,015 --> 00:41:14,183 息をのんでた 736 00:41:14,308 --> 00:41:18,103 そして“ブラボー!”と 叫んでくれたよ 737 00:41:18,228 --> 00:41:19,313 最高だった 738 00:41:19,980 --> 00:41:22,649 〝俳優は僕の天職だ〟と 739 00:41:21,857 --> 00:41:23,817 〝ニュ︱ヨ︱ク 演劇批評家協会賞 受賞〟 740 00:41:22,774 --> 00:41:25,736 この舞台の初日に思った 741 00:41:26,111 --> 00:41:29,781 長年 蓄積してきた疑念は 消えたんだ 742 00:41:29,907 --> 00:41:33,035 最初のANTでの オーディションでは–– 743 00:41:33,160 --> 00:41:35,662 邪険に扱われた 744 00:41:36,038 --> 00:41:39,666 だが あの夜 僕は確信した 745 00:41:39,791 --> 00:41:42,419 天職に導かれたんだ 746 00:41:42,544 --> 00:41:43,879 僕は俳優だ 747 00:41:45,130 --> 00:41:47,382 ﹁レ︱ズン・ イン・ザ・サン﹂ 748 00:41:45,631 --> 00:41:47,382 俺には計画がある 749 00:41:47,508 --> 00:41:50,177 1961年 750 00:41:47,508 --> 00:41:51,011 この街をひっくり返してやる 751 00:41:51,136 --> 00:41:52,179 分かるか? 752 00:41:52,304 --> 00:41:55,724 翌年 映画化され 舞台も盛況 753 00:41:52,804 --> 00:41:55,724 監督 ダニエル・ペトリ 754 00:41:56,141 --> 00:41:59,061 非常に刺激的な演技だったよ 755 00:41:59,186 --> 00:42:05,025 初期の公民権運動の中で 黒人による作品がヒットした 756 00:42:05,150 --> 00:42:09,404 白人の脚本家が書いた 他の作品とは違う 757 00:42:09,530 --> 00:42:13,450 ロレインが描く黒人には 現実味があった 758 00:42:10,405 --> 00:42:13,450 ロレイン・ハンズベリ︱ 759 00:42:13,575 --> 00:42:15,827 そこが他と異なるんだ 760 00:42:15,953 --> 00:42:18,372 あんたは忙しいんだろ 761 00:42:18,497 --> 00:42:19,957 ウォルター 762 00:42:21,333 --> 00:42:24,962 黒人の大学生ほど 忙しい奴はいないよな 763 00:42:23,377 --> 00:42:26,505 ルイス・ゴセット・Jr 764 00:42:25,087 --> 00:42:27,297 友愛会のバッジに 白い靴で・・・ 765 00:42:27,422 --> 00:42:28,006 ねえ 766 00:42:28,131 --> 00:42:33,345 本を脇に抱えて 授業に行く姿を俺は見てる 767 00:42:33,720 --> 00:42:36,223 何を頭に詰め込んでる? 768 00:42:36,348 --> 00:42:40,727 黒人の可能性には ある意味 限界があった 769 00:42:40,853 --> 00:42:44,231 特に野心的な 若い黒人にとってはね 770 00:42:44,439 --> 00:42:47,067 それをシドニーが表現した 771 00:42:47,192 --> 00:42:49,444 この作品のシドニーと–– 772 00:42:49,570 --> 00:42:53,991 「ボーイズ’ン・ザ・フッド」の 少年は ほぼ同じ 773 00:42:54,116 --> 00:42:56,827 君は苦痛に満ちてる 774 00:42:58,495 --> 00:43:00,664 あんたは どうなんだ? 775 00:43:00,789 --> 00:43:03,500 成功はつかめそうか? 776 00:43:05,210 --> 00:43:06,211 聞けよ 777 00:43:09,089 --> 00:43:10,090 苦痛だと? 778 00:43:11,008 --> 00:43:14,261 俺は火山で巨人だ アリに囲まれてる 779 00:43:14,386 --> 00:43:16,930 俺の話も理解できないアリだ 780 00:43:17,347 --> 00:43:20,726 彼は先を読んだ上で 芸術を紡ぐんだ 781 00:43:20,851 --> 00:43:23,729 カメラの位置や役者の動き 782 00:43:23,854 --> 00:43:25,397 すべて把握してた 783 00:43:25,522 --> 00:43:28,483 マネしたくなる役者だよ 784 00:43:33,822 --> 00:43:36,867 ﹁パリの旅愁﹂ 785 00:43:37,159 --> 00:43:38,368 1961年 786 00:43:38,869 --> 00:43:42,206 監督 マ︱ティン・リット 787 00:43:41,288 --> 00:43:44,333 シドニ︱と会った きっかけは︱ 788 00:43:44,458 --> 00:43:47,336 伯母のダイアンと 恋仲だったからだ 789 00:43:47,461 --> 00:43:49,046 俺は5歳だった 790 00:43:49,171 --> 00:43:52,716 2人が どんな関係だったかは 791 00:43:51,340 --> 00:43:55,427 レニ︱・クラヴィッツ 792 00:43:53,133 --> 00:43:57,804 シドニ︱の自叙伝を 読んで 知ったんだ 793 00:43:58,096 --> 00:44:03,352 当時の伯母は2人について 多くを語らなかった 794 00:44:03,477 --> 00:44:07,898 俺が大人になってから 話を聞いたよ 795 00:44:08,023 --> 00:44:09,942 “今なら話せる”と 796 00:44:10,651 --> 00:44:13,737 初めて聞いた時は驚いた 797 00:44:13,862 --> 00:44:16,323 複雑な関係だったとはね 798 00:44:17,324 --> 00:44:18,242 ステキね 799 00:44:18,951 --> 00:44:21,703 私までステキになった気分 800 00:44:22,287 --> 00:44:23,997 あなたといると–– 801 00:44:24,122 --> 00:44:27,459 自分が特別だと思える 802 00:44:27,584 --> 00:44:29,545 セクシーな映画だよ 803 00:44:29,670 --> 00:44:31,922 美しい白黒映画で–– 804 00:44:32,214 --> 00:44:34,091 優雅なパリが舞台だ 805 00:44:34,424 --> 00:44:37,469 洞窟みたいな ジャズクラブもいい 806 00:44:37,594 --> 00:44:39,096 出演者はポール・ニューマン 807 00:44:39,763 --> 00:44:42,099 そして伯母のダイアン 808 00:44:42,224 --> 00:44:46,478 作品中で 驚くべき魅力を放ってる 809 00:44:46,603 --> 00:44:50,524 シドニーとダイアンは 最も美しいカップルだ 810 00:44:50,649 --> 00:44:53,861 トレンチコートで 夜のパリを歩き–– 811 00:44:53,986 --> 00:44:57,322 公民権運動や愛について 語り合う 812 00:44:57,614 --> 00:45:00,242 もう少しパリにいろよ 813 00:45:00,367 --> 00:45:02,578 のんびりランチするんだ 814 00:45:02,703 --> 00:45:04,705 ある朝 海を見渡し–– 815 00:45:04,830 --> 00:45:06,331 “ここだ”と思うはず 816 00:45:06,957 --> 00:45:10,669 彼は国民的スターに なっていく中で–– 817 00:45:10,794 --> 00:45:13,130 私的な悩みも抱えてた 818 00:45:13,255 --> 00:45:18,343 ダイアンとの深い絆を感じ 妻とは距離を感じる 819 00:45:18,468 --> 00:45:20,345 だが彼は父親だ 820 00:45:20,470 --> 00:45:25,517 どれだけ子供に与えたかが 重要だと教えられてる 821 00:45:25,642 --> 00:45:29,188 その教えに逆らって 不倫をするのか? 822 00:45:29,813 --> 00:45:31,648 行かせたくない 823 00:45:32,774 --> 00:45:34,443 じゃあ一緒に来て 824 00:45:35,360 --> 00:45:39,198 撮影が終わる頃もまだ 半端な関係だった 825 00:45:39,323 --> 00:45:42,993 互いの人生も 2人の関係も先が見えず 826 00:45:43,118 --> 00:45:46,246 家庭をどうすべきかも 分からなかった 827 00:45:46,788 --> 00:45:49,249 “忙しい”と言われたわ 828 00:45:49,374 --> 00:45:52,836 “だから家にいられない” 829 00:45:52,961 --> 00:45:56,590 “執筆のために アパートを借りる” 830 00:45:56,715 --> 00:45:59,092 “仕事のためだ”とね 831 00:45:59,510 --> 00:46:01,887 もちろん 後になって–– 832 00:46:02,012 --> 00:46:04,640 ウソだったと判明した 833 00:46:04,765 --> 00:46:08,060 仕事のためじゃなかったわ 834 00:46:14,942 --> 00:46:17,236 今こそ自由を求めましょう 835 00:46:17,361 --> 00:46:19,446 〝公民権を求めて 行進しよう〟 836 00:46:18,445 --> 00:46:21,782 皆で首都ワシントンへ 行くのです 837 00:46:21,907 --> 00:46:26,328 飛行機でも車でもバスでも 何としても行きましょう 838 00:46:23,450 --> 00:46:25,410 〝ワシントンの行進に 参加を〟 839 00:46:29,373 --> 00:46:31,959 “彼らは至る所から流れ込む” 840 00:46:35,379 --> 00:46:40,300 すべてにおいて黒人も 白人と同等の権利を求める 841 00:46:40,425 --> 00:46:43,011 自由を! 自由を! 842 00:46:51,895 --> 00:46:56,233 ワシントン大行進 1963年 843 00:46:56,400 --> 00:46:59,194 ケネディ大統領の 公民権法案への–– 844 00:46:59,319 --> 00:47:02,281 支持を表明するための 行進です 845 00:47:02,406 --> 00:47:05,242 南部の黒人運動を やってた 846 00:47:03,031 --> 00:47:05,242 政治家/活動家 アンドリュ︱・ヤング 元国連大使 847 00:47:05,367 --> 00:47:07,619 1963年8月までね 848 00:47:07,744 --> 00:47:09,079 〝共に生き 働こう〟 849 00:47:07,995 --> 00:47:11,456 南部の黒人の 夢を語ったのは–– 850 00:47:11,582 --> 00:47:14,126 キング牧師だけじゃない 851 00:47:14,251 --> 00:47:19,131 ハリウッドのスターたちも 同じだったんだ 852 00:47:35,772 --> 00:47:40,027 ハリーとシドニーの参加で 世界的なイベントに 853 00:47:40,152 --> 00:47:42,779 キング牧師が出てくる前の話さ 854 00:47:44,239 --> 00:47:47,075 牧師はマーロンを知らなかった 855 00:47:48,202 --> 00:47:50,621 ポール・ニューマンも 856 00:47:51,538 --> 00:47:55,709 牧師の運動に賛同し 行進したスターだがね 857 00:47:55,834 --> 00:48:00,047 シドニーとハリーが 橋渡し役だった 858 00:48:00,380 --> 00:48:04,134 抗議者は皆 繰り返し訴えてるね 859 00:48:04,259 --> 00:48:08,180 “今だ 今だ 今だ!”と 860 00:48:08,305 --> 00:48:08,889 今だ! 861 00:48:09,014 --> 00:48:11,975 何年もの間 “今だ”という思いを–– 862 00:48:12,100 --> 00:48:14,353 膨らませてきたんだ 863 00:48:14,478 --> 00:48:16,897 大人になってからは–– 864 00:48:17,022 --> 00:48:20,776 人権としての 公民権に興味を持った 865 00:48:20,901 --> 00:48:25,364 以前から 興味は持ってたけれど–– 866 00:48:25,489 --> 00:48:29,326 積極的に 活動したことはなかった 867 00:48:29,451 --> 00:48:30,827 皆さん そろそろ… 868 00:48:30,953 --> 00:48:33,830 シドニーの積極的な行動が–– 869 00:48:33,956 --> 00:48:36,500 きっかけをくれたんだ 870 00:48:33,956 --> 00:48:37,668 ロバ︱ト・ レッドフォ︱ド 871 00:48:36,625 --> 00:48:38,961 〝僕にも何かできる〟 872 00:48:39,086 --> 00:48:41,797 “僕なりの何かを 見つければいい” 873 00:48:41,922 --> 00:48:44,007 “発信しよう”と思えた 874 00:48:44,132 --> 00:48:46,134 彼はハンデを背負ってた 875 00:48:46,260 --> 00:48:49,471 まず“何様だ?”