1 00:03:01,360 --> 00:03:05,960 すべての時計が凍り始める 極寒の世界 2 00:03:07,040 --> 00:03:12,520 猛吹雪は太陽を隠し   方向感覚を奪い去ります 3 00:03:13,600 --> 00:03:15,800 地球に宿る炎に—— 4 00:03:16,400 --> 00:03:20,600 心を奪われた      ひと組の夫婦がいました 5 00:03:52,200 --> 00:03:56,480 カティアとモーリス・ クラフトは火山学者で 6 00:03:56,640 --> 00:03:59,640 世界の活火山を 観察しています 7 00:04:02,800 --> 00:04:04,760 楽しい復活祭を—— 8 00:04:04,880 --> 00:04:08,760 カティアとモーリスと 過ごしましょう 9 00:04:08,840 --> 00:04:09,920 こんにちは 10 00:04:11,200 --> 00:04:14,640 世界的に偉大な 火山学者は小柄な女性 11 00:04:14,800 --> 00:04:16,160 カティア・クラフトです 12 00:04:18,160 --> 00:04:20,640 多くの火山は プレートの—— 13 00:04:20,760 --> 00:04:22,640 境界付近にあるんだ 14 00:04:34,880 --> 00:04:37,840 この溶岩の映像を見たら 15 00:04:38,000 --> 00:04:40,320 引き込まれますね 16 00:05:05,760 --> 00:05:07,200 モーリス 17 00:05:07,320 --> 00:05:09,400 やあ 元気かい? 18 00:05:11,480 --> 00:05:12,360 ああ 19 00:05:12,440 --> 00:05:15,200 火山が私たちを待ってる 20 00:05:15,560 --> 00:05:16,560 そうだな 21 00:05:21,600 --> 00:05:22,520 よし 22 00:05:30,160 --> 00:05:31,160 カティア 23 00:05:42,800 --> 00:05:44,320 彼女がカティア 24 00:05:44,720 --> 00:05:46,400 彼がモーリスです 25 00:05:47,320 --> 00:05:50,400 この日は1991年6月2日 26 00:05:50,760 --> 00:05:52,960 翌日 二人は世を去ります 27 00:05:55,080 --> 00:05:57,560 二人が残したのは標本に—— 28 00:05:59,160 --> 00:06:00,120 言葉 29 00:06:01,800 --> 00:06:04,200 膨大な映像記録 30 00:06:06,080 --> 00:06:08,040 大量の写真 31 00:06:10,680 --> 00:06:12,800 そして たくさんの疑問 32 00:06:36,320 --> 00:06:39,880 岩石に座って 何を話すんですか? 33 00:06:40,560 --> 00:06:43,880 カティアは 食べ物の話ばかりだ 34 00:06:45,960 --> 00:06:48,640 火山学者同士の 夫婦は多い? 35 00:06:48,720 --> 00:06:51,200 私たち以外 知らないな 36 00:06:51,280 --> 00:06:53,960 ものすごく珍しいと思う 37 00:06:54,040 --> 00:06:59,000 活火山を調査するのが 火山学者で 38 00:06:59,080 --> 00:07:02,160 他に夫婦はいないと思う 39 00:07:02,280 --> 00:07:05,400 でも もしいるなら 気の毒だな 40 00:07:05,480 --> 00:07:08,760 火山学者同士が 暮らすのは大変で 41 00:07:08,880 --> 00:07:10,560 よく噴火する 42 00:07:12,320 --> 00:07:16,200 先日 噴火した山に 急いで登ると 43 00:07:16,320 --> 00:07:21,680 もう収束して割れ目が 小さな円錐えんすいになってた 44 00:07:21,800 --> 00:07:24,040 すると彼 その中に入ったの 45 00:07:24,400 --> 00:07:26,000 彼女が押し込んだ 46 00:07:26,680 --> 00:07:28,720 二人の出会いは19年前 47 00:07:29,800 --> 00:07:31,880 1966年です 48 00:07:34,360 --> 00:07:38,040 この時の確実な記録はなく 49 00:07:38,680 --> 00:07:42,120 二人のロマンスを 示す物もわずか 50 00:07:43,320 --> 00:07:44,800 この写真と—— 51 00:07:46,240 --> 00:07:50,160 数年後の初々しい瞬間を 収めた映像たちです 52 00:07:55,960 --> 00:08:00,160 二人の物語の一部は  時の中に埋もれたまま 53 00:08:07,480 --> 00:08:10,200 愛と同様 謎めいています 54 00:08:11,400 --> 00:08:13,280 さらなる出来事を—— 55 00:08:14,680 --> 00:08:16,720 追い求めましょう 56 00:08:20,720 --> 00:08:24,200 カティアとモーリスは   ストラスブール大学の—— 57 00:08:24,600 --> 00:08:26,760 ベンチで偶然 出会います 58 00:08:28,920 --> 00:08:33,920 新作映画が公開された アルーン・タジェフです 59 00:08:34,440 --> 00:08:36,760 その直後に彼らは 60 00:08:36,880 --> 00:08:40,040 タジェフの映画を 見に行き再会 61 00:08:43,440 --> 00:08:47,240 カフェでデートした記録が 残っています 62 00:08:48,640 --> 00:08:51,280 彼らが初めて恋した火山は 63 00:08:51,600 --> 00:08:54,480 エトナ山と       ストロンボリ火山でした 64 00:08:56,440 --> 00:09:00,640 問題児として        学校に入れられたカティアは 65 00:09:00,960 --> 00:09:04,640 両親に頼み        イタリアの火山を訪れます 66 00:09:05,040 --> 00:09:08,440 溶岩が流れる噴火を 初めて見たのは 67 00:09:08,520 --> 00:09:10,720 エトナ山だった 68 00:09:10,880 --> 00:09:13,520 岩石や鉱物の世界よ 69 00:09:14,640 --> 00:09:19,360 夜に溶岩が流れる様子は とても美しいの 70 00:09:20,280 --> 00:09:22,480 目にした “生きる地球〟は 71 00:09:22,600 --> 00:09:27,760 私が本で読み 想像したとおりだったわ 72 00:09:33,760 --> 00:09:37,280 7歳の時 父と ストロンボリへ行った 73 00:09:39,040 --> 00:09:40,840 地球に興味があり 74 00:09:41,360 --> 00:09:46,040 恐竜や三葉虫なんかの 想像をよくしていたよ 75 00:09:46,960 --> 00:09:48,720 そうしたものに夢中だった 76 00:09:50,160 --> 00:09:53,720 モーリスは19歳で  ストロンボリを再訪 77 00:09:54,000 --> 00:09:57,480 夢心地になるも 孤独を感じます 78 00:10:02,080 --> 00:10:06,800 カティアも その孤独を 感じていました 79 00:10:14,720 --> 00:10:19,840 戦争の爪痕が残るアルザスで 育った彼らにとって 80 00:10:19,960 --> 00:10:22,680 世の中は不確かなものでした 81 00:10:27,360 --> 00:10:31,160 彼らは自然の神秘に 傾倒していきます 82 00:10:37,080 --> 00:10:40,560 20キロを隔てて 空想する彼らの下では 83 00:10:40,680 --> 00:10:43,360 ライン断層と ヴォージュ断層が—— 84 00:10:43,480 --> 00:10:45,680 かすかに動いています 85 00:10:48,600 --> 00:10:53,560 カフェでデートした二人は 閉店して雨が降る中—— 86 00:10:55,560 --> 00:10:57,680 二度と離れませんでした 87 00:12:44,960 --> 00:12:47,880 1967年11月19日 88 00:12:48,560 --> 00:12:53,520 アメリカ軍が南ベトナムの 国境沿いに爆弾を2発投下 89 00:12:54,040 --> 00:12:57,480 かつてのフランス領 インドシナです 90 00:12:59,600 --> 00:13:04,400 1週間後 カティアたちは パリで反戦デモに参加し 91 00:13:05,320 --> 00:13:08,600 翌日の新聞の1面に 登場します 92 00:13:08,720 --> 00:13:09,240 モーリス 93 00:13:09,240 --> 00:13:11,600 モーリス カティア? 94 00:13:14,000 --> 00:13:16,800 