1 00:00:18,352 --> 00:00:19,686 夜 2 00:00:24,358 --> 00:00:26,193 闇の世界 3 00:00:27,110 --> 00:00:30,864 多くの生き物の活動を 覆い隠しています 4 00:00:33,534 --> 00:00:38,956 これまで その様子を カメラに収めるのは困難でした 5 00:00:41,792 --> 00:00:44,795 しかし 次世代の技術が登場し 6 00:00:44,920 --> 00:00:49,967 暗くても鮮明に 撮影できるようになりました 7 00:00:56,515 --> 00:01:00,811 “低照度カメラ”の感度は 人間の目の100倍 8 00:01:04,147 --> 00:01:07,025 闇に潜む美を捉えられます 9 00:01:09,278 --> 00:01:10,863 それも カラーで… 10 00:01:15,325 --> 00:01:17,202 異界のような光景 11 00:01:20,247 --> 00:01:25,002 夜の世界を力強く動き回る 生き物たち 12 00:01:27,963 --> 00:01:30,424 初めて撮影された行動 13 00:01:37,264 --> 00:01:44,104 地球の“最後の秘境”を訪れて 野生動物の真の姿に迫ります 14 00:01:46,648 --> 00:01:47,608 夜 15 00:01:50,402 --> 00:02:00,454 カラーで見る夜の世界 16 00:02:11,632 --> 00:02:16,678 夕暮れが迫る インドネシアの熱帯の島々 17 00:02:20,098 --> 00:02:24,770 ナレ︱ション トム・ヒドルストン 18 00:02:22,226 --> 00:02:24,770 その水面下には 19 00:02:26,605 --> 00:02:31,944 世界有数の手つかずの世界が 広がっています 20 00:02:39,868 --> 00:02:41,328 サンゴ礁です 21 00:02:47,000 --> 00:02:50,462 ここは生き物たちの宝庫 22 00:02:53,507 --> 00:02:58,846 サンゴ礁が占める割合は 世界の海底のわずか1%ですが 23 00:03:01,223 --> 00:03:05,811 3割を超える海の生き物の 暮らしを支えています 24 00:03:14,403 --> 00:03:18,198 活気に満ちた水中都市の サンゴ礁で 25 00:03:20,701 --> 00:03:24,955 多様な生き物たちが 食事をしています 26 00:03:29,459 --> 00:03:31,295 カンムリブダイは 27 00:03:31,420 --> 00:03:36,008 生きたサンゴを かじって食べます 28 00:03:41,972 --> 00:03:48,478 一方 タイマイが好むのは 軟らかいカイメン類です 29 00:03:59,072 --> 00:04:04,912 中には意外な場所で 食料を調達する生き物もいます 30 00:04:08,290 --> 00:04:12,794 ソメワケベラが提供するのは 特別なサービス 31 00:04:13,378 --> 00:04:18,425 他の魚の口の中を掃除して 食料を得るのです 32 00:04:29,603 --> 00:04:32,564 夕暮れ時はラッシュアワーで 33 00:04:33,398 --> 00:04:37,945 住人たちは日没前の光を 最大限に活用します 34 00:04:50,082 --> 00:04:56,088 しかし 慌ただしい世界にも 変化が訪れます 35 00:05:05,722 --> 00:05:08,809 サンゴ礁の別の一面は 36 00:05:11,520 --> 00:05:16,275 太陽が沈んだ後にだけ 現れるのです 37 00:05:28,871 --> 00:05:31,415 最新の撮影技術を使い 38 00:05:33,250 --> 00:05:36,378 知られざる領域を捉えます 39 00:05:37,462 --> 00:05:40,257 そこに映し出されるのは 40 00:05:41,633 --> 00:05:44,928 サンゴ礁の夜の世界です 41 00:05:58,942 --> 00:06:04,740 日が落ちると 小さな魚は 身を守るため集団で行動します 42 00:06:08,744 --> 00:06:14,124 夜の始まりは サンゴ礁で 最も危険な時間帯です 43 00:06:20,464 --> 00:06:22,132 ヤガラです 44 00:06:22,591 --> 00:06:26,845 体長は1メートル ライフルのような口を持つ–– 45 00:06:28,639 --> 00:06:31,850 サンゴ礁の夜の射撃手です 46 00:06:37,064 --> 00:06:40,609 光を感知する大きな目で 47 00:06:42,444 --> 00:06:45,072 魚の群れに狙いを定めます 48 00:06:50,160 --> 00:06:54,540 そして 正確な攻撃で 獲物を仕留めます 49 00:07:05,133 --> 00:07:10,013 獲物を捕らえるのに使うのは 細長い口です 50 00:07:15,936 --> 00:07:19,731 ヤガラが狙うのは 1度に1匹だけ 51 00:07:32,953 --> 00:07:37,082 獲物を のみ込んだ後に残るのは 52 00:07:39,710 --> 