と 言われるからね 876 00:48:49,721 --> 00:48:50,889 不公平だよ 877 00:48:51,014 --> 00:48:55,310 立場を利用して 意見を言って何が悪いんだ 878 00:48:55,435 --> 00:48:58,605 俳優にも 意見を言う権利はある 879 00:48:58,897 --> 00:49:03,402 残念ながら 多くのアメリカ人には–– 880 00:49:03,986 --> 00:49:07,030 信用してもらえなかった 881 00:49:07,614 --> 00:49:10,617 腹が立つこともあったよ 882 00:49:10,742 --> 00:49:14,705 黒人の扱いは 僕には変えられないと–– 883 00:49:14,830 --> 00:49:17,666 突き付けられてるようだった 884 00:49:18,166 --> 00:49:20,043 映画業界は遅れてて–– 885 00:49:20,169 --> 00:49:23,672 主役級の黒人は 1人だけだった 886 00:49:23,797 --> 00:49:26,258 他にも黒人俳優はいたけどね 887 00:49:26,383 --> 00:49:28,343 〝プライベ︱ト・ パ︱ティ︱〟 888 00:49:26,717 --> 00:49:29,887 かなり保守的な業界だ 889 00:49:30,012 --> 00:49:34,057 進歩的な政策に追いつくには 時間がかかった 890 00:49:34,308 --> 00:49:36,894 “第2のシドニー・ポワチエ”は 891 00:49:37,019 --> 00:49:39,188 必然的に育たなかった 892 00:49:39,396 --> 00:49:44,359 彼は いろいろな要素を持つ いわば複合施設だ 893 00:49:44,484 --> 00:49:48,280 よって人種に関する 映画業界のスタンスは… 894 00:49:48,405 --> 00:49:49,531 “シドニーがいる” 895 00:49:49,656 --> 00:49:52,451 “他の黒人は不要だろ?” 896 00:49:52,576 --> 00:49:57,998 シドニーは軍を率いて 人種差別と闘う兵士なの 897 00:49:58,373 --> 00:50:03,504 彼は肌の色は関係ないことを よく理解していた 898 00:50:03,921 --> 00:50:09,718 社会への反発や弁明のために 言ってるわけじゃない 899 00:50:09,843 --> 00:50:11,595 単に事実だからよ 900 00:50:11,762 --> 00:50:14,806 さまざまなことがあったよ 901 00:50:15,098 --> 00:50:18,936 人生で方向転換や 選択をする時に–– 902 00:50:19,061 --> 00:50:21,104 役立ったことがね 903 00:50:21,480 --> 00:50:26,068 人生の選択というのは 功績を求めて–– 904 00:50:26,193 --> 00:50:30,697 “こうすべきだ”と 決めるものじゃない 905 00:50:30,822 --> 00:50:35,160 自分を突き動かすものを–– 906 00:50:35,285 --> 00:50:38,121 選んでいくべきだ 907 00:50:39,456 --> 00:50:42,042 「野のユリ」 908 00:50:46,171 --> 00:50:49,466 1963年 909 00:50:49,883 --> 00:50:52,719 監督 ラルフ・ネルソン 910 00:50:52,845 --> 00:50:55,305 「野のユリ」は低予算映画だ 911 00:50:55,430 --> 00:50:57,724 黒人の便利屋が南西部で–– 912 00:50:57,850 --> 00:51:02,479 修道女たちの教会を建てる 地味な物語だ 913 00:51:02,604 --> 00:51:06,608 神が大きくて強い男を 与えてくれた 914 00:51:06,984 --> 00:51:08,902 神からは聞いてない 915 00:51:09,027 --> 00:51:10,279 通りがかりだ 916 00:51:10,404 --> 00:51:12,948 1963年 俺は6歳だった 917 00:51:13,073 --> 00:51:17,452 “シドニー 逃げろ 面倒なことになるぞ”と 918 00:51:18,203 --> 00:51:20,330 思ったもんだね 919 00:51:20,455 --> 00:51:22,833 それが6歳児の感想だ 920 00:51:22,958 --> 00:51:28,922 “出演料が少なすぎる”と シドニーは言ってたわ 921 00:51:29,256 --> 00:51:31,008 だから言ったの 922 00:51:31,216 --> 00:51:34,344 “ギャラのためでなく––” 923 00:51:34,469 --> 00:51:38,515 “映画の所有者の1人として 出たらいい” 924 00:51:38,640 --> 00:51:42,144 彼にとって 新鮮な考え方だったみたい 925 00:51:42,269 --> 00:51:44,980 最初に打診されたハリーは–– 926 00:51:45,105 --> 00:51:48,400 “現実味に欠ける役だ”と 言って断った 927 00:51:48,734 --> 00:51:50,736 つまらない映画だ 928 00:51:50,110 --> 00:51:55,073 ハリ︱・ ベラフォンテの肉声 929 00:51:50,861 --> 00:51:52,863 ひどい脚本だったよ 930 00:51:52,988 --> 00:51:56,283 だからオファ︱を 潔く断った 931 00:51:56,408 --> 00:51:58,702 結局シドニーが受けた 932 00:51:59,369 --> 00:52:01,330 好演してたね 933 00:52:01,455 --> 00:52:05,542 ハリーは歌手としても 活躍してたから–– 934 00:52:05,667 --> 00:52:07,503 打診を断れたんだ 935 00:52:07,628 --> 00:52:10,839 金があれば 仕事を選べる 936 00:52:10,964 --> 00:52:15,302 “デーオ”って歌ってたからね 悪口じゃないよ 937 00:52:16,929 --> 00:52:17,930 ね? 938 00:52:20,265 --> 00:52:21,725 「ハロー・ドーリー!」で–– 939 00:52:21,850 --> 00:52:24,520 パ︱ル・ベイリ︱と 共演した 940 00:52:24,228 --> 00:52:27,064 パ︱ル・ベイリ︱ 941 00:52:24,645 --> 00:52:27,773 彼女は著名人が 見に来ると︱ 942 00:52:27,898 --> 00:52:29,942 必ず舞台上に呼ぶんだ 943 00:52:30,067 --> 00:52:31,735 皆 応えてたよ 944 00:52:34,821 --> 00:52:37,616 シドニーを舞台に上げた時–– 945 00:52:37,741 --> 00:52:40,035 彼女は歌おうと誘った 946 00:52:40,160 --> 00:52:43,288 彼は“歌えない!”と 拒んだんだ 947 00:52:43,830 --> 00:52:45,040 よし いくぞ 948 00:52:47,960 --> 00:52:52,297 “映画で歌ってたわ”と 彼女は言い返した 949 00:52:52,422 --> 00:52:54,508 彼の返事は“僕じゃない!” 950 00:53:01,265 --> 00:53:02,474 ほら 歌って 951 00:53:05,060 --> 00:53:08,105 この低予算映画が ロングヒットした 952 00:53:08,230 --> 00:53:10,649 国のムードに共鳴したんだ 953 00:53:10,774 --> 00:53:14,111 特にホーマー役の シドニーの演技が–– 954 00:53:14,236 --> 00:53:15,904 評価された 955 00:53:16,029 --> 00:53:19,199 彼の愛らしく 親しみやすい雰囲気が–– 956 00:53:19,324 --> 00:53:21,326 作品にハマった 957 00:53:21,451 --> 00:53:22,995 ホーマーは–– 958 00:53:23,120 --> 00:53:28,000 があり 明るくて すばらしい青年だ 959 00:53:28,125 --> 00:53:31,920 誰もが持つ 人間のいい部分を–– 960 00:53:32,045 --> 00:53:33,463 体現してる 961 00:53:35,549 --> 00:53:39,595 1964年 アカデミ︱賞 962 00:53:38,010 --> 00:53:39,595 大事な夜です 963 00:53:39,720 --> 00:53:42,681 第36回のアカデミー賞です 964 00:53:42,806 --> 00:53:47,728 年間のトップスターたちへ オスカーが贈られます 965 00:53:47,853 --> 00:53:50,731 10歳の時 ミルウォーキーで–– 966 00:53:50,856 --> 00:53:54,651 アカデミー賞の授賞式を見てた 967 00:53:55,319 --> 00:53:58,113 リムジンで 次々にスターが現れる 968 00:53:58,530 --> 00:54:01,992 黒人がテレビに映るたびに 969 00:54:02,117 --> 00:54:04,703 電話をかけまくった 970 00:54:04,828 --> 00:54:06,705 “黒人よ 黒人が出てる!” 971 00:54:06,830 --> 00:54:07,998 “テレビつけて” 972 00:54:08,123 --> 00:54:10,000 肝心な部分は見逃した 973 00:54:10,584 --> 00:54:12,878 最優秀男優賞の候補は–– 974 00:54:13,003 --> 00:54:15,214 アルバート・フィニー 975 00:54:15,839 --> 00:54:18,175 リチャード・ハリス 976 00:54:19,092 --> 00:54:21,053 レックス・ハリソン 977 00:54:22,930 --> 00:54:24,556 ポール・ニューマン 978 00:54:25,349 --> 00:54:27,559 シドニー・ポワチエ 979 00:54:29,478 --> 00:54:32,147 最優秀賞は シドニー・ポワチエ 980 00:54:33,440 --> 00:54:37,027 名前を呼ばれて 飛び上がって叫んだ 981 00:54:37,152 --> 00:54:41,406 “受賞した 僕が最優秀賞だ!” 982 00:54:41,532 --> 00:54:43,492 我慢できなかった 983 00:54:43,909 --> 00:54:46,787 自分が抑えられなくてね 984 00:54:46,912 --> 00:54:51,667 だが多くの人が 同じ気持ちでいてくれただろう 985 00:54:51,792 --> 00:54:53,335 想像できる? 986 00:54:53,460 --> 00:54:56,171 公民権法の制定前よ 987 00:54:56,296 --> 00:54:58,215 衝撃的だったはず 988 00:54:58,340 --> 00:55:03,679 会場は純粋な喜びと魔法に 包まれたでしょうね 989 00:55:03,804 --> 00:55:07,975 黒人が抱える問題を 超越するような–– 990 00:55:08,100 --> 00:55:12,938 ものすごく 美しい出来事が起きたの 991 00:55:13,063 --> 00:55:16,024 黒人初の最優秀男優賞です 992 00:55:16,149 --> 00:55:18,944 観客から祝福されています 993 00:55:24,575 --> 00:55:27,035 受賞が転換点となった 994 00:55:27,160 --> 00:55:32,291 映画業界における真の転換点だ 995 00:55:32,416 --> 00:55:37,087 現実とは異なる黒人像を–– 996 00:55:37,671 --> 00:55:42,134 描き続けてきた ハリウッドが変わった 997 00:55:42,259 --> 00:55:43,468 ここまで… 998 00:55:44,761 --> 00:55:48,599 本当に長い旅路だった 999 00:55:49,266 --> 00:55:53,187 数え切れないほど 多くの人に–– 1000 00:55:53,770 --> 00:55:56,106 お世話になってきた 1001 00:55:56,315 --> 00:55:58,609 私にとって 彼が–– 1002 00:55:58,734 --> 00:56:01,236 黒人の期待の星になった 1003 00:56:01,361 --> 00:56:03,989 あの時の気持ちは忘れない 1004 00:56:04,573 --> 00:56:06,909 黒人の彼にできたなら–– 1005 00:56:07,242 --> 00:56:10,120 私も成功できるかもと思った 1006 00:56:10,329 --> 00:56:14,291 皆さんに 心からの感謝を伝えたい 1007 00:56:44,738 --> 00:56:48,617 彼の成功は 後輩俳優だけでなく–– 1008 00:56:48,742 --> 00:56:53,121 両親や奴隷時代の人々の 成功でもあった 1009 00:56:53,247 --> 00:56:57,209 彼らが大喜びした姿が 見えるようだ 1010 00:56:57,835 --> 00:57:00,295 1964年 バハマ ナッソ︱ 1011 00:57:04,258 --> 00:57:08,387 バハマ出身の黒人が初めて–– 1012 00:57:08,595 --> 00:57:10,097 受賞したんだ 1013 00:57:10,222 --> 00:57:13,600 他の俳優より 100倍優れてないと–– 1014 00:57:13,725 --> 00:57:16,353 受賞できない時代だった 1015 00:57:21,275 --> 00:57:23,193 予想だにしなかった 1016 00:57:23,318 --> 00:57:26,446 自分は特に優秀な役者でもなく 1017 00:57:26,572 --> 00:57:30,117 純粋な気持ちで 始めたわけでもない 1018 00:57:30,701 --> 00:57:34,329 だが内なる力によって 続けてきた 1019 00:57:34,705 --> 00:57:36,582 昔の母も同じだ 1020 00:57:36,915 --> 00:57:42,421 母なる本能によって 僕の命を救ってくれた 1021 00:57:44,339 --> 00:57:46,383 僕は短命のはずだった 1022 00:57:46,508 --> 00:57:48,468 皆 悲しんでた 1023 00:57:48,594 --> 00:57:52,764 2ヵ月早く 生まれてしまったんだ 1024 00:57:53,265 --> 00:57:56,226 翌朝 父は出かけた 1025 00:57:56,351 --> 00:57:58,729 僕の命は長くないと–– 1026 00:57:58,854 --> 00:58:01,648 助産師を含め みんなが思った 1027 00:58:02,941 --> 00:58:05,736 そして父が ある物を持ち帰る 1028 00:58:06,862 --> 00:58:08,322 靴の箱だ 1029 00:58:10,490 --> 00:58:11,700 それは… 1030 00:58:14,328 --> 00:58:17,456 僕の埋葬用だった 1031 00:58:18,790 --> 00:58:20,792 でも母は抵抗した 1032 00:58:20,918 --> 00:58:22,961 “諦めてはダメ”と言い–– 1033 00:58:23,795 --> 00:58:24,963 家を出た 1034 00:58:25,088 --> 00:58:29,801 考え得る限りの所へ行き 助けを求めたんだ 1035 00:58:29,927 --> 00:58:34,806 その時 予言者の家の前を 通りかかってね 1036 00:58:34,932 --> 00:58:37,142 母は予言者に尋ねた 〝マダム・ベス あなたに特別な幸運を〟 1037 00:58:37,267 --> 00:58:40,020 “早産の赤ん坊がいるの” 1038 00:58:40,145 --> 00:58:43,106 “息子は この先どうなる?” 