しかし人間の権力欲など 95 00:13:16,880 --> 00:13:19,840 地球の力の前では無意味です 96 00:13:21,200 --> 00:13:26,000 私たちは人間に失望し 火山学にのめり込んだ 97 00:13:26,080 --> 00:13:31,200 人間よりも偉大な火山に 引かれたのさ 98 00:13:31,440 --> 00:13:35,080 人間の理解を 超えた火山にね 99 00:13:36,280 --> 00:13:38,760 プレート理論の発展で 100 00:13:39,000 --> 00:13:42,480 火山学は進化していきました 101 00:13:42,800 --> 00:13:47,400 プレート理論と 大陸移動説の確立は 102 00:13:47,520 --> 00:13:51,040 物理学における 原子の発見くらい重要だ 103 00:14:03,640 --> 00:14:07,080 彼らは地球に関する 記録を集め 104 00:14:07,240 --> 00:14:11,920 あらゆる仮説や昔話などを 調べ尽くしました 105 00:14:15,480 --> 00:14:16,560 真実 106 00:14:17,840 --> 00:14:19,000 断片 107 00:14:20,400 --> 00:14:21,600 疑問… 108 00:14:24,000 --> 00:14:27,640 地球を形成し    再形成する物とは? 109 00:14:31,920 --> 00:14:35,680 これらの謎に     二人は挑んでいきます 110 00:14:43,200 --> 00:14:45,000 1968年    アイスランド 111 00:14:53,440 --> 00:14:57,320 助成金と寄付された車で カティアたちは 112 00:14:57,440 --> 00:15:00,960 友人ローランドと     アイスランドの火山を探索 113 00:15:01,840 --> 00:15:06,120 カティアは地球化学者  モーリスは地質学者です 114 00:15:07,440 --> 00:15:10,360 1人では無理でも3人いれば 115 00:15:10,840 --> 00:15:12,880 火山を目指せます 116 00:15:18,680 --> 00:15:22,200 ただし車は27回 故障し 117 00:15:24,680 --> 00:15:26,200 何度もクラッシュ 118 00:15:28,920 --> 00:15:30,880 モーリスは熱い泥の中へ 119 00:15:32,640 --> 00:15:35,240 次のカティアの声は 声優です 120 00:15:35,760 --> 00:15:37,880 私は測定を終えて 121 00:15:37,960 --> 00:15:42,120 硫化水素とわずかな 塩酸を検出した 122 00:15:42,280 --> 00:15:45,440 結果に満足し モーリスの元へ行く 123 00:15:45,920 --> 00:15:49,120 彼が興味深そうに 見つめるのは 124 00:15:49,320 --> 00:15:53,760 玉ねぎのように 皮がむけた右足首だった 125 00:15:54,920 --> 00:15:58,240 熱い泥に足を突っ込み やけどした 126 00:15:58,600 --> 00:16:00,800 140度は熱かったな 127 00:16:00,960 --> 00:16:03,640 火山学者流の洗礼だね 128 00:16:06,480 --> 00:16:09,000 その後 彼らは数回の夏を 129 00:16:09,080 --> 00:16:12,960 エトナとストロンボリの 研究に費やします 130 00:16:14,880 --> 00:16:17,360 仲間も引き入れて自らを—— 131 00:16:17,800 --> 00:16:20,240 “チーム火の神〟と 呼びました 132 00:16:17,800 --> 00:16:20,960 チーム火の神 133 00:16:33,480 --> 00:16:37,360 繊細な作業でガスを バイアル瓶に採取する 134 00:16:39,440 --> 00:16:42,120 様々な困難があるわ 135 00:16:43,360 --> 00:16:48,520 ズボンが破れ下山時には 下着姿になってしまうの 136 00:17:12,240 --> 00:17:13,800 モーリス 137 00:17:24,600 --> 00:17:28,480 二人が追い求めるのは 謎めいた錬金術 138 00:17:28,560 --> 00:17:32,760 噴火を起こす鉱物に 熱とガス 139 00:17:32,800 --> 00:17:35,800 そして時間が材料です 140 00:17:40,840 --> 00:17:44,400 一体 地球はどのように 鼓動を刻み 141 00:17:45,160 --> 00:17:46,680 血を流すのか 142 00:17:51,320 --> 00:17:55,680 調査し 分析し      疑問を見つけてゆく二人 143 00:17:57,520 --> 00:18:01,040 こうして地球の  知られざる秘密を 144 00:18:01,120 --> 00:18:03,000 暴き始めます 145 00:18:10,600 --> 00:18:13,920 理解することは  愛することと同じ 146 00:18:26,320 --> 00:18:28,720 噴火を目にすると とりこになる 147 00:18:28,800 --> 00:18:31,800 それほど圧倒的で 力強いの 148 00:18:32,240 --> 00:18:35,240 これらの荒々しい 自然の前では 149 00:18:35,640 --> 00:18:38,480 私たちは無に等しい 150 00:18:46,280 --> 00:18:51,760 1970年 アルザスで     カティアとモーリスは結婚 151 00:18:53,120 --> 00:18:56,240 新婚旅行で訪れた サントリーニ島は 152 00:18:56,440 --> 00:18:59,600 アトランティスだったと 言われています 153 00:19:04,560 --> 00:19:07,480 “アトランティス・ホテル〟 154 00:19:07,680 --> 00:19:10,880 二人は子供を    持たないことを決意 155 00:19:12,720 --> 00:19:14,920 これからの人生は 156 00:19:15,080 --> 00:19:19,280 火山に費やすと     モーリスは語っています 157 00:19:35,920 --> 00:19:39,800 これはSF映画じゃ ありませんよ 158 00:19:39,960 --> 00:19:44,000 火山学者が火口付近で 踊ってるんです 159 00:19:44,760 --> 00:19:48,200 彼らはカティアと モーリス・クラフト 160 00:19:49,600 --> 00:19:52,920 冒険の旅 161 00:19:54,080 --> 00:19:56,400 人類と火山 162 00:20:00,040 --> 00:20:03,360 火山弾とは何ですか? 163 00:20:03,560 --> 00:20:06,640 噴火によって 放出された溶岩で 164 00:20:06,800 --> 00:20:08,880 多くがマグマ状なの 165 00:20:09,440 --> 00:20:13,360 見せるのが一番ね これが火山弾よ 166 00:20:13,920 --> 00:20:15,400 重いですか? 167 00:20:16,000 --> 00:20:20,000 数トンの物もあるけど これは2キロほどね 168 00:20:20,080 --> 00:20:23,040 頭に当たったら 大変でしょうね 169 00:20:23,240 --> 00:20:26,360 モーリス 火山は それぞれ違いますか? 170 00:20:26,480 --> 00:20:29,040 分類したことは? 171 00:20:29,360 --> 00:20:32,200 火山の分類は 禁止すべきだ 172 00:20:32,600 --> 00:20:36,280 どの火山も独特で 分類できない 173 00:20:36,400 --> 00:20:40,120 物事を分類するのは 老人と学者で 174 00:20:40,240 --> 00:20:44,120 それを使うよう 全世代に強要する 175 00:20:44,280 --> 00:20:46,120 正しくないのにだ 176 00:20:46,200 --> 00:20:48,880 火山ごとに 研究するのがいい 177 00:20:49,040 --> 00:20:51,160 強引な分類はせずにね 178 00:20:51,360 --> 00:20:54,760 特定のガスを 抑える製品なの 179 00:20:54,840 --> 00:20:57,240 ガス状の混合物が 装置に… 180 00:21:00,080 --> 00:21:04,120 火山学の分野に現れた 二人の若きスター 181 00:21:04,360 --> 00:21:07,720 持ち帰った標本は 美しいですね 182 00:21:07,880 --> 00:21:10,880 カラフルで カラーテレビに合う 183 00:21:11,240 --> 00:21:13,040 二人はカメラに好かれ 184 00:21:14,440 --> 00:21:17,160 同時にカメラを愛しました 185 00:21:20,800 --> 