00:07:42,379 ウロコだけです 53 00:07:48,302 --> 00:07:52,848 夜のハンターは ヤガラだけではありません 54 00:07:58,061 --> 00:08:02,191 住人たちは 岩の隙間に身を隠します 55 00:08:02,941 --> 00:08:08,071 大きくて恐ろしい捕食者が やってくるからです 56 00:08:09,865 --> 00:08:14,620 捕食者たちは サンゴ礁に忍び寄ります 57 00:08:32,596 --> 00:08:39,352 ネムリブカが狙うのは サンゴ礁に居残る魚たちです 58 00:08:42,481 --> 00:08:45,150 別の捕食者も現れました 59 00:08:48,612 --> 00:08:53,867 小さな魚たちが恐れる アカエイです 60 00:08:55,994 --> 00:08:59,665 狙われる魚たちにとって夜は 61 00:09:00,999 --> 00:09:03,210 真っ暗闇です 62 00:09:05,546 --> 00:09:07,798 天敵の姿は見えません 63 00:09:10,634 --> 00:09:15,889 しかし 低照度カメラは 忍び寄る捕食者を映し出します 64 00:09:17,933 --> 00:09:20,686 アカエイは電気受容器を使い 65 00:09:21,770 --> 00:09:26,441 サンゴ礁に潜む 魚の気配を感じ取ります 66 00:09:28,694 --> 00:09:31,530 砂に埋まったカニも獲物です 67 00:09:36,368 --> 00:09:41,039 幅2メートルもある体で 獲物を覆います 68 00:09:47,671 --> 00:09:52,593 砂を巻き上げ 獲物を掘り出すアカエイ 69 00:09:59,808 --> 00:10:02,477 そして掃除機のような口で… 70 00:10:07,482 --> 00:10:09,026 獲物を丸のみに 71 00:10:28,420 --> 00:10:31,215 夜は捕食者だらけなので 72 00:10:34,551 --> 00:10:36,678 身を隠すのが得策です 73 00:10:48,732 --> 00:10:50,734 しかし 危険を顧みず 74 00:10:52,569 --> 00:10:58,408 今にも泳ぎ出そうとする 色鮮やかな魚がいます 75 00:11:02,829 --> 00:11:04,706 ニシキテグリです 76 00:11:07,876 --> 00:11:12,464 このオスは 恋の相手を探しに出かけます 77 00:11:15,926 --> 00:11:22,224 今夜は1時間以内に 8匹のメスに求愛する予定です 78 00:11:25,394 --> 00:11:31,316 しかし 用心して 移動しなくてはなりません 79 00:11:43,579 --> 00:11:46,582 オスは暗闇の中で周囲を偵察し 80 00:11:47,916 --> 00:11:52,171 夕食をとるメスを発見しました 81 00:11:52,337 --> 00:11:55,757 獲物はエビに似た カイアシ類です 82 00:11:58,969 --> 00:12:02,014 メスは恋の相手だけでなく 83 00:12:04,558 --> 00:12:07,603 食べ物も えり好みします 84 00:12:17,112 --> 00:12:21,867 メスの愛を勝ち得るため オスはヒレを広げ 85 00:12:23,577 --> 00:12:28,749 体を大きく そして魅力的に見せます 86 00:12:36,256 --> 00:12:38,258 メスの心を射止めました 87 00:12:48,352 --> 00:12:54,066 しかし 愛を交わすには より大胆な行動が必要です 88 00:12:56,151 --> 00:12:59,780 2匹は夜の闇に紛れ 寄り添います 89 00:13:05,202 --> 00:13:08,914 周りには卵を狙う 魚たちがいます 90 00:13:14,336 --> 00:13:18,757 2匹はサンゴ礁の上に 舞い上がり 91 00:13:19,967 --> 00:13:24,012 交尾のための 求愛ダンスを踊ります 92 00:13:40,529 --> 00:13:47,035 ダンスが終わると すぐにサンゴ礁に身を潜めます 93 00:13:49,872 --> 00:13:51,957 それも つかの間のこと 94 00:13:55,294 --> 00:13:58,505 さらに7匹のメスに 求愛するのです 95 00:14:00,465 --> 00:14:04,344 オスは再び暗闇へと泳ぎ出し 96 00:14:04,553 --> 00:14:08,182 次のダンスの相手を 探しにいきます 97 00:14:20,485 --> 00:14:22,362 夜が深まると 98 00:14:23,113 --> 00:14:27,618 暗闇に幻想的な光景が 浮かび上がります 99 00:14:33,207 --> 00:14:38,754 この現象はサンゴ礁に 大きな変化をもたらします 100 00:14:43,091 --> 00:14:49,097 海の底から大群で現れる 極小の生き物たちは 101 00:14:51,433 --> 00:14:54,728 異界からの来訪者のようです 102 00:14:58,815 --> 00:15:03,362 地球上で最大規模の 生き物の大移動は 103 00:15:03,904 --> 00:15:07,866 毎夜 海で発生しています 104 00:15:11,036 --> 00:15:14,414 10億トン以上の プランクトンが 105 00:15:14,706 --> 00:15:19,336 食事のために 水面近くに浮上するのです 106 00:15:28,762 --> 00:15:32,933 米粒ほどの大きさの種もいる プランクトンは 107 00:15:34,101 --> 00:15:36,979 海における活力の源です 108 00:15:42,150 --> 00:15:46,405 自ら光を放ち 独創的な方法で移動し 109 00:15:49,950 --> 00:15:54,037 真っ暗な海に浮かぶ食料を 得ています 110 00:16:16,226 --> 00:16:20,314 いくつかの種は 一生 この生活を続けます 111 00:16:23,567 --> 00:16:26,904 一方 シャコの幼生などは 112 00:16:27,029 --> 00:16:31,658 誕生直後の段階だけ 浮遊生活を送ります 113 00:16:31,992 --> 00:16:35,996 成長すると サンゴ礁に戻るのです 114 00:16:58,477 --> 00:17:03,524 プランクトンが押し寄せると サンゴ礁には 115 00:17:04,066 --> 00:17:07,486 魔法のような 変化がもたらされます 116 00:17:13,367 --> 00:17:17,412 岩のような物体が 命を花開かせるのです 117 00:17:43,480 --> 00:17:49,862 サンゴ礁は小さな個体が 群体となり形成されたものです 118 00:17:51,446 --> 00:17:55,534 日中は太陽から エネルギーを得ます 119 00:17:58,036 --> 00:17:59,454 一方 夜は 120 00:18:01,999 --> 00:18:06,086 触手を広げ ハンターとなります 121 00:18:07,629 --> 00:18:11,216 極めて小さな夜の世界です 122 00:18:18,557 --> 00:18:21,226 生き物が中に迷い込むと 123 00:18:22,686 --> 00:18:27,399 色鮮やかな庭は “死の壁”へと姿を変えます 124 00:18:27,941 --> 00:18:30,319 無数の口を開くのです 125 00:18:52,549 --> 00:18:54,718 夜に開かれる饗宴きょうえんは 126 00:18:54,843 --> 00:19:00,015 サンゴ礁の成長に必要な 栄養をもたらします 127 00:19:03,560 --> 00:19:08,440 海水温の上昇と闘う サンゴ礁にとって 128 00:19:08,982 --> 00:19:14,071 夜の食事は以前にも増して 重要になりました 129 00:19:33,882 --> 00:19:39,805 プランクトンを食べるのは サンゴだけではありません 130 00:19:43,058 --> 00:19:49,356 大きな生き物も この饗宴を目当てに集まります 131 00:19:53,694 --> 00:20:00,117 体の幅が4メートルもある マンタが姿を現しました 132 00:20:02,619 --> 00:20:04,496 通常は単独で行動します 133 00:20:05,706 --> 00:20:10,252 しかし プランクトンが 大量に発生する熱帯の海では 134 00:20:10,377 --> 00:20:13,213 仲間と集団を形成します 135 00:20:18,260 --> 00:20:22,431 1トンの巨体を持つ マンタの主食は 136 00:20:23,098 --> 00:20:29,605 意外にも 夜に浮上する 小さなプランクトンです 137 00:20:37,487 --> 00:20:42,743 頭にあるヒレで口に プランクトンを流し込みます 138 00:20:48,457 --> 00:20:51,293 獲物は濾こして食べるのです 139 00:21:01,220 --> 00:21:03,639 真夜中になると 140 00:21:04,473 --> 00:21:10,103 獲物の豊富な海で 狩りの腕前を発揮します 141 00:21:35,796 --> 00:21:38,966 体を何度も回転させながら 142 00:21:39,550 --> 00:21:43,262 プランクトンの群れに 狙いを定めます 143 00:21:44,429 --> 00:21:47,140 そして思う存分食べます 144 00:22:17,588 --> 00:22:23,051 マンタの脳は魚類の中で 最大だと分かっています 145 00:22:24,761 --> 00:22:29,308 しかし 獲物を求めて 長距離を移動し 146 00:22:29,433 --> 00:22:34,646 見事に探し出す方法は 今も謎のままです 147 00:22:42,821 --> 00:22:45,157 謎は1つではありません 148 00:22:45,699 --> 00:22:50,746 夜の海には他にも 数多くの謎が眠っています 149 00:23:06,345 --> 00:23:10,098 夜の世界 150 00:23:10,098 --> 00:23:13,894 夜の世界 撮影秘話 151 00:23:15,312 --> 00:23:18,690 サンゴ礁の夜の一幕を 捉えるため 152 00:23:18,815 --> 