1039 00:58:44,274 --> 00:58:48,946 予言者が目を閉じると その顔がし–– 1040 00:58:49,071 --> 00:58:52,407 まぶたの裏で 目が激しく動いた 1041 00:58:54,535 --> 00:58:58,830 そして突然 目を見開いて言ったんだ 1042 00:58:58,956 --> 00:59:00,958 “心配要らない” 1043 00:59:04,336 --> 00:59:05,546 “彼は生き延びる” 1044 00:59:06,296 --> 00:59:09,132 “世界中を飛び回り––” 1045 00:59:09,258 --> 00:59:13,470 “富と名声を 手に入れるでしょう” 1046 00:59:14,179 --> 00:59:17,140 母の名と共に 世界を旅すると 1047 00:59:18,392 --> 00:59:21,812 予言者の言ったとおりだ 1048 00:59:23,856 --> 00:59:25,566 僕は生き延びたんだ 1049 00:59:27,693 --> 00:59:32,072 NBCニュ︱スの 特別リポ︱トです 1050 00:59:32,197 --> 00:59:35,075 3人の公民権運動家が 1051 00:59:35,200 --> 00:59:36,994 行方不明のままです 1052 00:59:37,119 --> 00:59:40,330 チェイニ︱とグッドマン シュワ︱ナ︱は︱ 1053 00:59:37,578 --> 00:59:41,248 1964年 ミシシッピ州 1054 00:59:40,455 --> 00:59:43,000 公民権運動の 支援中でした 1055 00:59:43,125 --> 00:59:45,544 私も運動に参加した 1056 00:59:44,710 --> 00:59:49,006 人権活動家 ウィリ︱・ブル︱牧師 1057 00:59:46,962 --> 00:59:49,006 ヒッチハイクで ミシシッピへ 1058 00:59:49,131 --> 00:59:51,758 グッドマン以外は知り合いだ 1059 00:59:52,092 --> 00:59:53,635 彼らは先生だった 1060 00:59:53,760 --> 00:59:57,139 人々に選挙権とは何か 1061 00:59:57,264 --> 01:00:00,392 何が変わるかを教えてくれた 1062 00:59:57,264 --> 01:00:00,392 何が変わるかを教えてくれた 1063 00:59:58,640 --> 01:00:00,392 〝1人1票 至急 登録を!〟 1064 00:59:58,640 --> 01:00:00,392 〝1人1票 至急 登録を!〟 1065 01:00:00,517 --> 01:00:04,104 アメリカン・ドリームを 説いてくれたんだ 1066 01:00:04,396 --> 01:00:07,399 投票して 意思を示そう 1067 01:00:07,524 --> 01:00:09,902 シドニ︱・ポワチエ 1068 01:00:07,941 --> 01:00:09,902 しなければ 変化はない 1069 01:00:10,235 --> 01:00:13,280 意思を示すため 必ず投票を 1070 01:00:13,405 --> 01:00:15,824 南部へ行った時に–– 1071 01:00:15,949 --> 01:00:19,119 恐ろしいことが あったそうだね 1072 01:00:19,244 --> 01:00:20,746 話を聞かせて 1073 01:00:21,079 --> 01:00:23,540 シドニーは 26年来の友人だ 1074 01:00:24,625 --> 01:00:27,961 あの時ほど 2人の絆が強まった–– 1075 01:00:28,086 --> 01:00:30,422 出来事は他にない 1076 01:00:31,006 --> 01:00:33,842 親友のハリーが ミシシッピに–– 1077 01:00:33,967 --> 01:00:36,929 一緒に来てくれと言ってきた 1078 01:00:37,054 --> 01:00:40,265 公民権運動を 支援するためだった 1079 01:00:40,390 --> 01:00:45,187 現地の団体が 資金不足で困ってたんだ 1080 01:00:45,312 --> 01:00:48,899 ミシシッピでは 敬意を持って対応する 1081 01:00:48,398 --> 01:00:52,444 ロス・バ︱ネット元知事 1082 01:00:49,024 --> 01:00:53,946 法に背かない者に 対してはね 1083 01:00:54,154 --> 01:00:57,824 昼夜問わず 強迫電話がかかってきた 1084 01:00:57,950 --> 01:01:02,621 ハリーとシドニーを 暗殺すると脅された 1085 01:01:02,746 --> 01:01:06,333 グリーンウッドに来る 黒人は殺すとね 1086 01:01:06,458 --> 01:01:10,546 ロバート・ケネディと 交友関係にあったから–– 1087 01:01:10,671 --> 01:01:12,798 司法省に連絡が行き︱ 1088 01:01:11,505 --> 01:01:13,715 公民権局 1089 01:01:12,923 --> 01:01:18,136 護衛が来るものと 考えてたんだ 1090 01:01:18,345 --> 01:01:19,721 だが現地に着くと–– 1091 01:01:19,847 --> 01:01:23,016 連邦保安官も護衛も いなかった 1092 01:01:23,141 --> 01:01:25,269 移動車は2台で–– 1093 01:01:25,394 --> 01:01:29,022 俺たちが乗る車と 護衛用の車があった 1094 01:01:29,147 --> 01:01:31,233 誰も運転したがらず–– 1095 01:01:32,234 --> 01:01:33,777 私が運転した 1096 01:01:33,902 --> 01:01:38,407 互いに握手や挨拶を 済ませたあと 1097 01:01:38,532 --> 01:01:41,368 私の車に荷物が積まれた 1098 01:01:42,077 --> 01:01:45,914 そしてシドニーとハリーは–– 1099 01:01:46,039 --> 01:01:48,458 前の車に乗ったんだ 1100 01:01:49,001 --> 01:01:52,838 車に乗り込むと “奴らだ”と誰かが言った 1101 01:01:54,548 --> 01:01:58,135 ライトで照らすと KKKが見えた 1102 01:01:59,720 --> 01:02:01,138 急発進すると–– 1103 01:02:01,263 --> 01:02:03,223 奴らの車が追ってきた 1104 01:02:03,348 --> 01:02:07,811 それに加えて 進路妨害してくる車もいた 1105 01:02:10,272 --> 01:02:12,357 後ろから追突されたよ 1106 01:02:12,482 --> 01:02:15,861 抜かれたら終わりだと思ったね 1107 01:02:16,945 --> 01:02:20,449 奴らは後続車に追突して 移動させたり 1108 01:02:20,574 --> 01:02:23,952 道路から はじき出そうとした 1109 01:02:24,077 --> 01:02:25,829 道は絶対譲れない 1110 01:02:25,954 --> 01:02:28,957 撃たれて死ぬ覚悟までしたよ 1111 01:02:34,713 --> 01:02:37,966 その後3キロほど 逃げ回って–– 1112 01:02:38,383 --> 01:02:41,762 ようやく 追い払うことができた 1113 01:02:42,679 --> 01:02:46,350 大勢の学生たちが 車に乗って–– 1114 01:02:46,475 --> 01:02:48,352 援護に来てくれた 1115 01:02:48,477 --> 01:02:53,774 そしてグリーンウッドまで 先導してくれたんだ 1116 01:02:53,899 --> 01:02:55,859 まるで聖書の世界だ 1117 01:02:55,984 --> 01:02:58,237 木に登る人々が見えた 1118 01:02:58,862 --> 01:03:03,450 街の一画は大勢の人で 埋め尽くされてた 1119 01:03:04,159 --> 01:03:08,664 感動して涙が出たよ 1120 01:03:09,540 --> 01:03:14,962 木や屋根に登る人々の姿は–– 1121 01:03:15,879 --> 01:03:17,422 魔法のようだった 1122 01:03:19,132 --> 01:03:20,843 シドニーを見ると–– 1123 01:03:20,968 --> 01:03:24,513 「野のユリ」の歌を 歌い始めたんだ 1124 01:03:24,638 --> 01:03:25,764 “アーメン” 1125 01:03:28,767 --> 01:03:30,519 特別な時間だった 1126 01:03:39,528 --> 01:03:44,366 毎年3月や4月の 新聞には︱ 1127 01:03:42,281 --> 01:03:45,325 1967年 マ︱ティン・ル︱サ︱・ キング・ジュニア牧師 1128 01:03:44,491 --> 01:03:49,496 〝長い暑い夏〟について 記事が出始める 1129 01:03:53,667 --> 01:03:57,754 略奪や殺人や放火は 公民権とは無関係だ 1130 01:03:58,589 --> 01:03:59,631 デトロイト 1131 01:04:00,549 --> 01:04:01,592 ボストン 1132 01:04:02,467 --> 01:04:03,552 ニュ︱ア︱ク 1133 01:04:04,303 --> 01:04:07,598 もううんざりしてるんだ 1134 01:04:07,723 --> 01:04:10,601 我々は引かない 本気だ 1135 01:04:08,182 --> 01:04:10,601 チャ︱ルズ・エバ︱ス 1136 01:04:10,726 --> 01:04:14,605 当時10歳だったが 鮮明に覚えてる 1137 01:04:14,730 --> 01:04:17,983 1967年は “シドニーの夏”だった 1138 01:04:18,108 --> 01:04:20,819 シドニ︱出演の映画を 1139 01:04:20,944 --> 01:04:23,197 母と一緒に3本見た 1140 01:04:23,322 --> 01:04:25,657 黒人の映画俳優はいたが 1141 01:04:25,782 --> 01:04:29,453 黒人のハリウッドスターは シドニーが初だ 1142 01:04:29,578 --> 01:04:32,831 客はシドニーの映画を見に行く 1143 01:04:32,956 --> 01:04:36,710 白人さえもが シドニーを見に行ってた 1144 01:04:36,835 --> 01:04:40,756 それも 公民権運動の真っただ中に 1145 01:04:40,881 --> 01:04:42,633 模範的スターだ 1146 01:04:42,758 --> 01:04:47,638 シドニーは 1967~68年の興行成績1位 1147 01:04:47,846 --> 01:04:51,433 国の混乱期の大スターよ 1148 01:04:51,975 --> 01:04:53,769 「夜の大捜査線」 1149 01:05:04,446 --> 01:05:05,906 立てよ 1150 01:05:06,406 --> 01:05:09,618 監督 ノ︱マン・ ジュイソン 1151 01:05:09,743 --> 01:05:11,370 今すぐだ! 1152 01:05:11,495 --> 01:05:16,667 シドニーの威厳に満ちた態度が 印象に残ってる 1153 01:05:17,084 --> 01:05:20,629 物語は予測どおり進まず 彼は あらがう 1154 01:05:20,754 --> 01:05:23,882 しばらく 彼は我慢するが–– 1155 01:05:24,550 --> 01:05:25,676 爆発するんだ 1156 01:05:26,385 --> 01:05:28,595 自信家だな バージル 1157 01:05:28,720 --> 01:05:30,430 黒人らしくない名だ 1158 01:05:30,556 --> 01:05:32,349 何て呼ばれてる? 