00:21:27,000 記録は火山との時間を記憶し 思い出し 延長する手段です 186 00:21:28,080 --> 00:21:30,040 毎回 写真を? 187 00:21:30,120 --> 00:21:32,840 ええ それを使って 観察する 188 00:21:33,480 --> 00:21:36,440 写真を見直せば 研究できるでしょ 189 00:21:36,520 --> 00:21:39,880 肉眼で見ても すぐ終わってしまう 190 00:21:41,080 --> 00:21:46,240 これは放物線を描く  ストロンボリの火山弾 191 00:21:47,200 --> 00:21:51,880 これは溶岩が引きちぎられ 火山毛かざんもうになる様子 192 00:21:52,680 --> 00:21:56,480 これはプレート理論の 理解に役立ちます 193 00:22:02,800 --> 00:22:06,000 火山学とは観察する科学です 194 00:22:06,560 --> 00:22:10,200 近くへ行くほど よく分かります 195 00:22:40,920 --> 00:22:43,960 自身を“パフォーマー 火山学者〟だと? 196 00:22:45,880 --> 00:22:47,920 フリーランスとも 呼ばれる 197 00:22:49,600 --> 00:22:53,240 でも実際 パフォーマーだと思うよ 198 00:22:54,720 --> 00:22:56,520 “火山ランナー〟だね 199 00:23:00,320 --> 00:23:02,040 地球のリズムに従い 200 00:23:02,480 --> 00:23:05,000 次の行き先が決まる 201 00:23:06,720 --> 00:23:09,800 別の人生を 送ってみたいと思う? 202 00:23:11,240 --> 00:23:13,080 私は思わないわ 203 00:23:13,160 --> 00:23:18,920 でも一部の同僚には 変わり者だと思われてる 204 00:23:20,360 --> 00:23:24,200 火山が目覚めると      現地の友人やガイドなど—— 205 00:23:24,280 --> 00:23:27,880 広がり続ける人脈から 二人は通知を受領 206 00:23:28,040 --> 00:23:31,440 真っ先に火口へと 駆けつけます 207 00:23:40,080 --> 00:23:43,280 1973年 ザイール 208 00:23:47,800 --> 00:23:51,400 モーリスとカティアは ニイラゴンゴ火山へ 209 00:23:51,480 --> 00:23:55,240 分裂したプレートの間に 存在する山です 210 00:23:58,160 --> 00:24:01,920 案内は火山学者の   ジャック・ドゥリュー 211 00:24:06,080 --> 00:24:08,480 火口に到着したら 212 00:24:08,640 --> 00:24:11,480 その中に入るんだ 213 00:24:12,000 --> 00:24:16,640 300メートルほど下りる 距離は短いが足場は最悪だ 214 00:24:17,960 --> 00:24:21,640 噴気孔があちこちにあって もろいのさ 215 00:24:45,880 --> 00:24:50,120 この先 2週間は   ここが彼らの家です 216 00:25:04,720 --> 00:25:06,480 カティアは後述します 217 00:25:07,440 --> 00:25:11,440 “私たちは深淵しんえんに 横たわり 黙考する〟 218 00:25:18,400 --> 00:25:22,480 “身震いするほど 恐ろしい現象だ〟 219 00:25:54,640 --> 00:25:58,720 突然 溶岩が一気に      10メートルほど流出しました 220 00:26:03,200 --> 00:26:06,240 私たちは正気じゃないと モーリスが言う 221 00:26:11,880 --> 00:26:12,760 それでも—— 222 00:26:14,000 --> 00:26:15,840 とどまり続ける 223 00:26:26,600 --> 00:26:29,920 好奇心は 恐怖を上回るのだ 224 00:26:32,640 --> 00:26:38,920 カティアとモーリスは無傷で 火口から出てきました 225 00:26:39,440 --> 00:26:43,040 火口に近づくことは 難しくない 226 00:26:43,920 --> 00:26:47,640 “赤色火山〟は 穏やかなんだ 227 00:26:53,840 --> 00:26:57,800 火山の分類という  広大な領域において 228 00:26:57,960 --> 00:27:01,720 夫妻はついに    2つのタイプを採用 229 00:27:02,040 --> 00:27:02,880 赤色と… 230 00:27:05,320 --> 00:27:06,280 灰色です 231 00:27:09,480 --> 00:27:14,200 人々が想像する噴火は 赤色の火山から出る溶岩 232 00:27:14,960 --> 00:27:19,760 灰色の火山の噴火は 爆発的で危険なの 233 00:27:20,720 --> 00:27:26,000 ニイラゴンゴなどの赤色は  プレートが両側に開く場所や 234 00:27:26,200 --> 00:27:28,920 海底のホットスポットに誕生 235 00:27:29,640 --> 00:27:34,400 地球の変動により     できた隙間をマグマが埋め 236 00:27:34,520 --> 00:27:36,360 海嶺になります 237 00:27:39,560 --> 00:27:41,840 溶岩は玄武岩質で 238 00:27:42,360 --> 00:27:43,520 噴出は穏やか 239 00:27:44,480 --> 00:27:48,000 マグマの温度は 1200度程度です 240 00:27:52,000 --> 00:27:55,360 赤色の火山の噴火で 死ぬことは ほぼない 241 00:27:55,560 --> 00:27:58,920 溶岩は川のように 谷間を流れるため 242 00:27:59,040 --> 00:28:00,520 動きが読めるんだ 243 00:28:07,200 --> 00:28:11,800 危険度はベルギーの道を 歩くのと同じだよ 244 00:28:11,880 --> 00:28:15,040 本当さ 想定内のリスクだ 245 00:32:14,640 --> 00:32:16,760 イマイチだな 246 00:32:16,920 --> 00:32:19,280 普段はもっと上手だよ 247 00:32:42,200 --> 00:32:46,720 時と共に 合理的になりましたか? 248 00:32:46,840 --> 00:32:48,760 意見は異なるだろうな 249 00:32:48,880 --> 00:32:50,160 カティアは? 250 00:32:50,920 --> 00:32:53,400 バカげたことは しなくなった 251 00:32:53,480 --> 00:32:55,800 例えば 噴火口に突撃して 252 00:32:55,880 --> 00:32:58,560 ようやく 正気に戻るとかね 253 00:32:58,640 --> 00:33:00,880 つまり合理的になった 254 00:33:00,960 --> 00:33:02,480 君だけだ 255 00:33:03,960 --> 00:33:06,480 二人の性格は異なります 256 00:33:09,720 --> 00:33:11,280 カティアは鳥のよう 257 00:33:14,800 --> 00:33:17,560 モーリスは    ゾウアザラシです 258 00:33:24,400 --> 00:33:28,880 カティアが興味を持つのは 詳細や物事の相関性 259 00:33:34,520 --> 00:33:38,200 モーリスは独自性や 偉大性に引かれます 260 00:33:42,440 --> 00:33:47,160 彼らはそれぞれ異なる方法で 世界を観察します 261 00:33:51,160 --> 00:33:56,080 カティアはスチールカメラで 一瞬を記録 262 00:34:02,280 --> 00:34:04,160 モーリスは動きを—— 263 00:34:05,080 --> 00:34:08,840 1秒24フレームの映像に 収めます 264 00:34:10,280 --> 00:34:13,160 目を見張る光景を 逃さぬよう—— 265 00:34:13,440 --> 00:34:16,680 可能な限り   撮影を続けます 266 00:34:18,640 --> 00:34:20,880 そのため彼は歩き続け… 267 00:34:22,680 --> 00:34:23,960 さまよい… 268 00:34:26,360 --> 00:34:27,720 止まりません 269 00:34:31,160 --> 00:34:34,320 カティアの一番の心配は 彼を見逃し—— 270 00:34:35,240 --> 00:34:37,160 永遠に失うこと 271 00:34:39,840 --> 00:34:41,480 これはワナだ 272 00:34:41,600 --> 00:34:43,760 もし地面が崩れたら 273 00:34:43,880 --> 00:34:46,640 火山学者は 溶岩の中に落ちる 274 00:34:46,760 --> 00:34:48,880 ゲームオーバーさ 275 00:35:13,120 --> 00:35:16,880 驚きの電報を受け取った カティアとモーリスは 276 00:35:17,480 --> 00:35:20,320 4年前に訪れた ニイラゴンゴへ 277 00:35:22,600 --> 00:35:26,320 1977年 ザイール 278 00:35:26,560 --> 00:35:30,480 至急電報      1月10日 午前10時 279 00:35:30,560 --> 00:35:33,720 “ニイラゴンゴの溶岩湖が 周辺へ流出〟 280 00:35:33,840 --> 00:35:38,320 “ゴマの町を脅かす〟 281 00:35:50,800 --> 00:35:54,800 あんなに穏やかだった ニイラゴンゴは 282 00:35:55,320 --> 00:35:59,320 数分で空からになり 周辺に死の種をまいた 283 00:36:20,200 --> 00:36:24,080 二人はこうした結果も 覚悟していましたが 284 00:36:24,360 --> 00:36:27,880 実際に目にしたのは これが初でした 285 00:36:35,400 --> 00:36:38,480 溶岩はあっという間に 流れ出た 286 00:36:38,760 --> 00:36:43,960 時速にすると 60キロから70キロだろう 287 00:36:45,200 --> 00:36:46,840 この時は朝で 288 00:36:47,040 --> 00:36:51,160 道には市場へ向かう 大勢の人がいた 289 00:36:51,520 --> 00:36:56,600 100人ほどが 溶岩に流されただろう 290 00:36:57,520 --> 00:36:59,040 異例の噴火だった 291 00:37:07,400 --> 00:37:10,960 これは完璧に残された 象の体の跡だ 292 00:37:11,680 --> 00:37:15,000 鼻やしっぽの跡まで 確認できる 293 00:37:30,080 --> 00:37:34,520 研究者であろうと    惨状に衝撃を隠せません 294 00:37:36,000 --> 00:37:39,080 神話的な表現が しっくり来ます 295 00:37:41,280 --> 00:37:45,040 彼らは地獄の   入り口にいました 296 00:37:46,760 --> 00:37:50,360 ゴマに住む彼らの 友人の話によると 297 00:37:50,760 --> 00:37:54,000 精霊の戦いに    巻き込まれたのです 298 00:38:11,880 --> 00:38:16,000 この光景を上から 見た様子を想像する 299 00:38:17,040 --> 00:38:20,240 小さなアリの滑稽な列が 300 00:38:20,320 --> 00:38:23,880 巨大な獣の背に 登っている 301 00:38:24,400 --> 00:38:27,280 そして偉そうに 言うのだ 302 00:38:28,480 --> 00:38:31,200 “あなたを 理解するために登り——〟 303 00:38:31,760 --> 00:38:36,600 “長年の秘密を暴いて 科学の進歩に役立てる〟 304 00:38:39,480 --> 00:38:43,400 人間の野心と虚栄心は どれほどなのか? 305 00:38:57,000 --> 00:39:00,000 私たちは 証人でありたいが 306 00:39:00,160 --> 00:39:04,320 地質学的時間は 生きられない 307 00:39:05,160 --> 00:39:09,680 火山の寿命と比べると 人間の命は一瞬だ 308 00:39:16,000 --> 00:39:18,240 今までの 科学的な発見は 309 00:39:18,320 --> 00:39:22,000 火山の仕組みや 地球が熱い理由などだ 310 00:39:23,080 --> 00:39:27,320 実際は地球のことを ほとんど何も知らない 311 00:39:53,480 --> 00:39:55,240 カティアたちにとって 312 00:39:55,440 --> 00:40:00,680 未知なるものは恐怖ではなく 興味を抱く対象です 313 00:40:32,840 --> 00:40:36,520 私は火山の内部まで 入り込みたい 314 00:40:37,280 --> 00:40:41,440 いつか死ぬだろうが まったく構わない 315 00:40:58,120 --> 00:41:02,120 死を軽く 見てるわけではないけど 316 00:41:02,760 --> 00:41:04,520 いつ その時が 来てもいい 317 00:41:05,920 --> 00:41:09,280 危険への憧れは あるかもね 318 00:41:12,320 --> 00:41:14,280 インドネシアでは—— 319 00:41:13,080 --> 00:41:17,720 1979年 インドネシア 320 00:41:14,280 --> 00:41:18,200 52年前に誕生した 若い山が噴火 321 00:41:18,960 --> 00:41:20,920 カティアとモーリスが 向かいます 322 00:41:24,360 --> 00:41:29,440 1883年 その山の親となる クラカタウ火山が噴火 323 00:41:30,760 --> 00:41:35,320 巨大な津波が発生して  近隣の海岸線を押し流し 324 00:41:35,400 --> 00:41:38,920 3万6417名の   死者を出しました 325 00:41:42,040 --> 00:41:44,960 波はサンゴを 海底から剥がし 326 00:41:45,240 --> 00:41:48,960 蒸気船を3キロ以上 内陸に動かします 327 00:41:49,760 --> 00:41:51,440 火山灰は全世界へ 328 00:41:51,520 --> 00:41:56,280 鮮やかな夕焼けを生み出し 人々の目を奪いました 329 00:41:56,480 --> 00:42:01,680 絵画“叫び〟の夕焼けは  噴火の影響とも言われます 330 00:42:05,240 --> 00:42:07,920 その後 クラカタウは 海に沈み 331 00:42:09,400 --> 00:42:14,200 新たにアナククラカタウが 誕生しました 332 00:42:19,680 --> 00:42:22,920 私たちがビーチに 到着した瞬間—— 333 00:42:23,000 --> 00:42:24,680 噴火が始まった 334 00:42:25,560 --> 00:42:30,360 私たちだけが島に残り 島民はみんな 逃げたよ 335 00:43:26,080 --> 00:43:29,240 数分ごとに 見事な噴火があった 336 00:43:29,360 --> 00:43:33,240 1日24時間 ずっと二人だけだ 337 00:43:33,400 --> 00:43:35,520 どちらかが 火山弾を見張る 338 00:43:44,600 --> 00:43:48,520 夜は噴き出る様子が よく見える 339 00:43:48,640 --> 00:43:51,800 火山弾が私たちに 向かってきたら 340 00:43:52,440 --> 00:43:56,240 寝てる相手を 移動させるのさ 341 00:44:02,600 --> 00:44:04,440 私たちは迷った 342 00:44:04,560 --> 00:44:07,800 近づくべきか 船で逃げるべきか 343 00:44:11,840 --> 00:44:13,960 でも結局 前進する 344 00:44:19,000 --> 00:44:23,160 捕まってしまうかも しれない獣に—— 345 00:44:23,320 --> 00:44:26,200 近づくのは快感なのだ 346 00:44:33,440 --> 00:44:35,280 火口に立つ喜びを 347 00:44:35,400 --> 00:44:38,640 共有できない相手とは 暮らせない 348 00:44:53,240 --> 00:44:56,280 カティアとモーリスは 一心同体でしょう 349 00:44:56,920 --> 00:45:00,760 一人のミスが     二人の命に直結します 350 00:45:02,200 --> 00:45:05,080 二人とも互いがいなければ 351 00:45:05,640 --> 00:45:08,120 この仕事は成り立ちません 352 00:45:09,720 --> 00:45:12,840 こうして二人は     感情もなく噴火する—— 353 00:45:13,360 --> 00:45:16,600 火山を一緒に目指すのです 354 00:45:18,360 --> 00:45:23,640 簡単に動じない 強い精神力が必要だ 355 00:45:25,200 --> 00:45:28,360 例えば妻が 重傷を負ったとする 356 00:45:28,480 --> 00:45:31,280 私にできることは 何もない 357 00:45:31,680 --> 00:45:35,200 彼女を看取ることしか できないんだ 358 00:45:35,280 --> 00:45:37,240 ひどい話だよ 359 00:46:33,480 --> 00:46:37,240 これらは二人よりも  長く世に残るでしょう 360 00:46:42,720 --> 00:46:47,200 二人は信心深くない 科学者であり 361 00:46:48,120 --> 00:46:52,600 “短い人生を生き     土に返るのだ〟と言います 362 00:47:07,640 --> 00:47:12,840 