00:23:24,363 世界有数の手つかずの海で チームは撮影に臨みました 153 00:23:28,909 --> 00:23:31,203 カメラマンの デヴィッド・ライカートにとり 154 00:23:31,328 --> 00:23:36,041 最大の難関は 夜間の狩りの撮影でした 155 00:23:38,418 --> 00:23:43,382 サメなどの捕食者は 夜 活発に活動します 156 00:23:45,801 --> 00:23:49,763 安全に接近するのは 簡単ではありません 157 00:23:53,183 --> 00:23:55,394 夜の撮影は別世界です 158 00:23:59,857 --> 00:24:02,693 何が現れるか分かりません 159 00:24:04,361 --> 00:24:06,947 カメラマン デヴィッド・ライカ︱ト 160 00:24:05,153 --> 00:24:06,947 では 海の中へ 161 00:24:17,833 --> 00:24:21,336 撮影を行ったのは満月の頃 162 00:24:21,670 --> 00:24:24,381 強い潮流で 食料がサンゴ礁に集まり 163 00:24:25,174 --> 00:24:28,010 捕食者が活発になるからです 164 00:24:32,181 --> 00:24:34,766 しかし 大きな問題が 165 00:24:35,475 --> 00:24:38,437 こちら船上 潮流の状態はどう? 166 00:24:40,105 --> 00:24:41,106 “よくない” 167 00:24:41,690 --> 00:24:43,483 “流れが強すぎる” 168 00:24:44,776 --> 00:24:47,321 “これより浮上する” 169 00:24:51,825 --> 00:24:53,952 潮の流れが強すぎて 170 00:24:54,203 --> 00:24:57,789 同じ場所に とどまれません 171 00:24:57,956 --> 00:24:59,583 ひどい状態だ 172 00:25:03,337 --> 00:25:07,132 流れが激しいと 生き物は活発になります 173 00:25:07,549 --> 00:25:08,800 まだ強すぎる 174 00:25:08,926 --> 00:25:11,512 でも 我々には危険です 175 00:25:11,762 --> 00:25:13,055 過酷な挑戦です 176 00:25:16,642 --> 00:25:22,773 満月が欠け始めると 潮流は穏やかになります 177 00:25:24,608 --> 00:25:29,905 潜水は楽でも 生き物は姿を消してしまいます 178 00:25:33,992 --> 00:25:36,161 流れが止まって 179 00:25:36,286 --> 00:25:39,957 生き物たちは 縄張りに戻ったようだ 180 00:25:42,626 --> 00:25:45,420 チームは最適な状態を模索し 181 00:25:45,546 --> 00:25:48,340 ある時間帯に焦点を定めます 182 00:25:49,383 --> 00:25:52,344 満潮と干潮の間の時間帯です 183 00:26:00,811 --> 00:26:06,483 日が沈む午後6時頃に 撮影に挑んで失敗したら 184 00:26:06,608 --> 00:26:11,196 次は翌朝の午前4時に 潜らなくてはなりません 185 00:26:11,321 --> 00:26:18,161 わずか40分の潜水のために 一晩待ったこともありました 186 00:26:20,497 --> 00:26:21,915 お茶を飲もう 187 00:26:24,960 --> 00:26:27,921 チームは睡眠不足と闘い続け 188 00:26:28,922 --> 00:26:35,554 ついに生き物たちの 知られざる行動の撮影に成功 189 00:26:36,263 --> 00:26:39,766 見たことのない ヤガラの捕食方法です 190 00:26:40,684 --> 00:26:42,811 貴重な瞬間ですね 191 00:26:47,316 --> 00:26:51,653 捕食者は独自のやり方で 獲物に忍び寄ります 192 00:26:53,572 --> 00:26:58,202 ウツボがサンゴ礁に 狩りをしに来ました 193 00:26:58,368 --> 00:27:01,038 ウツボはサンゴ礁の上から 194 00:27:02,289 --> 00:27:05,209 奥に続く穴を探しています 195 00:27:13,050 --> 00:27:16,053 小さな魚が隠れているからです 196 00:27:17,304 --> 00:27:18,514 見つけた 197 00:27:23,101 --> 00:27:24,645 よし やった 198 00:27:28,440 --> 00:27:31,693 カメラの前で 獲物を仕留めました 199 00:27:36,532 --> 00:27:39,159 サンゴ礁は にぎやかです 200 00:27:39,952 --> 00:27:46,041 夜になると 昼間とは 異なる姿を見せてくれます 201 00:27:50,337 --> 00:27:53,465 チームは水中の不思議な世界を 202 00:27:54,132 --> 00:27:57,970 見事 カメラに 収めることができました 203 00:28:45,058 --> 00:28:49,062 日本語字幕 中村 真佐美