1159 01:05:32,474 --> 01:05:35,602 ティッブスさんだ 1160 01:05:35,727 --> 01:05:37,813 “ティッブスさんだ” 1161 01:05:37,938 --> 01:05:40,023 大好きなシーンよ 1162 01:05:40,148 --> 01:05:42,317 観客の大半は黒人で–– 1163 01:05:42,442 --> 01:05:46,697 拍手喝采で みんな生き生きとしてた 1164 01:05:46,947 --> 01:05:49,241 温室のシーンが有名だ 1165 01:05:49,366 --> 01:05:51,660 白人の農園主にたたかれ–– 1166 01:05:51,785 --> 01:05:53,745 シドニーがたたき返す 1167 01:05:53,871 --> 01:05:57,499 1967年の映画館に 衝撃が走ったよ 1168 01:05:57,708 --> 01:06:02,588 コルバートさんは 昨日の深夜 温室に? 1169 01:06:06,133 --> 01:06:08,051 観客はシーンとなる 1170 01:06:08,510 --> 01:06:10,804 あんな静寂は経験がない 1171 01:06:10,929 --> 01:06:12,222 息をのみ… 1172 01:06:12,347 --> 01:06:14,266 顔を見合わせてた 1173 01:06:14,516 --> 01:06:18,061 前代未聞だから 黒人は盛り上がった 1174 01:06:21,940 --> 01:06:23,817 映画史上 初めてだ 1175 01:06:23,942 --> 01:06:25,485 すごい男だよ 1176 01:06:25,611 --> 01:06:27,529 この件 どうする? 1177 01:06:29,823 --> 01:06:31,158 さあね 1178 01:06:32,492 --> 01:06:34,244 皆 同じ反応だ 1179 01:06:34,620 --> 01:06:35,829 イエーイ! 1180 01:06:38,040 --> 01:06:41,168 元の脚本では 軽蔑の目で見て–– 1181 01:06:41,293 --> 01:06:44,254 義憤に満ちて 出ていくはずだった 1182 01:06:44,671 --> 01:06:47,174 他の俳優は従うだろうが–– 1183 01:06:47,299 --> 01:06:48,926 僕はやらない 1184 01:06:49,176 --> 01:06:54,389 マイアミで警察に 銃を突き付けられたからね 1185 01:06:54,515 --> 01:06:58,936 脚本を変えたいと 監督に要求した 1186 01:06:59,353 --> 01:07:01,605 シドニーだからできた 1187 01:07:01,730 --> 01:07:03,607 スターだったからね 1188 01:07:03,732 --> 01:07:06,151 それは疑いようもない 1189 01:07:06,276 --> 01:07:10,239 彼は物事を思いどおりに できるんだ 1190 01:07:11,990 --> 01:07:15,827 当然 あのシーンは 映画の見どころになった 1191 01:07:15,953 --> 01:07:21,166 アメリカに 黒人の時代が 来たことも象徴してる 1192 01:07:21,291 --> 01:07:26,046 少なくとも映画の中では 1歩進んだんだ 1193 01:07:26,171 --> 01:07:29,633 あの平手打ちは 世界中に響き渡った 1194 01:07:29,758 --> 01:07:31,969 彼は一気に時の人だ 1195 01:07:32,094 --> 01:07:34,847 シドニーのあの場面は–– 1196 01:07:34,972 --> 01:07:39,476 前線で起きていたことと シンクロしていた 1197 01:07:42,896 --> 01:07:45,524 ﹁いつも心に太陽を﹂ 1198 01:07:48,443 --> 01:07:51,363 監督 ジェ︱ムズ・ クラヴェル 1199 01:07:51,697 --> 01:07:55,075 黒人が子供たちに︱ 1200 01:07:54,491 --> 01:07:58,745 娘 シドニ︱・ ポワチエ・ハ︱トソング 1201 01:07:55,200 --> 01:07:59,580 教えたり導いたりする シ︱ンを見た 1202 01:07:59,705 --> 01:08:03,542 それまで一般的には 白人がヒーローで–– 1203 01:08:03,667 --> 01:08:08,380 黒人は白人に救われるか 問題を起こす役だった 1204 01:08:08,505 --> 01:08:10,966 でも この作品では逆なの 1205 01:08:11,300 --> 01:08:12,050 座れ 1206 01:08:14,511 --> 01:08:17,471 この作品は私のお気に入りよ 1207 01:08:17,598 --> 01:08:21,143 父の振る舞いが︱ 1208 01:08:20,392 --> 01:08:24,104 娘 シェリ・ポワチエ 1209 01:08:21,268 --> 01:08:25,147 私たち 娘といる時みたいでね 1210 01:08:25,272 --> 01:08:30,652 私たちに教えるように みんなにも教えてた 1211 01:08:30,986 --> 01:08:32,863 映画の中の教師は–– 1212 01:08:33,613 --> 01:08:35,782 みんなにとっては俳優 1213 01:08:35,908 --> 01:08:37,868 私にとっては父親 1214 01:08:37,993 --> 01:08:41,913 教室内での礼儀を学んでもらう 1215 01:08:42,413 --> 01:08:44,625 私を“先生”と呼ぶこと 1216 01:08:44,750 --> 01:08:47,502 女子を“さん”付けで呼び–– 1217 01:08:47,752 --> 01:08:49,587 男子を姓で呼ぶこと 1218 01:08:49,712 --> 01:08:52,090 天使が 味方してくれたのよ 1219 01:08:51,048 --> 01:08:54,510 ルル 1220 01:08:52,216 --> 01:08:54,510 私はすごく幸運だったの 1221 01:08:54,635 --> 01:08:58,721 歌手だったから 演技の経験はなかった 1222 01:08:58,846 --> 01:08:59,598 何? 1223 01:08:59,723 --> 01:09:03,477 私の賢いマネジャーは 出演依頼が来た時–– 1224 01:09:03,602 --> 01:09:06,188 主題歌も歌うことを条件にした 1225 01:09:24,372 --> 01:09:25,374 最高よ 1226 01:09:39,429 --> 01:09:42,515 歌詞にすごく共感したわ 1227 01:09:42,640 --> 01:09:46,645 メッセージ性の強い歌詞でね 1228 01:09:46,770 --> 01:09:49,314 歌のテーマは愛であり–– 1229 01:09:49,439 --> 01:09:50,899 ブラック・ライブス・マター 1230 01:09:51,024 --> 01:09:54,111 黒人の教師も 白人の生徒同様に重要よ 1231 01:09:54,236 --> 01:09:58,824 むしろ あの学校では 黒人の教師が–– 1232 01:09:58,949 --> 01:10:01,994 事実上 誰よりも 重要な存在だった 1233 01:10:02,578 --> 01:10:08,333 この映画の前にも後にも 多くのヒット曲を出したけど 1234 01:10:08,458 --> 01:10:10,377 あの曲は特別ね 1235 01:10:11,044 --> 01:10:13,213 ただの歌じゃない 1236 01:10:13,797 --> 01:10:19,136 シドニーの人生と 作品のメッセージを伝える曲よ 1237 01:10:21,013 --> 01:10:23,015 スピーチを! 1238 01:10:24,057 --> 01:10:27,144 黒人のための映画ではない 1239 01:10:27,269 --> 01:10:28,478 重要なのは–– 1240 01:10:28,604 --> 01:10:31,773 彼が意識的に伝えてる点だ 1241 01:10:31,899 --> 01:10:36,612 特にキング牧師の運動で 起きていたことをね 1242 01:10:36,737 --> 01:10:40,616 でも彼は 黒人も 人間だということを–– 1243 01:10:40,741 --> 01:10:43,118 ずっと示してきていた 1244 01:10:44,036 --> 01:10:49,541 彼は ことあるごとに 黒人も同じ人間だと訴えた 1245 01:10:49,666 --> 01:10:55,088 黒人を人間だと思ってなかった 世界に対してね 1246 01:10:55,214 --> 01:10:58,759 それがすべての 問題の根源だから 1247 01:10:55,380 --> 01:10:58,175 ﹁招かれざる客﹂ 1248 01:10:58,884 --> 01:11:03,514 私たちの人間性を 示してあげるのよ 1249 01:11:02,012 --> 01:11:05,390 監督 スタンリ︱・ クレイマ︱ 1250 01:11:03,764 --> 01:11:06,808 ジョン・ウェイド・ プレンティス 1251 01:11:06,934 --> 01:11:08,810 ステキな名前でしょ? 1252 01:11:08,936 --> 01:11:10,854 ジョン・ウェイド… 1253 01:11:12,231 --> 01:11:14,525 ジョーイ・プレンティスになる 1254 01:11:20,113 --> 01:11:21,406 彼がジョンよ 1255 01:11:23,742 --> 01:11:26,662 会えて すごくうれしい 1256 01:11:27,371 --> 01:11:29,623 僕もです ドレイトン夫人 1257 01:11:33,001 --> 01:11:35,462 僕は医者の資格があるので 1258 01:11:35,587 --> 01:11:40,008 “倒れる前に座って”と アドバイスします 1259 01:11:40,133 --> 01:11:42,594 黒人で驚いたでしょ 1260 01:11:43,053 --> 01:11:45,556 私は22歳だった 1261 01:11:45,681 --> 01:11:48,225 シドニ︱は優しかったわ 1262 01:11:46,014 --> 01:11:50,352 キャサリン・ホ︱トン 1263 01:11:48,350 --> 01:11:50,352 私は世間知らずでね 1264 01:11:50,644 --> 01:11:54,606 2人でキスシーンの 撮影があったの 1265 01:11:54,731 --> 01:11:58,485 大したこととは 思ってなかった 1266 01:11:58,610 --> 01:12:00,863 “次は本番”と言われて–– 1267 01:12:00,988 --> 01:12:05,075 それからスタジオを見渡したの 1268 01:12:05,200 --> 01:12:09,746 全員がとても 険しい目つきで見てた 1269 01:12:11,206 --> 01:12:15,294 何が起こってるか 分からなかった 1270 01:12:15,419 --> 01:12:18,672 メイク担当者の所へ行き–– 1271 01:12:18,797 --> 01:12:23,218 何が起こってるのか 彼女に聞いたの 1272 01:12:23,802 --> 01:12:28,932 “ウブね 分からない?”と 言われて–– 1273 01:12:29,057 --> 01:12:31,852 “いいえ 何なの?”と 答えたわ 1274 01:12:31,977 --> 01:12:34,563 大勢がショックを 受けるだろう 1275 01:12:34,688 --> 01:12:36,023 でしょ 夫人? 1276 01:12:36,481 --> 01:12:38,400 まあ そうね 1277 01:12:38,942 --> 01:12:44,531 あの時代 文化摩擦を 避ける人にとっては–– 1278 01:12:44,740 --> 01:12:49,411 ああいう作品は 拒否するほうが楽だった 1279 01:12:49,536 --> 01:12:55,042 当時の状況下では 革命的すぎたんだろう 1280 01:12:55,167 --> 01:12:58,629 一瞬で恋に落ちたと言ったな 1281 01:12:58,754 --> 01:13:00,923 どう思われると思う? 1282 01:13:01,173 --> 01:13:04,843 異人種間の結婚を禁じる州では 犯罪者だ 1283 01:13:04,968 --> 01:13:06,929 あの映画の中で言うの 1284 01:13:07,054 --> 01:13:09,932 “父さんは 自分を黒人だと言う” 1285 01:13:10,057 --> 01:13:11,725 “けど僕は ただの男だ” 1286 01:13:11,850 --> 01:13:13,685 シドニーらしいわ 1287 01:13:14,061 --> 01:13:15,521 僕は父さんの… 1288 01:13:17,064 --> 01:13:19,608 息子だし 愛してる 1289 01:13:20,484 --> 01:13:23,612 今までも これからもね 1290 01:13:25,614 --> 01:13:28,951 父さんは 自分を黒人と定義する 1291 01:13:30,202 --> 01:13:33,372 でも僕は ただの男だ 1292 01:13:35,290 --> 01:13:38,585 あれはセリフではなく–– 1293 01:13:38,710 --> 01:13:40,003 彼の本心よ 1294 01:13:40,128 --> 01:13:41,880 ただの男だもの 1295 01:13:48,428 --> 01:13:50,764 1967年に ヒットした3作品で–– 1296 01:13:50,889 --> 01:13:53,308 彼は白シャツにネクタイ姿だ 1297 01:13:53,433 --> 01:13:54,977 紳士なシドニーさ 1298 01:13:55,102 --> 01:13:58,021 すでに実力は 認められてたが–– 1299 01:13:58,146 --> 01:14:02,442 興行収入を稼げることも 証明した 1300 01:14:02,568 --> 01:14:05,988 当時としては異例のことだった 1301 01:14:06,113 --> 01:14:10,117 “次回作の予定は?”