カティアの夢は      その短い一生を火山に捧げ 363 00:47:13,320 --> 00:47:16,080 研究し尽くすことです 364 00:47:19,600 --> 00:47:23,040 実現していない 夢はある? 365 00:47:24,160 --> 00:47:27,520 あるわ すべての噴火を 見ることよ 366 00:47:30,200 --> 00:47:35,280 何があろうとマグマへ  近づいていくモーリスは 367 00:47:36,440 --> 00:47:37,760 こう説明します 368 00:47:37,960 --> 00:47:41,360 火山という怪物に 挑むには恐らく—— 369 00:47:41,440 --> 00:47:45,440 ある種の人生観が要る 私の場合は単純だ 370 00:47:47,280 --> 00:47:51,120 “単調に生き続けるより 激しく生き急ぐ〟 371 00:47:51,920 --> 00:47:55,400 火山で神風のように 散りたい 372 00:48:34,120 --> 00:48:38,080 子供の頃から 夢見てきた計画がある 373 00:48:38,160 --> 00:48:43,600 カヌーで15キロほど 溶岩の川を下るんだ 374 00:48:43,680 --> 00:48:47,960 もし実現できるなら ここ ハワイでやるよ 375 00:48:48,080 --> 00:48:50,600 何としても 成し遂げたい 376 00:48:50,720 --> 00:48:54,920 カヌーはジェミニ 宇宙船のような形で 377 00:48:55,040 --> 00:48:59,800 チタン合金と 断熱レンガで保護する 378 00:49:00,280 --> 00:49:03,560 ヘリコプターで カヌーを溶岩に下ろし 379 00:49:03,640 --> 00:49:07,280 私たちは流れに乗って 海へ出るんだ 380 00:49:14,680 --> 00:49:18,040 モーリスがこの計画を 考えたのは 381 00:49:18,200 --> 00:49:21,720 インドネシアを初訪問した 1971年でした 382 00:49:27,040 --> 00:49:31,680 硫酸が溶け込む世界最大の 酸性湖を調べた時です 383 00:49:39,960 --> 00:49:42,840 ボートでこの湖に 入るんだ 384 00:49:43,320 --> 00:49:47,120 初の試みだから ワクワクしたよ 385 00:50:08,040 --> 00:50:11,000 地球化学者の カティアは反対した 386 00:50:13,800 --> 00:50:16,880 ミッシェル・ウォルフと 私は参加を拒否 387 00:50:16,960 --> 00:50:19,120 2人とも化学者で 388 00:50:19,280 --> 00:50:21,920 危険性を理解してた 389 00:50:22,040 --> 00:50:25,120 湖の水は 高濃度の酸なの 390 00:50:42,360 --> 00:50:45,400 ついに鈍感な 地質学者たちが 391 00:50:45,560 --> 00:50:47,840 ボートを漕ぎ出す 392 00:50:50,360 --> 00:50:54,040 ボートは のみの市で 100フランで買った 393 00:50:55,440 --> 00:50:58,120 新品ではなく中古だよ 394 00:50:58,200 --> 00:51:00,280 そこまでバカじゃない 395 00:51:09,880 --> 00:51:14,320 最初は少し心配したが かなり刺激的だった 396 00:51:14,400 --> 00:51:17,560 禁止されると やりたくなるのさ 397 00:51:46,600 --> 00:51:49,520 酸により         スチールケーブルが腐食し 398 00:51:49,640 --> 00:51:52,680 サンプル瓶が     湖の底へ落下しました 399 00:51:58,320 --> 00:52:00,080 任務は終了 400 00:52:01,880 --> 00:52:04,840 向かい風が彼らを 押し流します 401 00:52:05,680 --> 00:52:09,880 岸へ戻るのに     3時間 格闘しました 402 00:52:12,200 --> 00:52:14,000 カティアは激怒 403 00:52:25,120 --> 00:52:28,520 ある人物が こんな言葉を残した 404 00:52:28,600 --> 00:52:32,000 “異常者とは理性以外を 失った人間だ〟 405 00:52:36,640 --> 00:52:39,160 酸性湖の成分を 調べるため 406 00:52:39,320 --> 00:52:41,640 ボートで湖に入った? 407 00:52:41,800 --> 00:52:44,960 酸を熟知する 化学者たちには 408 00:52:45,080 --> 00:52:47,680 同乗を拒否されたんだ 409 00:52:47,760 --> 00:52:51,960 浅はかな地質学者が 酒をあおって実行したよ 410 00:52:52,720 --> 00:52:56,920 時と共にモーリスは 伝説を作り上げます 411 00:52:57,320 --> 00:52:59,400 あなたは “火山の悪魔〟? 412 00:52:59,480 --> 00:53:01,280 ああ 角がある 413 00:53:02,800 --> 00:53:06,560 最も美しく偉大な 自然の光景だよ 414 00:53:06,640 --> 00:53:09,680 海などとは 比較にならない 415 00:53:12,160 --> 00:53:16,680 二人はメディアへの露出に 慣れ始めます 416 00:53:17,200 --> 00:53:20,440 この20年で 観察した火山の数は? 417 00:53:20,520 --> 00:53:23,440 カティアは170 私は150だ 418 00:53:23,520 --> 00:53:26,920 妻のほうが多いのは 夫婦関係の問題さ 419 00:53:27,000 --> 00:53:29,440 二人は非常に “噴火的〟だとか 420 00:53:33,680 --> 00:53:38,200 私は映画制作者ではなく 流浪の火山学者だが 421 00:53:38,320 --> 00:53:40,840 流浪するために 映画を作る 422 00:53:43,400 --> 00:53:47,680 しかし映像からは    遊び心も伝わってきます 423 00:53:56,200 --> 00:53:59,760 例えば調査の過酷さを 伝えたい場合は 424 00:54:01,080 --> 00:54:02,800 こんな映像を 425 00:54:06,160 --> 00:54:07,160 あるいは これ 426 00:54:10,320 --> 00:54:13,400 火口をのぞき込む方法を 見せる場合は 427 00:54:14,640 --> 00:54:16,480 こんな感じに 428 00:54:21,480 --> 00:54:24,560 地質学的スケールを 表現する場合は 429 00:54:27,000 --> 00:54:28,800 こんな映像です 430 00:54:41,080 --> 00:54:42,440 では これは? 431 00:54:52,440 --> 00:54:56,040 なぜ この瞬間を    撮影したのでしょう? 432 00:54:58,240 --> 00:55:00,560 一体 その目的は? 433 00:55:11,520 --> 00:55:15,120 カティアとモーリスは アルザスへ戻り 434 00:55:15,440 --> 00:55:18,480 撮影した記録を  本や映画にします 435 00:55:20,080 --> 00:55:23,160 ここでは彼らも 普通の人間です 436 00:55:31,920 --> 00:55:33,680 ほら 始まったぞ 437 00:55:36,520 --> 00:55:41,000 火山へ行けない時は 恋しくなって 438 00:55:41,120 --> 00:55:43,680 家で小さい火山を 作るんだ 439 00:55:46,480 --> 00:55:49,560 幸せか問われたら “まさか〟と答える 440 00:55:49,680 --> 00:55:52,320 この世界は 機能的じゃない 441 00:55:53,400 --> 00:55:55,320 もし岩が食料なら 442 00:55:55,480 --> 00:55:58,480 私はずっと 火山にいられる 443 00:56:04,600 --> 00:56:08,000 世界が月並みだとは 思わない 444 00:56:09,120 --> 00:56:12,000 勝手だけど 常に噴火口の上で 445 00:56:12,160 --> 00:56:14,720 考えにふけりたいの 446 00:56:19,040 --> 00:56:23,320 様々な支払いを済ませねば 火山へ戻れません 447 00:56:24,560 --> 00:56:26,640 カティアは画像をまとめ 448 00:56:27,040 --> 00:56:30,480 本を書き       作業を取りまとめます 449 00:56:32,920 --> 00:56:36,360 モーリスは講演会や メディア対応を担当 450 00:56:36,520 --> 00:56:39,520 溶岩下りの計画は 進みません 451 00:56:39,680 --> 00:56:43,880 カティアは私と 溶岩を下る気はなく 452 00:56:44,080 --> 00:56:46,600 “旅立つ私の 最後の写真を撮る〟と 453 00:56:48,320 --> 00:56:50,400 彼は映画も編集も担当 454 00:56:57,760 --> 00:57:01,520 火口に立てれば どんな障害にも勝てる 455 00:57:02,760 --> 00:57:06,880 同時に この世界が 必要とする知恵を 456 00:57:06,960 --> 00:57:09,920 得ることができるんだ 457 00:57:10,600 --> 00:57:13,800 この映像を 見ている間も世界では 458 00:57:13,880 --> 00:57:18,720 30ほどの火山が噴火し あなたを待っている 459 00:57:20,840 --> 00:57:22,120 ボールを投入 460 00:57:22,760 --> 00:57:23,760 “ボルケーノ〟 461 00:57:24,040 --> 00:57:25,080 キケン 462 00:57:27,360 --> 00:57:29,320 キケン キケン 463 00:57:32,920 --> 00:57:36,240 これは火山学者の   ハリー・グリッケンが 464 00:57:36,360 --> 00:57:41,040 1980年5月17日に撮影した セントヘレンズ山です 465 00:57:42,000 --> 00:57:45,960 次の画像は翌日の   出来事を写したもので 466 00:57:46,480 --> 00:57:52,720 太平洋夏時間 午前8時32分 11.4秒から始まります 467 00:57:58,640 --> 00:58:01,960 ただ今 噴火が発生 468 00:58:02,080 --> 00:58:04,960 巨大な地滑りが 起きてる 469 00:58:06,120 --> 00:58:09,840 了解 確認した 北西部全体だ 470 00:58:10,600 --> 00:58:13,360 バンクーバー 来たぞ! 471 00:58:15,960 --> 00:58:20,320 私の南側にいた キャンプ中の人物と 472 00:58:20,440 --> 00:58:23,400 その車が飲み込まれた 473 00:58:24,160 --> 00:58:25,880 私も流される 474 00:58:27,960 --> 00:58:31,040 東に53キロ離れた アダムズ山から 475 00:58:31,160 --> 00:58:33,360 撮られた写真です 476 00:58:34,920 --> 00:58:39,640 この写真は56キロ先の 北西部から撮影 477 00:58:40,640 --> 00:58:44,920 遠くから8ミリカメラで これが記録されました 478 00:58:53,000 --> 00:58:57,560 モーリスとカティアが   撮影したものはありません 479 00:58:57,800 --> 00:59:00,480 二人は知らなかったのです 480 00:59:02,720 --> 00:59:06,200 “セントヘレンズ山〟 481 00:59:03,840 --> 00:59:06,200 セントヘレンズの 大噴火は 482 00:59:06,320 --> 00:59:09,520 テレビをつけて知った 483 00:59:10,560 --> 00:59:14,320 カティアに言ったよ “大噴火を逃したぞ!〟 484 00:59:14,400 --> 00:59:16,520 ぜひ見たかった 485 00:59:25,840 --> 00:59:28,840 火山灰が周辺に  降り積もる中—— 486 00:59:30,040 --> 00:59:32,560 カティアとモーリスが 現地入りします 487 01:01:45,840 --> 01:01:49,680 “セントヘレンズ山 スピリット湖〟 488 01:02:01,600 --> 01:02:05,080 二人は火山灰の中で 3ヵ月を過ごし 489 01:02:05,920 --> 01:02:10,080 この威力を観察し   記録し 研究しました 490 01:02:12,560 --> 01:02:15,720 そして彼ら研究者たちは 少しずつ—— 491 01:02:16,000 --> 01:02:18,520 全体像を解き明かします 492 01:02:18,760 --> 01:02:21,640 およそ2.8立方キロ 493 01:02:21,720 --> 01:02:25,600 これは崩れて滑り落ちた 山の体積です 494 01:02:27,480 --> 01:02:31,240 この噴火の威力は   広島に投下された—— 495 01:02:31,400 --> 01:02:34,760 原子爆弾      2万5000発分に相当 496 01:02:36,000 --> 01:02:39,640 犠牲者の数は57人です 497 01:02:44,440 --> 01:02:48,680 現地でジョンストンの   テープが見つかっています 498 01:02:50,880 --> 01:02:53,920 2人の火山学者が 亡くなった 499 01:02:54,000 --> 01:02:56,640 1人はデイヴィッド・ ジョンストンで 500 01:02:56,760 --> 01:02:59,320 火山から10キロ 北にいたんだ 501 01:02:59,440 --> 01:03:01,880 彼はブラストの 衝撃に耐え 502 01:03:01,960 --> 01:03:04,200 無線に こう言い残した 503 01:03:04,280 --> 01:03:05,840 “バンクーバー 来たぞ!〟 504 01:03:06,640 --> 01:03:08,600 彼は見つかってない 505 01:03:08,760 --> 01:03:11,680 爆風に 吹き飛ばされたんだ 506 01:03:13,600 --> 01:03:16,360 彼はなぜ 危険な場所にいたか? 507 01:03:16,480 --> 01:03:20,520 ブラストは北に行くと 推測されていたが 508 01:03:20,680 --> 01:03:24,160 届いても8キロ程度だと 考えられていた 509 01:03:24,240 --> 01:03:26,800 だが 実際は 30キロだった 510 01:03:31,600 --> 01:03:34,200 噴火後に何を発見しようと 511 01:03:35,280 --> 01:03:40,600 重要なことを事前に     把握する方法は分かりません 512 01:03:41,880 --> 01:03:45,760 噴火の激しさは 予測できないの 513 01:03:45,840 --> 01:03:50,960 あと噴火を引き起こす いわゆる“トリガー〟や 514 01:03:51,080 --> 01:03:55,000 マグマが不安定に なる時も分からない 515 01:03:55,240 --> 01:03:57,120 噴火は突然 起こる 516 01:04:00,040 --> 01:04:05,680 以降 彼らはこのタイプの  火山に人生を捧げ始めます 517 01:04:06,240 --> 01:04:09,480 灰色の火山     つまり殺人火山です 518 01:04:15,000 --> 01:04:18,160 灰色の火山は謎が多く 興味深いよ 519 01:04:18,360 --> 01:04:21,240 赤色より危険で 近づきづらい 520 01:04:27,880 --> 01:04:30,560 いわば導火線に 火がついた爆弾だ 521 01:04:30,640 --> 01:04:32,920 いつ爆発するか読めない 522 01:04:43,960 --> 01:04:46,960 噴煙は40キロほど 噴き上がり 523 01:04:47,040 --> 01:04:49,760 火砕サージは 時速1000キロで移動 524 01:04:49,920 --> 01:04:54,080 瞬時に最大40キロ圏内の すべてを破壊する 525 01:04:58,840 --> 01:05:01,040 灰色の火山は危険ですが 526 01:05:01,440 --> 01:05:04,800 その灰は       肥沃な土壌になります 527 01:05:05,000 --> 01:05:08,080 この見事なカブが証拠です 528 01:05:11,560 --> 01:05:15,400 プレートが離れてできる 赤色の火山と違い 529 01:05:15,640 --> 01:05:18,960 灰色の火山は      プレートが沈み込み誕生 530 01:05:19,040 --> 01:05:22,400 圧力と温度が上昇していき 噴火します 531 01:05:24,160 --> 01:05:28,760 その例は79年に噴火した ベスビオ火山や 532 01:05:29,440 --> 01:05:31,800 1815年のタンボラ山 533 01:05:31,920 --> 01:05:34,360 1902年のプレー山です 534 01:05:37,480 --> 01:05:42,120 1982年のガルングン火山は 比較的 小規模でした 535 01:05:48,440 --> 01:05:51,320 これは1983年の ウナウナ島 536 01:05:55,560 --> 01:05:58,720 世界に火山学者は 350人 537 01:05:58,880 --> 01:06:01,640 そのうち私を含む 50人だけが 538 01:06:01,720 --> 01:06:06,400 爆発的噴火を起こす 灰色の火山の専門家だ 539 01:06:16,160 --> 