と 彼に聞くと–– 1302 01:14:10,659 --> 01:14:12,035 “ないよ” 1303 01:14:12,160 --> 01:14:15,789 “きっとこれが最後になる”と 言ってた 1304 01:14:16,373 --> 01:14:18,083 理由を聞いたら–– 1305 01:14:18,208 --> 01:14:24,006 “僕は同胞の黒人から 白人に迎合してると––” 1306 01:14:24,590 --> 01:14:26,675 “思われてるんだ”と 1307 01:14:28,552 --> 01:14:31,471 社会の流れの変化に伴い–– 1308 01:14:31,597 --> 01:14:35,684 僕に対する不満の声が 上がってきた 1309 01:14:35,809 --> 01:14:37,686 黒人たちからね 1310 01:14:37,811 --> 01:14:42,024 NYタイムズのある記事で 波紋が起きた 1311 01:14:42,149 --> 01:14:45,360 “なぜシドニーは 白人に好かれるのか?” 1312 01:14:45,485 --> 01:14:47,905 “シドニー・ポワチエ症候群” 1313 01:14:48,030 --> 01:14:52,201 “完全なる白人世界で 善良な男でいること” 1314 01:14:52,326 --> 01:14:57,956 僕は白人にペコペコする黒人 “アンクル・トム”と言われた 1315 01:14:58,081 --> 01:15:02,211 僕が演じる役は 白人の脅威にはならず–– 1316 01:15:02,336 --> 01:15:07,674 進歩的な白人の理想にもかなう 高貴な黒人だそうだ 1317 01:15:07,799 --> 01:15:09,510 “シドニーは約20年間” 1318 01:15:09,635 --> 01:15:12,513 “無害な銀幕の英雄を 演じてきた” 1319 01:15:12,638 --> 01:15:15,682 “非現実的な存在なのだ” 1320 01:15:16,183 --> 01:15:22,147 僕は芸術家で 現代的なアメリカ人の男だ 1321 01:15:22,731 --> 01:15:24,191 多くの面がある 1322 01:15:24,316 --> 01:15:25,859 だから どうか… 1323 01:15:26,944 --> 01:15:29,988 敬意を払ってほしい 1324 01:15:30,489 --> 01:15:32,324 先駆者は大変だ 1325 01:15:32,449 --> 01:15:34,660 一個人であっても–– 1326 01:15:35,244 --> 01:15:40,165 人種全体の代表に されてしまう 1327 01:15:40,457 --> 01:15:42,376 ジャッキー・ロビンソンも–– 1328 01:15:42,501 --> 01:15:45,838 人種全体への攻撃を 一手に受けた 1329 01:15:45,963 --> 01:15:48,423 先駆者シドニーも同じだ 1330 01:15:48,549 --> 01:15:51,176 デンゼルとは状況が違う 1331 01:15:51,301 --> 01:15:54,137 何かを願う時は覚悟が必要だ 1332 01:15:55,305 --> 01:16:00,394 シドニーは強い人だが 背負うものが重すぎた 1333 01:16:00,853 --> 01:16:03,647 正しい行いには 重圧が付き物だ 1334 01:16:03,772 --> 01:16:05,190 判断が難しい 1335 01:16:05,315 --> 01:16:09,528 だがシドニーは 創造性のある謙虚さと–– 1336 01:16:09,653 --> 01:16:13,365 成功者の品格を持ち合わせてた 1337 01:16:10,070 --> 01:16:13,365 クインシ︱・ ジョ︱ンズ 1338 01:16:16,535 --> 01:16:17,953 重圧を感じる? 1339 01:16:18,078 --> 01:16:19,246 仕方ない 1340 01:16:20,372 --> 01:16:22,374 逃れられないよ 1341 01:16:22,791 --> 01:16:25,043 民衆の代表として–– 1342 01:16:25,169 --> 01:16:30,799 人々の共感を得られるか否かで 僕は評価される 1343 01:16:31,341 --> 01:16:35,053 僕が人々の イメージどおりでなければ–– 1344 01:16:35,179 --> 01:16:40,184 受け入れてもらえないと いうことだ 1345 01:16:40,684 --> 01:16:41,685 寂しい? 1346 01:16:42,227 --> 01:16:43,604 寂しいかって? 1347 01:16:44,021 --> 01:16:45,898 もちろん寂しい 1348 01:16:46,732 --> 01:16:49,359 孤独だね ああ 1349 01:16:55,699 --> 01:16:59,953 1968年4月4日 1350 01:16:56,241 --> 01:16:58,035 キング牧師の発表は? 1351 01:17:01,038 --> 01:17:03,790 悲しい知らせがある 1352 01:17:04,041 --> 01:17:10,255 アメリカ国民と 平和を愛する世界中の皆さん 1353 01:17:10,380 --> 01:17:12,341 今夜 メンフィスで–– 1354 01:17:12,966 --> 01:17:18,514 マーティン・ルーサー・キングが 撃たれて死亡した 1355 01:17:21,391 --> 01:17:26,146 通常の番組を変更し 速報をお届けします 1356 01:17:27,856 --> 01:17:30,817 マ︱ティン・ ル︱サ︱・キング 1929~1968年 1357 01:17:28,524 --> 01:17:32,694 キング牧師が メンフィスで殺されました 1358 01:17:32,819 --> 01:17:36,448 ホテルのテラスで 顔面を撃たれ–– 1359 01:17:36,573 --> 01:17:38,700 1時間後に亡くなりました 1360 01:17:40,035 --> 01:17:43,247 私は通学バスで 帰宅中だった 娘 パメラ・ポワチエ 1361 01:17:43,372 --> 01:17:47,876 父は家の外まで出て バスを出迎えると–– 1362 01:17:48,794 --> 01:17:50,546 乗り込んできたの 1363 01:17:50,671 --> 01:17:56,760 天井の低いバスの中に立ち 子供たちを見渡した 1364 01:17:57,886 --> 01:18:01,431 そして父は子供たちに言った 1365 01:18:01,765 --> 01:18:04,268 “偉大な人物が亡くなった” 1366 01:18:06,311 --> 01:18:09,356 そんな感じだったと思う 1367 01:18:09,481 --> 01:18:14,194 “敬意と尊厳を持ち 皆に平等だった––” 1368 01:18:14,319 --> 01:18:16,071 “彼をえよう” 1369 01:18:16,864 --> 01:18:20,242 みんな 圧倒されて 父を見てたわ 1370 01:18:20,492 --> 01:18:24,496 そして父は 家に帰ろうと言ったの 1371 01:18:24,913 --> 01:18:26,665 灰は灰に 1372 01:18:27,457 --> 01:18:29,084 は塵に 1373 01:18:29,835 --> 01:18:34,006 偉大な指導者を 与えてくれた神に感謝します 1374 01:18:34,131 --> 01:18:36,008 命をささげたのです 1375 01:18:36,800 --> 01:18:40,429 マルコムXが ハーレムで殺されたのは–– 1376 01:18:40,804 --> 01:18:41,930 1965年だ 1377 01:18:43,974 --> 01:18:47,853 1968年には キング牧師も暗殺された 1378 01:18:48,896 --> 01:18:53,150 ユダヤ・キリスト教社会の 民主主義は–– 1379 01:18:53,275 --> 01:18:54,818 実は ぜい弱だ 1380 01:18:55,819 --> 01:18:59,615 文化間をつなぐ橋が必要だった 1381 01:19:01,241 --> 01:19:04,661 シドニーは その橋の1つだ 1382 01:19:08,498 --> 01:19:10,751 キング牧師の暗殺は–– 1383 01:19:10,876 --> 01:19:14,171 シドニーの俳優人生の 転機となった 1384 01:19:14,296 --> 01:19:17,424 加えて 私生活も大きく変化した 1385 01:19:17,549 --> 01:19:21,720 暗殺によって 多くの黒人同様–– 1386 01:19:21,845 --> 01:19:23,931 彼の心は引き裂かれた 1387 01:19:24,056 --> 01:19:27,601 そしてハリーとの関係も 壊れてしまった 1388 01:19:27,726 --> 01:19:30,521 キング牧師の暗殺後 2人は–– 1389 01:19:30,646 --> 01:19:33,774 どうぶかで 意見が割れた 1390 01:19:31,480 --> 01:19:35,484 ポワチエ伝記作家 アラム・ グ︱ス︱ジアン 1391 01:19:33,899 --> 01:19:37,861 ハリ︱は葬儀後に 大集会を開きたがった 1392 01:19:38,153 --> 01:19:42,199 だがシドニーは 目的から外れると反対 1393 01:19:42,324 --> 01:19:45,202 これによって 2人は衝突し–– 1394 01:19:45,327 --> 01:19:47,412 しばらく絶縁状態となる 1395 01:19:47,663 --> 01:19:49,706 2人とも頑固だった 1396 01:19:48,622 --> 01:19:52,668 娘 ビバリ︱・ポワチエ= ヘンダ︱ソン 1397 01:19:49,831 --> 01:19:53,460 ものすごく 意固地だったのよ 1398 01:19:53,585 --> 01:19:56,713 だから どちらも譲らなかった 1399 01:19:56,839 --> 01:20:01,844 ハリーは仲間たちと 盛大なという形で–– 1400 01:20:01,969 --> 01:20:05,264 悲しみや哀悼の念を 共有したがった 1401 01:20:05,597 --> 01:20:09,476 一方シドニーは 静かに弔いたかったんだ 1402 01:20:13,355 --> 01:20:18,151 人々は先の見えない 暴力的な社会の中で 1403 01:20:18,277 --> 01:20:22,906 どうするか自力で 考えなければならなかった 1404 01:20:23,031 --> 01:20:25,242 トラウマになるね 1405 01:20:25,617 --> 01:20:31,164 シドニーとハリーは気持ちを リセットする必要があったんだ 1406 01:20:33,041 --> 01:20:37,546 シドニーは親友を 失っただけじゃない 1407 01:20:37,671 --> 01:20:41,258 妻と離婚後 ダイアンと前へ進もうとした 1408 01:20:41,758 --> 01:20:45,053 僕が受け継いだ 父の遺産の大半は–– 1409 01:20:45,179 --> 01:20:46,638 父からの教えだ 1410 01:20:46,763 --> 01:20:52,060 その教えが妻と別れた僕に 重くのしかかってきた 1411 01:20:52,186 --> 01:20:57,441 関係する人全員にとって 長く 苦しい時期だった 1412 01:20:58,108 --> 01:21:00,068 母は かわいそうだった 1413 01:21:00,194 --> 01:21:03,572 それが一番強く感じてたこと 1414 01:21:05,157 --> 01:21:09,703 父の苦悩より 母の苦悩を そばで見てきたの 1415 01:21:09,912 --> 01:21:12,539 母は多くの友達も失った 1416 01:21:13,457 --> 01:21:19,129 共通の友人の大半が 父を選んだからね 1417 01:21:19,254 --> 01:21:23,800 家族ぐるみでの 付き合いがなくなった 1418 01:21:24,718 --> 01:21:26,094 そんな中でも–– 1419 01:21:27,221 --> 01:21:31,141 母を支えてくれた人には 感謝してる 1420 01:21:31,683 --> 01:21:34,561 他の女性を愛してたから–– 1421 01:21:34,686 --> 01:21:36,813 罪悪感に苦しんだ 1422 01:21:36,939 --> 01:21:40,234 11年の心理療法も 効果はなかった 1423 01:21:40,984 --> 01:21:45,531 ありきたりだが 妻とは価値観が違ったんだ 1424 01:21:45,656 --> 01:21:50,410 一方 愛した女性にも 事情があった 1425 01:21:50,577 --> 01:21:53,330 シドニーと距離を置くたび 1426 01:21:53,455 --> 01:21:55,999 互いに ヨリを戻そうとした 1427 01:21:53,956 --> 01:21:57,501 ダイアン・キャロル 1428 01:21:56,124 --> 01:21:57,501 でも結局は・・・ 1429 01:21:57,626 --> 01:22:01,004 2人とも 分かってたことだけど 1430 01:22:01,129 --> 01:22:04,299 健全な関係ではなかった 1431 01:22:04,424 --> 01:22:09,555 いい友達で終われる関係でも なかったの 1432 01:22:12,641 --> 01:22:16,270 ポップカルチャーが 急激に変わった 1433 01:22:16,395 --> 01:22:19,481 1963年から 1968年にかけて–– 1434 01:22:19,606 --> 01:22:23,318 シドニーは 黒人のイメージそのものだった 1435 01:22:23,443 --> 01:22:26,363 そして ブラック・パワーが起きた 1436 01:22:33,579 --> 01:22:36,623 黒人が誇りを持って 声を上げ–– 1437 01:22:36,748 --> 01:22:39,334 黒人の美しさを主張した 1438 01:22:39,459 --> 01:22:42,129 アフロヘア 黒人のダンス番組 1439 01:22:44,590 --> 01:22:46,216 黒人中心の映画 1440 01:22:46,341 --> 01:22:47,968 「黒いジャガー」 1441 01:22:48,635 --> 01:22:51,096 クソったれ どけ! 1442 01:22:49,386 --> 01:22:51,555 ﹁ス︱パ︱フライ﹂ 1443 01:22:55,392 --> 01:22:59,313 徐々に“シドニーの夏”は 色あせていく 1444 01:23:01,356 --> 01:23:07,154 今や白人女性とのセックスが 描かれるようになり–– 1445 01:23:07,279 --> 01:23:09,781 平手打ちは銃に変わった 1446 01:23:11,783 --> 01:23:15,913 黒人が白人に それまでのリベンジをする 1447 01:23:16,038 --> 01:23:18,665 それが ブラックスプロイテーションだ 1448 01:23:19,082 --> 01:23:20,834 当時の黒人は–– 1449 01:23:20,959 --> 01:23:25,839 シドニーがイカしてるとは 思ってなかった 1450 01:23:25,964 --> 01:23:27,007 俺は違う 1451 01:23:27,216 --> 01:23:30,093 だが そういう 黒人の客層が–– 1452 01:23:30,219 --> 01:23:33,597 映画を見るようになったんだ 1453 01:23:34,306 --> 01:23:38,185 クインシー主催の 私の42歳の誕生会に–– 1454 01:23:38,310 --> 01:23:41,188 シドニーが来てくれたの 1455 01:23:41,313 --> 01:23:43,524 階段を下りた角に–– 1456 01:23:43,649 --> 01:23:46,485 彼が立ってたのを覚えてる 1457 01:23:46,610 --> 01:23:50,906 ヒーローを目の前にして 固まったわ 1458 01:23:51,031 --> 01:23:53,909 “初めまして お嬢さん” 1459 01:23:54,034 --> 01:23:57,246 “会いたかったよ”と 言ってくれた 1460 01:23:59,831 --> 01:24:02,251 私は涙を流しながら–– 1461 01:24:02,376 --> 01:24:03,836 感動を伝えた 1462 01:24:03,961 --> 01:24:07,381 “あなたに会えて 本当に救われた”と 1463 01:24:07,506 --> 01:24:11,218 当時の私は 黒人から批判を受けてた 1464 01:24:11,635 --> 01:24:15,097 “私自身も番組も 黒人らしくない”とね 1465 01:24:15,222 --> 01:24:19,142 そんな私を座らせて シドニーが–– 1466 01:24:19,268 --> 01:24:20,686 諭してくれた 1467 01:24:21,603 --> 01:24:24,606 “他人の夢を背負うのは つらいし––” 1468 01:24:25,148 --> 01:24:28,861 “自分の夢は 後回しになってしまう” 1469 01:24:28,986 --> 01:24:33,824 “それでも 力を尽くすことが大切だ” 1470 01:24:34,032 --> 01:24:37,703 あの瞬間 私の人生が変わった 1471 01:24:38,203 --> 01:24:41,039 彼も批判を受けた経験者よ 1472 01:24:41,164 --> 01:24:45,377 “黒人らしくない 現実味がない”と言われて–– 1473 01:24:45,502 --> 01:24:50,424 しばらく悩んでた時の 話をしてくれたわ 1474 01:24:50,549 --> 01:24:54,803 彼は最善の選択をするよう 努めてただけ 1475 01:24:54,928 --> 01:25:00,058 自分の両親の名に 恥じないようにね 1476 01:25:00,976 --> 01:25:05,314 でも それが批判的に 受け取られた 1477 01:25:05,439 --> 01:25:06,899 黒人男性として–– 1478 01:25:07,024 --> 01:25:10,861 彼の演じる役も 人間性や価値観も–– 1479 01:25:10,986 --> 01:25:13,447 酷評されたのよ 1480 01:25:15,115 --> 01:25:18,368 「失われた男」 1481 01:25:20,037 --> 01:25:23,498 「失われた男」の 撮影をしてる時に–– 1482 01:25:20,954 --> 01:25:23,498 1969年 1483 01:25:24,124 --> 01:25:27,294 いい予感がしてね 監督 ロバ︱ト・ アラン・ア︱サ︱ 1484 01:25:27,544 --> 01:25:30,130 運命の出会いが待ってたよ 1485 01:25:30,714 --> 01:25:34,092 ﹁失われた男﹂を 姉と初めて見たのは︱ 1486 01:25:33,759 --> 01:25:38,931 娘 シドニ︱・ ポワチエ・ハ︱トソング 1487 01:25:34,218 --> 01:25:36,303 20代の時だった 1488 01:25:36,929 --> 01:25:40,140 それまで 見る機会がなかったの 1489 01:25:40,599 --> 01:25:42,684 母はカナダ人だけど︱ 1490 01:25:42,809 --> 01:25:45,062 撮影でパリに住んでた 1491 01:25:45,187 --> 01:25:47,189 現地人と思われたそうよ 1492 01:25:48,649 --> 01:25:51,276 1967年 1493 01:25:50,317 --> 01:25:52,986 最初に オファ︱があった時 1494 01:25:53,111 --> 01:25:57,449 まず彼女は 共演者が誰かを聞いた 1495 01:25:57,574 --> 01:25:59,743 僕の名前を言われて–– 1496 01:25:59,868 --> 01:26:01,954 “誰?”と答えたそうだ 1497 01:26:02,412 --> 01:26:06,708 ポワチエは超有名な 俳優だと言われたけど 1498 01:26:04,915 --> 01:26:08,544 ジョアナ・ シムカス・ポワチエ 1499 01:26:06,834 --> 01:26:10,295 〝私は見たことない〟と 返したわ 1500 01:26:10,420 --> 01:26:12,422 ロンドンにいた時–– 1501 01:26:12,548 --> 01:26:15,676 上映中だった映画で 彼を見たの 1502 01:26:14,967 --> 01:26:18,804 ﹁いつか見た青い空﹂ 1965年 1503 01:26:15,801 --> 01:26:17,803 魅力的な人だった 1504 01:26:17,928 --> 01:26:21,515 私はアメリカで 雑誌の撮影をしてて 1505 01:26:21,640 --> 01:26:24,685 アートシアター系の 映画にも出てた 1506 01:26:24,935 --> 01:26:28,605 だからLAで 彼に会うことになってね 1507 01:26:28,939 --> 01:26:31,024 ステキな人だった 1508 01:26:31,149 --> 01:26:33,694 ランチをしただけよ 1509 01:26:33,819 --> 01:26:37,030 私には婚約者がいたからね 1510 01:26:37,155 --> 01:26:38,156 でも… 1511 01:26:42,077 --> 01:26:43,871 君の唇のかみ方が… 1512 01:26:46,331 --> 01:26:50,377 映画で共演すると すぐに関係は進展した 1513 01:26:50,502 --> 01:26:55,757 僕たちは引力に 引き寄せられたんだと思う 1514 01:26:55,883 --> 01:27:00,762 その時は 両親と同じような 愛の物語を–– 1515 01:27:00,888 --> 01:27:04,183 紡ぐ準備ができてたんだ 1516 01:27:05,642 --> 01:27:09,646 2人の始まりは 「失われた男」での共演よ 1517 01:27:09,771 --> 01:27:14,067 映画そのものが 父と母の出会いの物語なの 1518 01:27:14,568 --> 01:27:17,738 両親が結婚した時 私は4歳だった 1519 01:27:17,863 --> 01:27:21,033 母が私たちを 病院に連れていくと–– 1520 01:27:21,158 --> 01:27:22,951 子守だと思われてね 1521 01:27:23,076 --> 01:27:27,122 その日 家に帰ると 父に迫った 1522 01:27:24,328 --> 01:27:29,374 娘 アニカ・ポワチエ 1523 01:27:27,247 --> 01:27:29,791 〝結婚する気なら 今週して〟と 1524 01:27:29,917 --> 01:27:32,586 それで その週に結婚した 1525 01:27:33,170 --> 01:27:36,173 自宅で式を挙げてる最中に–– 1526 01:27:36,298 --> 01:27:40,344 2歳半だった娘のシドニーが 夫に聞いたの 1527 01:27:40,469 --> 01:27:42,679 “パパ 何してるの?”と 1528 01:27:43,013 --> 01:27:46,225 “ママと結婚中”と 言われた娘は–– 1529 01:27:46,517 --> 01:27:47,976 “そっか”とだけ 1530 01:27:48,352 --> 01:27:50,521 そんな結婚式だった 1531 01:27:51,438 --> 01:27:54,358 家族や友人に囲まれて育った 1532 01:27:54,483 --> 01:27:56,777 黒人も白人もいたわ 1533 01:27:56,902 --> 01:27:59,571 両親は 人種の混ざった家族と–– 1534 01:27:59,696 --> 01:28:01,615 好んで交流してた 1535 01:28:01,740 --> 01:28:05,410 グループ内の子供同士で 遊ばせるの 1536 01:28:05,536 --> 01:28:09,331 その状態が 普通だと思えるようにね 1537 01:28:09,456 --> 01:28:13,669 クインシーの一家と 仲よくしてたわ 1538 01:28:13,794 --> 01:28:16,880 互いが互いの見守り役なの 1539 01:28:17,089 --> 01:28:19,800 そうやって周りの社会から–– 1540 01:28:19,925 --> 01:28:22,636 私たちを守ってくれた 1541 01:28:23,053 --> 01:28:25,764 父は分け隔てなかった 1542 01:28:25,889 --> 01:28:28,725 前の妻の子も 今の妻の子も–– 1543 01:28:28,851 --> 01:28:30,978 みんな家族だと言ってた 1544 01:28:31,520 --> 01:28:34,857 1つの家族だと教えられたわ 1545 01:28:34,982 --> 01:28:37,776 とてもいい父親だったと思う 1546 01:28:37,901 --> 01:28:41,113 6人の娘 全員の–– 1547 01:28:41,488 --> 01:28:43,907 面倒を見てくれた 1548 01:28:44,116 --> 01:28:47,744 それに どちらの母親も すばらしい人よ 1549 01:28:47,870 --> 01:28:51,248 ジョアナと私の母は 性格が似てた 1550 01:28:51,373 --> 01:28:56,879 心が広くて 家族を一番に考えてる 1551 01:28:57,004 --> 01:28:58,714 父は母親から–– 1552 01:28:58,839 --> 01:29:02,050 家族を守れと 常々言われてた 1553 01:28:58,839 --> 01:29:02,926 娘 シェリ・ポワチエ 1554 01:28:58,839 --> 01:29:02,050 家族を守れと 常々言われてた 1555 01:28:58,839 --> 01:29:02,926 娘 シェリ・ポワチエ 1556 01:29:02,176 --> 01:29:03,760 だから その教えを︱ 1557 01:29:04,720 --> 01:29:06,471 守ってきたの 1558 01:29:06,722 --> 01:29:11,101 姉妹で助け合っていくよう 父は私たちにも–– 1559 01:29:11,226 --> 01:29:13,437 教えを刻みこんだ 1560 01:29:15,063 --> 01:29:17,316 1970年代の初頭 シドニーに–– 1561 01:29:17,441 --> 01:29:20,068 人生を変える機会が訪れる 1562 01:29:20,194 --> 01:29:23,322 キング牧師の件で 絶縁してた–– 1563 01:29:23,447 --> 01:29:26,074 ハリーから電話があったんだ 1564 01:29:26,200 --> 01:29:27,576 なぜ ここだと? 1565 01:29:28,035 --> 01:29:29,661 馬に聞いた 1566 01:29:30,329 --> 01:29:33,582 いい企画があると誘われて–– 1567 01:29:33,707 --> 01:29:36,585 シドニーは すぐに承諾した 1568 01:29:36,710 --> 01:29:38,462 直感だろう 1569 01:29:38,587 --> 01:29:41,465 “どこで いつやる?”とね 1570 01:29:41,924 --> 01:29:44,051 「ブラック・ライダー」 1571 01:29:45,594 --> 01:29:46,929 1972年 1572 01:29:49,723 --> 01:29:52,142 監督 シドニ︱・ポワチエ 1573 01:29:50,432 --> 01:29:52,935 シドニ︱の初監督作品だ 1574 01:29:53,060 --> 01:29:56,104 当初は別の監督の予定だった 1575 01:29:56,230 --> 01:29:58,440 撮影開始の1週間後 1576 01:29:58,565 --> 01:30:00,859 監督に昇格したんだ 1577 01:30:00,984 --> 01:30:02,402 元々の監督は? 