01:06:17,480 “256度〟 540 01:06:19,400 --> 01:06:22,800 “4月 5月 6月〟 541 01:06:22,960 --> 01:06:26,880 “7月 8月 9月〟 542 01:06:35,040 --> 01:06:36,960 火山は噴火する前—— 543 01:06:37,040 --> 01:06:40,480 必ず病人のように 震えるんだ 544 01:06:40,640 --> 01:06:43,360 上昇する マグマによってね 545 01:06:43,440 --> 01:06:46,000 そして腫瘍のように 腫れる 546 01:06:47,040 --> 01:06:50,120 斜面は急になり 火口は大きくなり 547 01:06:50,200 --> 01:06:55,240 火山の息も不快な 臭いに変わるんだ 548 01:06:55,320 --> 01:06:58,280 火山ガスの 成分も変わるし 549 01:06:58,400 --> 01:07:01,880 熱が出たみたいに 温度も上がる 550 01:07:03,480 --> 01:07:05,800 噴火の兆候はあっても 551 01:07:06,200 --> 01:07:10,200 具体的なタイミングは 分かりません 552 01:07:11,240 --> 01:07:14,240 人間界においては    タイミングがすべてです 553 01:07:17,720 --> 01:07:23,600 1884年 時は機械によって  刻まれるようになりました 554 01:07:24,600 --> 01:07:27,560 太陽や月 星を  もう頼りません 555 01:07:27,800 --> 01:07:31,880 地球の鉱物を運ぶ鉄道を 調整するため 556 01:07:31,960 --> 01:07:34,200 時間を標準化したのです 557 01:07:34,360 --> 01:07:37,560 “本初子午線〟 558 01:07:35,880 --> 01:07:37,560 この鉄道時刻は 559 01:07:37,840 --> 01:07:41,320 すぐ世界中に  導入されました 560 01:07:45,320 --> 01:07:47,760 一方 噴火の予定は読めず 561 01:07:49,680 --> 01:07:52,240 導火線の長さは不明のまま 562 01:07:59,840 --> 01:08:03,560 火山学者が 噴火の現場を訪れるのは 563 01:08:03,640 --> 01:08:06,720 ロシアンルーレットの ようなものか? 564 01:08:07,920 --> 01:08:10,960 自分だけが リスクを冒すならいい 565 01:08:11,400 --> 01:08:15,200 でも どう行動すべきか 助言する時は 566 01:08:15,280 --> 01:08:19,560 “危ないと思った時は 避難しろ〟と答えている 567 01:08:23,960 --> 01:08:26,640 この地図は       ネバド・デル・ルイス火山 568 01:08:26,760 --> 01:08:29,680 コロンビアにある 灰色の火山です 569 01:08:30,240 --> 01:08:35,160 噴火の可能性を示す     あらゆる兆候が確認されたと 570 01:08:35,840 --> 01:08:40,080 コロンビアの地質学者が 当局に報告しました 571 01:08:41,120 --> 01:08:44,480 1985年10月7日の 報告書を見ると 572 01:08:44,560 --> 01:08:48,240 火山泥流が      発生する確率は100% 573 01:08:48,480 --> 01:08:52,400 周辺の町に重大な危険を もたらすとあります 574 01:08:53,920 --> 01:08:58,640 カティアたちは避難や   警告システムの準備を要求 575 01:09:00,480 --> 01:09:02,160 危険は明白です 576 01:09:03,680 --> 01:09:07,160 ですが コストがかかると 判断されました 577 01:09:29,720 --> 01:09:35,560 1985年11月14日 世界中に これらの映像が流れます 578 01:09:40,920 --> 01:09:43,400 前日に山が噴火し 579 01:09:43,880 --> 01:09:49,480 住民が寝ている夜中に    泥流が町を飲み込んだのです 580 01:09:55,040 --> 01:09:58,800 カティアは講演会で    不在だったモーリスを残し 581 01:09:58,880 --> 01:10:00,800 先に現地入りします 582 01:11:02,200 --> 01:11:05,520 公式な死者数は   2万2000人から—— 583 01:11:06,160 --> 01:11:07,920 2万3000人へ増加 584 01:11:09,280 --> 01:11:11,920 2万5000人とする報告も 585 01:11:12,880 --> 01:11:14,960 正確な人数は不明です 586 01:11:19,680 --> 01:11:21,960 生存者は こう語ります 587 01:11:22,320 --> 01:11:26,360 〈山から流れてくる 川を見ると〉 588 01:11:26,520 --> 01:11:29,160 〈大量の泥が見えた〉 589 01:11:31,520 --> 01:11:35,440 〈そして すぐ私を 飲み込んだんだ〉 590 01:11:37,000 --> 01:11:39,280 〈大勢が 泣いて人を捜してた〉 591 01:11:39,360 --> 01:11:43,000 〈“息子が流された〟 “妻がいない〟〉 592 01:11:43,880 --> 01:11:47,720 〈“自分だけ残った〟 “2人しかいない〟と〉 593 01:11:49,160 --> 01:11:53,040 〈腕や脚 頭などの 一部が見つかったが〉 594 01:11:54,120 --> 01:11:58,320 〈捜しに来た家族は 見つからなかった〉 595 01:12:09,520 --> 01:12:13,400 カティアは講演会で     火山の威力を説いている—— 596 01:12:13,480 --> 01:12:16,240 モーリスを待ち望みます 597 01:12:19,000 --> 01:12:22,320 初めて人生の意義を 疑ったのです 598 01:12:27,440 --> 01:12:30,560 こうした時が 一番 つらい 599 01:12:30,640 --> 01:12:33,640 村が破壊されたり 600 01:12:33,720 --> 01:12:36,040 被災者が 出たりする時よ 601 01:12:37,280 --> 01:12:40,760 自分を火山学者と 呼ぶのが恥ずかしい 602 01:12:50,560 --> 01:12:53,800 18世紀や19世紀の 大災害では 603 01:12:53,880 --> 01:12:58,000 情報不足が原因で 大勢の被害者が出た 604 01:12:58,160 --> 01:13:02,920 なぜ情報もある20世紀に 同じことが起きるの? 605 01:13:05,280 --> 01:13:08,320 のどの奥に しこりのように残ってる 606 01:13:08,480 --> 01:13:12,240 噴火で2万2000人が 亡くなったのは 607 01:13:12,320 --> 01:13:16,800 当局が火山学者を 信用しなかったからだ 608 01:13:20,200 --> 01:13:23,160 長年 地球がどう鼓動を刻み 609 01:13:23,280 --> 01:13:27,480 血を流すかを記録してきた カティアとモーリス 610 01:13:28,160 --> 01:13:32,280 今 彼らが目を向けるのは 人間たちです 611 01:13:45,680 --> 01:13:47,800 以前のモーリスの言葉です 612 01:13:48,160 --> 01:13:52,160 私にとって人間を 理解するのは骨が折れる 613 01:13:52,240 --> 01:13:56,400 常に人間から 逃げてるわけじゃない 614 01:13:58,760 --> 01:14:01,880 でも人と離れて 火山で暮らせば 615 01:14:01,960 --> 01:14:05,160 人を愛するように なると信じてる 616 01:15:57,120 --> 01:15:59,800 破壊と創造を繰り返す火山 617 01:16:00,720 --> 01:16:03,960 必ず犠牲者は    出るのでしょうか? 