1578 01:30:02,528 --> 01:30:03,153 彼は… 1579 01:30:09,243 --> 01:30:12,412 撮影開始後にハリーが言った 1580 01:30:12,538 --> 01:30:15,457 “別の監督を探そう”とね 1581 01:30:15,582 --> 01:30:19,169 彼は作品のテーマを 理解してなかった 1582 01:30:19,837 --> 01:30:25,300 アメリカ先住民と 黒人の文化の融合なんだ 1583 01:30:25,843 --> 01:30:28,554 どんな映画の撮影でも–– 1584 01:30:28,679 --> 01:30:34,184 僕は必ず近くで 監督の仕事を見てきた 1585 01:30:34,476 --> 01:30:38,856 何年もずっと見てきたから–– 1586 01:30:39,106 --> 01:30:42,401 自然と学んでたんだ 1587 01:30:46,321 --> 01:30:50,993 1週間 お試しで 僕が監督を引き受けた 1588 01:30:51,118 --> 01:30:54,037 仕事ぶりをチェックした–– 1589 01:30:54,454 --> 01:30:56,999 製作会社が連絡してきた 1590 01:30:57,124 --> 01:30:59,960 “正式に監督として頼む” 1591 01:31:00,085 --> 01:31:03,088 “合格だ”と言われたんだ 1592 01:31:03,213 --> 01:31:04,047 アクション 1593 01:31:04,173 --> 01:31:05,132 神よ 1594 01:31:05,257 --> 01:31:07,759 私はホーリネス派教会の–– 1595 01:31:07,885 --> 01:31:09,928 ラザフォード牧師だ 1596 01:31:10,220 --> 01:31:11,805 出身はどこだ? 1597 01:31:11,930 --> 01:31:13,724 ミシシッピだ 1598 01:31:13,849 --> 01:31:14,433 カット! 1599 01:31:14,558 --> 01:31:15,267 最高だ 1600 01:31:15,392 --> 01:31:17,060 よかったよ 1601 01:31:17,436 --> 01:31:18,103 アップで 1602 01:31:18,228 --> 01:31:19,479 カメラを 1603 01:31:19,605 --> 01:31:20,731 最初から? 1604 01:31:20,856 --> 01:31:22,316 よし やろう 1605 01:31:24,443 --> 01:31:28,447 ﹁エリス・ハイズリップの SOUL!﹂ 1606 01:31:25,944 --> 01:31:28,447 ﹁ブラック・ライダ︱﹂は 1607 01:31:28,572 --> 01:31:31,450 まもなく劇場公開されるよ 1608 01:31:31,575 --> 01:31:33,327 ハリーの演出は? 1609 01:31:33,452 --> 01:31:36,246 エゴが強くて やりにくかった? 1610 01:31:37,039 --> 01:31:39,208 聞いてくれて うれしい 1611 01:31:40,167 --> 01:31:43,879 シドニーとハリーは 最高のコンビだ 1612 01:31:44,004 --> 01:31:47,716 兄弟愛みたいなものが 伝わってくる 1613 01:31:47,841 --> 01:31:50,636 多くの人が驚くと思うが–– 1614 01:31:50,761 --> 01:31:54,973 彼は これまでで 最も協力的な役者だった 1615 01:31:55,307 --> 01:31:59,436 だから みんなの前で伝えたい 1616 01:31:59,561 --> 01:32:01,355 本当にありがとう 1617 01:32:04,691 --> 01:32:07,027 シドニーはハリウッドで–– 1618 01:32:07,152 --> 01:32:09,947 最も力のある俳優になった 1619 01:32:10,072 --> 01:32:11,823 その彼が監督だ 1620 01:32:11,949 --> 01:32:13,784 作品もよかった 1621 01:32:13,909 --> 01:32:18,038 黒人が西部へ渡っていく物語は 目新しく–– 1622 01:32:18,163 --> 01:32:21,416 まともに描かれたのは 初めてだった 1623 01:32:21,834 --> 01:32:25,045 映画を通して 大事なことを伝えたい 1624 01:32:25,170 --> 01:32:29,132 黒人は西部開拓で 重要な役割を担ったと–– 1625 01:32:29,424 --> 01:32:31,593 子供に教えたいんだ 1626 01:32:31,718 --> 01:32:34,471 彼は偉大な映画制作者だ 1627 01:32:35,013 --> 01:32:39,685 毎回 他の人とは違う視点で 作品に携わる 1628 01:32:39,810 --> 01:32:43,313 彼がいると 独特な作品ができるんだ 1629 01:32:43,730 --> 01:32:45,274 “俺はバックだ” 1630 01:32:47,234 --> 01:32:48,527 俺はバックだ 1631 01:32:53,365 --> 01:32:57,369 1960年代 彼は大スター俳優だったが–– 1632 01:32:57,494 --> 01:32:59,705 その地位は卒業した 1633 01:32:59,830 --> 01:33:04,293 1970年代 彼は 黒人映画界を先導して–– 1634 01:33:04,418 --> 01:33:08,380 後輩にチャンスを与えるため 尽力したんだ 1635 01:33:08,839 --> 01:33:11,884 平等にチャンスが 与えられていれば–– 1636 01:33:12,009 --> 01:33:15,679 多くの黒人俳優が 活躍してるはずだ 1637 01:33:15,804 --> 01:33:18,098 べラフォンテが15人… 1638 01:33:18,223 --> 01:33:19,224 おいおい 1639 01:33:23,478 --> 01:33:25,606 〝スイ︱トル︱ム〟 1640 01:33:23,478 --> 01:33:28,734 1969年にポールやシドニーと 製作会社を立ち上げた 1641 01:33:28,859 --> 01:33:31,278 社名は “ファースト・アーティスツ” 1642 01:33:31,945 --> 01:33:37,367 アーティストが権利を持つ点が 画期的だった 1643 01:33:37,492 --> 01:33:39,995 製作面での全権利を持てる 1644 01:33:40,329 --> 01:33:42,206 スタート資金はゼロ 1645 01:33:42,331 --> 01:33:46,043 映画が成功すれば お金が入る仕組みよ 1646 01:33:46,168 --> 01:33:50,631 報酬は二の次よ 自由に創造したかったの 1647 01:33:50,756 --> 01:33:53,800 光栄にも唯一の女性だった 1648 01:33:54,343 --> 01:33:57,846 シドニーと組めたことを 誇りに思う 1649 01:33:57,971 --> 01:34:01,099 黒人が製作会社を 始めるなんて–– 1650 01:34:01,225 --> 01:34:03,101 すごく大胆なことよ 1651 01:34:04,228 --> 01:34:06,730 人は思ったはずよ 1652 01:34:07,189 --> 01:34:09,274 “現状に満足すべき”と 1653 01:34:09,399 --> 01:34:12,402 “今のままで 多くの役がもらえてる” 1654 01:34:12,528 --> 01:34:16,198 “わざわざ自分で 仕事を創り出す立場に––” 1655 01:34:16,323 --> 01:34:18,951 “身を置く必要はない” 1656 01:34:19,076 --> 01:34:23,705 でも父なりの主張をするための 戦略だったの 1657 01:34:24,456 --> 01:34:27,292 僕たちが望んでたのは–– 1658 01:34:27,417 --> 01:34:31,213 自分たちのやりたい映画を 作ることだ 1659 01:34:31,338 --> 01:34:33,841 題材を決め 自分で作る 1660 01:34:33,966 --> 01:34:37,469 アクション・コメディーや 犯罪コメディーを作った 1661 01:34:37,594 --> 01:34:39,471 どれも傑作さ 1662 01:34:39,721 --> 01:34:41,682 カッコいいでしょ 1663 01:34:42,224 --> 01:34:45,269 父が映画監督だなんてね 1664 01:34:45,394 --> 01:34:47,563 作品をどう作るべきか 1665 01:34:47,688 --> 01:34:50,232 父は映画業界を熟知してた 1666 01:34:50,607 --> 01:34:54,778 以前から映画の出演者に 黒人の俳優が–– 1667 01:34:54,903 --> 01:34:58,907 ほとんどいないことを 父は気にしてたの 1668 01:34:59,032 --> 01:35:01,451 どの映画にもいない 1669 01:35:01,952 --> 01:35:04,788 それを変えようとしてた 1670 01:35:05,080 --> 01:35:09,209 裏方の黒人にも 多くの仕事を与えてるね 1671 01:35:09,334 --> 01:35:12,421 黒人俳優の起用だけじゃない 1672 01:35:12,546 --> 01:35:17,801 ああ 1つの作品で 1300人の黒人を雇用してる 1673 01:35:17,926 --> 01:35:20,596 エキストラや技術者などでね 1674 01:35:20,721 --> 01:35:23,348 1276人は僕の親戚だ 1675 01:35:23,473 --> 01:35:24,808 そりゃ いい 1676 01:35:24,933 --> 01:35:26,727 彼は誇り高き黒人だ 1677 01:35:26,852 --> 01:35:30,522 そんな彼が監督する作品だぞ 1678 01:35:30,939 --> 01:35:32,649 俳優が全員 黒人で–– 1679 01:35:32,774 --> 01:35:35,569 スタッフが白人なんて あり得ない 1680 01:35:35,694 --> 01:35:38,697 シドニーがするわけない 1681 01:35:38,906 --> 01:35:42,492 確実にキャリアを 築けるように–– 1682 01:35:42,618 --> 01:35:46,079 黒人に裏方の仕事を与えるんだ 1683 01:35:46,496 --> 01:35:49,708 裏方のほうが 長くやれるだろ 1684 01:35:49,833 --> 01:35:54,463 役者としては徐々に 後輩に道を譲っていくんだ 1685 01:35:54,588 --> 01:35:56,965 常に主役でなくていい 1686 01:35:57,090 --> 01:36:00,427 監督として 映画を作るのが楽しみだ 1687 01:36:00,552 --> 01:36:04,598 脚本と格闘し 役者たちと奮闘したい 1688 01:36:04,723 --> 01:36:06,266 大きな絵を描きたい 1689 01:36:06,892 --> 01:36:09,770 もう俳優は十分やった 1690 01:36:09,895 --> 01:36:12,981 山の頂点まで登ったからね 1691 01:36:16,193 --> 01:36:19,404 マンハッタンの3番街を 歩いてたら–– 1692 01:36:19,530 --> 01:36:22,824 「一発大逆転」の上映中でね 1693 01:36:23,283 --> 01:36:25,702 劇場に入り 後ろから–– 1694 01:36:25,827 --> 01:36:29,581 満員の観客の反応を 観察したんだ 1695 01:36:29,998 --> 01:36:31,542 黒人の女性が–– 1696 01:36:31,667 --> 01:36:35,546 みんな笑い転げてたよ 1697 01:36:35,879 --> 01:36:38,882 ﹁シドニ︱・ポワチエ/ 一発大逆転﹂ 1975年 1698 01:36:35,879 --> 01:36:40,592 登場人物たちを見て 大喜びだった 1699 01:36:40,717 --> 01:36:44,179 共感できるキャラクターを 描いたからだ 1700 01:36:44,304 --> 01:36:46,181 その反応を見て–– 1701 01:36:46,306 --> 01:36:49,643 同じ系統の作品を 作ろうと決めた 1702 01:36:50,143 --> 01:36:53,772 コメディーの登場人物で 肝心なのは–– 1703 01:36:53,897 --> 01:36:59,987 観客が自分と重ね合わせて 見られるか 1704 01:37:00,612 --> 01:37:02,197 共感がキーだ 1705 01:37:02,322 --> 01:37:05,701 シドニーが コメディー映画の監督になった 1706 01:37:06,326 --> 01:37:09,329 まさに予期せぬ人生の転機さ 1707 01:37:09,454 --> 01:37:13,625 コメディーで 成功を収めるなんてね 1708 01:37:13,750 --> 01:37:19,798 爆発的カリスマ性のある 笑いの才能を持ってるんだ 1709 01:37:19,923 --> 01:37:23,927 125年の懲役刑を 言い渡す 1710 01:37:20,465 --> 01:37:23,135 ﹁スタ︱・クレイジ︱﹂ 1711 01:37:23,427 --> 01:37:26,096 1980年 1712 01:37:24,052 --> 01:37:28,140 州立刑務所で 刑期を務めること 1713 01:37:28,515 --> 01:37:31,768 シドニーは監督として それほど–– 1714 01:37:31,894 --> 01:37:33,979 視覚的なセンスはない 1715 01:37:34,104 --> 01:37:36,940 だが演技の指導は ピカイチだ 1716 01:37:35,564 --> 01:37:38,525 監督 シドニ︱・ポワチエ 1717 01:37:37,065 --> 01:37:39,818 演出を入れつつも︱ 1718 01:37:39,943 --> 01:37:43,280 役者が面白さを 発揮できる余地を残す 1719 01:37:43,405 --> 01:37:44,072 僕は違う 1720 01:37:44,198 --> 01:37:46,658 弁護士に呼ばれて… 1721 01:37:47,451 --> 01:37:49,119 冗談ですよ 1722 01:37:49,244 --> 01:37:50,954 “僕たちは”です 1723 01:37:51,079 --> 01:37:51,914 やってません 1724 01:37:52,039 --> 01:37:53,624 人違いでは? 1725 01:37:54,166 --> 01:37:57,628 まさかコメディ監督として 成功するとは 1726 01:37:57,753 --> 01:38:02,549 彼に続いたのは デンゼルや ウェズリーだけでなく 1727 01:38:02,674 --> 01:38:05,302 ロバート・タウンゼントや K・I・ウェイアンズもだ 1728 01:38:06,094 --> 01:38:09,097 ハリウッド初の 大物コメディ監督だからね 1729 01:38:09,223 --> 01:38:11,934 〝﹁スタ︱・クレイジ︱﹂ 興行収入1億ドル〟 1730 01:38:19,274 --> 01:38:20,400 パパに挨拶を 1731 01:38:20,526 --> 01:38:21,944 ハーイ 1732 01:38:22,361 --> 01:38:24,071 そこにいて アニカ 1733 01:38:25,197 --> 01:38:26,907 見えるぞ シドニー 1734 01:38:28,742 --> 01:38:29,493 見える? 1735 01:38:29,618 --> 01:38:30,452 パパがね 1736 01:38:31,578 --> 01:38:35,999 金のなる木だと 撮影現場で言ってる 1737 01:38:36,124 --> 01:38:39,211 笑ってみせて いいね 1738 01:38:39,711 --> 01:38:40,879 シドニー? 1739 01:38:41,797 --> 01:38:44,675 父を本当に尊敬してる 1740 01:38:44,800 --> 01:38:49,388 多くの俳優は 落ち目になってくると–– 1741 01:38:49,513 --> 01:38:53,016 打診が来たら どんな役でも受ける 1742 01:38:53,141 --> 01:38:58,397 俳優として働き続けたいと 考えるからね 1743 01:38:58,522 --> 01:39:01,066 でも父は違った 1744 01:39:02,025 --> 01:39:04,236 引き際だと思った 1745 01:39:04,361 --> 01:39:08,574 人生の道を 1つに絞るべきではない 1746 01:39:08,699 --> 01:39:13,495 1つの道しか 経験しない生き方では–– 1747 01:39:13,871 --> 01:39:16,123 最後は尻すぼみだ 1748 01:39:16,540 --> 01:39:20,419 何年もの間 キャリアは順調だった 1749 01:39:20,669 --> 01:39:25,924 ずっと成功し続けられたかは 分からない 1750 01:39:26,508 --> 01:39:28,719 でも 続いていたら–– 1751 01:39:28,844 --> 01:39:32,222 成長するチャンスを 逃しただろう 1752 01:39:32,347 --> 01:39:35,684 成功すると 世間から孤立してしまう 1753 01:39:36,852 --> 01:39:37,936 それはイヤだ 1754 01:39:38,061 --> 01:39:42,733 監督をしたくて 5~6本作品を撮った 1755 01:39:42,858 --> 01:39:46,320 プロデューサーとしても 映画を作った 1756 01:39:46,445 --> 01:39:50,407 子供時代 好奇心のせいで たくさん悪さをした 1757 01:39:50,532 --> 01:39:54,036 だが大人の好奇心は有益だ 1758 01:39:56,121 --> 01:39:59,583 一生 持ち続けていきたい 1759 01:40:00,584 --> 01:40:03,962 1992年の 生涯功労賞 受賞者は︱ 1760 01:40:04,087 --> 01:40:05,589 シドニ︱・ポワチエ 1761 01:40:06,715 --> 01:40:10,802 1992年 アメリカ映画協会 生涯功労賞 1762 01:40:15,182 --> 01:40:17,976 シドニーは灯台のような存在だ 1763 01:40:18,852 --> 01:40:22,439 真っ暗な岬で 常に光を放ってる 1764 01:40:22,856 --> 01:40:23,857 明るい光だ 1765 01:40:24,650 --> 01:40:27,819 シドニーにも 話したことがあるが 1766 01:40:27,945 --> 01:40:29,613 下積み時代は–– 1767 01:40:30,739 --> 01:40:34,743 彼が俺を照らす光だけに 集中してた 1768 01:40:36,119 --> 01:40:40,457 彼以上に明るい灯台はなかった 1769 01:40:40,791 --> 01:40:42,125 だから俺は–– 1770 01:40:42,960 --> 01:40:46,672 その光を強く信じてきたんだ 1771 01:40:47,172 --> 01:40:52,219 48年前 1945年の冬に–– 1772 01:40:52,594 --> 01:40:55,931 シドニーは ある劇場に足を踏み入れた 1773 01:40:56,056 --> 01:40:59,309 それがANTだった 1774 01:41:02,688 --> 01:41:05,524 彼は先頭をいく男だった 1775 01:41:05,774 --> 01:41:08,902 彼がいい演技をすると 皆が続く 1776 01:41:09,570 --> 01:41:11,655 真に立派な人だよ 1777 01:41:11,780 --> 01:41:15,075 男らしさとは何かを示した 1778 01:41:15,325 --> 01:41:21,039 彼は苦労をしながら 多くのことを成し遂げた 1779 01:41:19,288 --> 01:41:23,458 1974年 大英帝国勲章 1780 01:41:21,164 --> 01:41:23,458 やれることは すべてやった 1781 01:41:24,334 --> 01:41:27,004 人生を 振り返って︱ 1782 01:41:26,003 --> 01:41:30,090 1997年 バハマ駐日大使 1783 01:41:27,129 --> 01:41:30,090 〝道徳的に 正しく生きた〟と︱ 1784 01:41:30,424 --> 01:41:31,633 言える人生だ 1785 01:41:31,758 --> 01:41:37,222 彼とは長年の親友で 多くのことを共有してきた 1786 01:41:37,556 --> 01:41:40,100 芸術家として 市民として–– 1787 01:41:40,225 --> 01:41:42,728 成した功績を誇りに思う 1788 01:41:43,228 --> 01:41:47,232 君の友でいられて 俺はとても幸運だ 1789 01:41:47,357 --> 01:41:48,609 愛してる 1790 01:41:54,990 --> 01:41:59,203 最優秀賞は デンゼル・ワシントンよ 1791 01:41:56,909 --> 01:42:01,580 2002年 アカデミ︱賞 1792 01:42:02,289 --> 01:42:05,584 最優秀賞はハル・ベリー 1793 01:42:05,709 --> 01:42:07,419 信じられない 1794 01:42:07,544 --> 01:42:09,588 歴史的な夜だった 1795 01:42:09,713 --> 01:42:13,091 デンゼルと私が 最優秀賞を取り–– 1796 01:42:13,217 --> 01:42:15,135 シドニーは名誉賞を受賞 1797 01:42:15,260 --> 01:42:18,597 多くの人に勇気を与えたと思う 1798 01:42:18,722 --> 01:42:21,141 心の底から感謝します 1799 01:42:19,473 --> 01:42:25,354 主演男優賞 デンゼル・ワシントン ﹁トレ︱ニング デイ﹂ 1800 01:42:21,808 --> 01:42:24,311 シドニ︱を追って40年 1801 01:42:24,436 --> 01:42:26,605 同じ夜に受賞できた 1802 01:42:28,649 --> 01:42:30,234 彼の姿を覚えてる 1803 01:42:30,984 --> 01:42:33,111 距離はあったけど–– 1804 01:42:33,237 --> 01:42:36,281 バトンを渡されたようだった 1805 01:42:36,406 --> 01:42:38,575 あなたを追ってきた 1806 01:42:38,700 --> 01:42:41,203 これからも 追い続ける 1807 01:42:41,328 --> 01:42:44,289 あなたを目指してきた 1808 01:42:44,414 --> 01:42:48,919 彼のような人は現れない この先もずっとね 1809 01:42:49,795 --> 01:42:53,090 彼は映画を 作ったのではない 1810 01:42:52,464 --> 01:42:56,969 2009年 大統領自由勲章 1811 01:42:53,215 --> 01:42:56,969 国の発展の 道しるべを作ってきた 1812 01:42:57,094 --> 01:43:01,390 彼は よりよい人間に なりたいと言った 1813 01:43:01,890 --> 01:43:05,769 それを成し遂げ 我々の手本となった 1814 01:43:11,567 --> 01:43:15,487 彼は世界を動かして変え–– 1815 01:43:16,655 --> 01:43:20,659 目覚めさせるために 生まれてきた 1816 01:43:20,993 --> 01:43:24,580 人に必要なものを与えてくれる 1817 01:43:24,705 --> 01:43:29,710 おかげで人は前進し 人生を変えていけるんだ 1818 01:43:29,835 --> 01:43:34,381 シドニーは 極めて強いエネルギーを持つ 1819 01:43:34,631 --> 01:43:37,259 エネルギーについて–– 1820 01:43:37,759 --> 01:43:39,386 祖父に教わった 1821 01:43:39,511 --> 01:43:44,016 エネルギ︱が 消えることはない 1822 01:43:39,845 --> 01:43:44,016 ネルソン・マンデラ 1823 01:43:44,141 --> 01:43:47,895 シドニーが生んだものは 永遠に残り–– 1824 01:43:48,020 --> 01:43:51,023 大きくなり続けるだろう 1825 01:43:51,398 --> 01:43:52,441 なんと–– 1826 01:43:53,942 --> 01:43:55,402 美しい人生なんだ 1827 01:43:56,653 --> 01:43:59,156 おめでとう オプラ 1828 01:43:59,281 --> 01:44:04,745 この20年間 君は 必要としてる人へ–– 1829 01:44:04,870 --> 01:44:08,582 優しい光をもたらしてきた 1830 01:44:11,793 --> 01:44:13,670 彼が影響を与えた人々は 1831 01:44:13,795 --> 01:44:16,548 すべて彼の遺産の一部よ 1832 01:44:16,798 --> 01:44:22,095 人々は 彼の作品に 心を動かされてきた 1833 01:44:22,221 --> 01:44:25,224 「いつも心に太陽を」 1834 01:44:25,349 --> 01:44:28,268 「招かれざる客」 1835 01:44:28,393 --> 01:44:32,022 「手錠のままの脱獄」の–– 1836 01:44:32,564 --> 01:44:35,651 トニーを助けるシーン 1837 01:44:35,776 --> 01:44:39,905 “黒人はこう行動するんだ”と 思うでしょう 1838 01:44:42,533 --> 01:44:44,201 それがシドニーよ 1839 01:44:45,035 --> 01:44:47,246 みんなが彼の遺産なの 1840 01:44:47,996 --> 01:44:49,289 それに尽きる 1841 01:44:54,002 --> 01:44:56,088 彼が大好きよ 1842 01:44:56,213 --> 01:44:58,257 すごく愛してる 1843 01:44:58,924 --> 01:45:02,386 彼がいなければ 今の私はない 1844 01:45:03,554 --> 01:45:04,888 長い旅だった 1845 01:45:05,013 --> 01:45:07,599 本当に長い道を歩んできた 1846 01:45:07,724 --> 01:45:09,476 誇りに思うよ 1847 01:45:09,852 --> 01:45:13,814 僕の使命は… 1848 01:45:15,065 --> 01:45:18,861 よき夫であり よき祖父であること 1849 01:45:18,986 --> 01:45:21,655 よき父であり よき曽祖父であること 1850 01:45:21,780 --> 01:45:27,202 僕のいい部分を 受け継いでもらいたい 1851 01:45:27,536 --> 01:45:31,540 精いっぱい 努めてるんだ 1852 01:45:32,583 --> 01:45:34,877 今日よりも明日–– 1853 01:45:35,127 --> 01:45:38,505 いい人間になれるように 1854 01:45:38,630 --> 01:45:41,967 いい俳優ではなく いい人間でいたい 1855 01:45:42,342 --> 01:45:47,222 そうすれば 死ぬ時 人生を悔いることはないだろう 1856 01:45:56,481 --> 01:46:02,112 シドニー・ポワチエ 1927~2022年 1857 01:51:27,855 --> 01:51:29,857 日本語字幕 水野 知美