618 01:16:08,840 --> 01:16:11,800 火山は美しいが 人の命を奪う 619 01:16:11,880 --> 01:16:16,520 それをなくすことが 私の夢の1つなんだ 620 01:16:22,400 --> 01:16:25,000 アルメロでは火山泥流で 621 01:16:25,080 --> 01:16:27,960 2万5000人が 亡くなった 622 01:16:28,520 --> 01:16:32,600 人々を避難させていれば 防げたはずよ 623 01:16:33,800 --> 01:16:36,840 火山の専門的な 報告書なんて 624 01:16:36,960 --> 01:16:40,400 知識のない人たちは 見たりしない 625 01:16:40,480 --> 01:16:43,320 だから映画を 作ろうと思ったの 626 01:16:43,480 --> 01:16:46,960 政府に 犠牲者や被害状況—— 627 01:16:47,080 --> 01:16:49,920 危険性が分かる 映像を見せる 628 01:16:50,080 --> 01:16:53,120 そうすれば彼らを 説得できるかも 629 01:16:57,960 --> 01:17:02,560 二人は火山の危険性を 伝える映画を作るため 630 01:17:02,680 --> 01:17:05,600 恐ろしい火山を 探しに行きます 631 01:17:21,840 --> 01:17:25,000 1年を費やし  この映像を撮影 632 01:17:25,320 --> 01:17:27,400 アラスカの      オーガスティン山です 633 01:17:36,520 --> 01:17:41,080 火砕サージの種類を 考えたら危険だけど 634 01:17:41,160 --> 01:17:44,560 初めて火口付近まで 行ったの 635 01:17:44,640 --> 01:17:46,400 50メートル手前までね 636 01:17:52,160 --> 01:17:56,160 煮立ったミルクの 中にいるハエの気分 637 01:18:04,960 --> 01:18:07,520 ものすごく 静かな噴火だった 638 01:18:09,400 --> 01:18:12,000 ちっとも怖くなかったわ 639 01:18:18,880 --> 01:18:22,160 見とれて 吸い寄せられていった 640 01:18:22,240 --> 01:18:24,640 “正気じゃない〟と 言いつつね 641 01:18:24,760 --> 01:18:29,400 特別な瞬間だから 行くしかないと思ったの 642 01:18:40,000 --> 01:18:44,240 逃げるべきかを      伝えるように揺れるカメラ 643 01:18:48,400 --> 01:18:51,440 恐らく同僚の     ユルゲン・キンリーが 644 01:18:51,600 --> 01:18:55,680 火山灰から彼らを     引き離しているのでしょう 645 01:19:43,480 --> 01:19:47,640 数年後 彼らの訃報には   二人の主張が記されました 646 01:19:47,720 --> 01:19:52,120 “リスクは常に     最小化されるべきだが〟 647 01:19:53,560 --> 01:19:56,960 “至近距離からの観察も 必要なのだ〟 648 01:20:22,480 --> 01:20:24,040 モーリスは以前—— 649 01:20:24,880 --> 01:20:29,120 “人間は火山の前では  無力だ〟と述べています 650 01:20:30,040 --> 01:20:33,560 “私たちの歩みを      残す方法は文章を書き——〟 651 01:20:34,000 --> 01:20:35,880 “伝え 撮影すること〟 652 01:21:18,960 --> 01:21:21,360 死と隣り合わせの時—— 653 01:21:22,480 --> 01:21:23,840 何を残すのか? 654 01:21:30,320 --> 01:21:32,760 美しいものは散々 見た 655 01:21:33,560 --> 01:21:35,880 多くを経験したし 656 01:21:36,080 --> 01:21:40,240 100年以上生きてきた ような気持ちだ 657 01:21:47,840 --> 01:21:51,240 だから正直 恐怖を感じない 658 01:21:52,000 --> 01:21:54,880 ずっと こうして 生きていくよ 659 01:22:00,520 --> 01:22:02,680 私と夫は常に一緒で 660 01:22:02,800 --> 01:22:05,720 1人では 仕事ができない 661 01:22:09,560 --> 01:22:14,320 彼の体重は私の倍だから 彼のあとを歩けば 662 01:22:15,000 --> 01:22:18,400 その道は安全だと 分かっていいの 663 01:22:19,760 --> 01:22:22,080 死ぬ時は二人一緒よ 664 01:22:22,200 --> 01:22:24,720 だから私は 彼についてゆく 665 01:22:25,120 --> 01:22:27,960 私が先を歩く時もあるわ 666 01:22:37,040 --> 01:22:42,960 地質学的な時の中で     一連の力が地球内部で衝突し 667 01:22:43,520 --> 01:22:48,920 地球の姿を永遠に変える 噴火を引き起こします 668 01:22:51,520 --> 01:22:54,640 人類が生きてきた 200万年の中で 669 01:22:55,080 --> 01:23:00,000 二人の人間が同じ時代の 同じ場所で誕生 670 01:23:00,880 --> 01:23:03,000 同じものを好きになり 671 01:23:04,720 --> 01:23:07,840 その愛が地球への 理解を深めました 672 01:23:13,400 --> 01:23:15,680 やあ トト モーリスだ 673 01:23:16,400 --> 01:23:19,200 今から日本へ行くよ 674 01:23:20,320 --> 01:23:22,720 空港にいる 火曜の正午だ 675 01:23:22,800 --> 01:23:26,040 雲仙で興味深い 噴火が起きた 676 01:23:26,120 --> 01:23:30,640 マルティニークから戻り パリへ行こうと思ったが 677 01:23:30,720 --> 01:23:32,800 今日 日本へ発つよ 678 01:23:32,920 --> 01:23:35,440 愛してる じゃあな 679 01:23:44,960 --> 01:23:47,120 1991年6月3日 680 01:23:47,640 --> 01:23:51,880 雲仙普賢岳が        約200年ぶりに目覚めました 681 01:23:52,520 --> 01:23:54,920 山は5月から活動を活発化 682 01:23:55,240 --> 01:23:58,800 そして この日       内部で何かが起きたのです 683 01:24:32,280 --> 01:24:36,480 確証を持てたらいいけど 何も分からない 684 01:24:36,880 --> 01:24:41,840 頂上の大きな塊が いつ崩れるかは謎なの 685 01:24:51,320 --> 01:24:54,320 午後4時過ぎ   雨が降り始めます 686 01:24:55,720 --> 01:24:58,200 北風にあおられる火山灰 687 01:24:59,440 --> 01:25:01,480 今回は何かが異なります 688 01:25:04,600 --> 01:25:06,720 霧が出てきたため 689 01:25:07,040 --> 01:25:11,800 友人のハリー・グリッケンと 山へさらに近づく二人 690 01:26:12,720 --> 01:26:16,840 報道陣が放棄したカメラが 捉えた映像です 691 01:26:30,720 --> 01:26:33,600 ブラストが     発生する直前に—— 692 01:26:34,000 --> 01:26:37,160 撮影された      二人の最後の映像です 693 01:26:44,600 --> 01:26:47,280 日本の関係者は この写真を 694 01:26:47,400 --> 01:26:49,080 夫婦の友人に提供 695 01:26:49,440 --> 01:26:53,680 二人は島原市の寺で 弔われました 696 01:26:58,200 --> 01:27:01,120 現場付近に残された 痕跡から 697 01:27:01,280 --> 01:27:04,640 二人は隣り合っていたことが 分かっています 698 01:27:06,800 --> 01:27:10,680 回収された遺品は  カメラと時計の2点 699 01:27:11,200 --> 01:27:15,160 時計の針は午後4時18分を 指していました 700 01:27:19,920 --> 01:27:23,800 東シナ海のそばにある ピナツボ火山が 701 01:27:24,520 --> 01:27:30,440 その約1週間後に噴火し   深刻な被害をもたらしました 702 01:27:31,520 --> 01:27:34,040 事前避難者は5万8000人 703 01:27:34,920 --> 01:27:37,560 カティアたちの撮った映像を 704 01:27:37,680 --> 01:27:41,800 当局が警告として    重く受け止めた結果です 705 01:27:49,160 --> 01:27:52,080 フランスとドイツの 国境付近では 706 01:27:52,440 --> 01:27:54,720 ライン断層と     ヴォージュ断層が—— 707 01:27:54,840 --> 01:27:57,960 地表の下で      かすかに動いています 708 01:28:20,560 --> 01:28:26,320 これは私とカティアと 火山が奏でる愛の物語だ 709 01:28:30,680 --> 01:28:36,280 これ以外の生き方なんて 考えられない 710 01:30:10,160 --> 01:30:13,360 1991年6月3日に 亡くなった—— 711 01:30:13,440 --> 01:30:17,960 雲仙普賢岳噴火の 犠牲者43名に捧ぐ 712 01:33:22,400 --> 01:33:24,400 日本版字幕 堀田 雅子