1 00:00:06,720 --> 00:00:09,760 人間はいつか死にますが 2 00:00:09,880 --> 00:00:11,880 今日だとは思いません 3 00:00:14,720 --> 00:00:19,360 いつだって明日や来月   来年があると思っています 4 00:00:19,800 --> 00:00:24,560 それが突然       当然ではなくなりました 5 00:00:27,760 --> 00:00:29,200 機長が告げます 6 00:00:29,320 --> 00:00:31,560 〝こちら機長    衝撃に備えよ〞 7 00:00:33,640 --> 00:00:38,480 その放送を実際に聞いたら 多くは亡くなります 8 00:00:40,320 --> 00:00:42,280 赤ん坊を預かりました 9 00:00:48,120 --> 00:00:51,080 叫び続けました  〝行け 止まるな〞 10 00:00:51,200 --> 00:00:52,720 〝飛行機を降りろ〞 11 00:00:55,840 --> 00:00:58,720 実感しました  〝これは現実だ〞 12 00:00:58,960 --> 00:01:00,360 〝もうすぐ死ぬ〞 13 00:01:19,880 --> 00:01:22,560 私は川辺に立っていました 14 00:01:26,960 --> 00:01:33,280 隣には知らない男性がいて   飛行機が離陸するのを見ました 15 00:01:35,800 --> 00:01:38,120 エンジンから煙が 16 00:01:40,080 --> 00:01:43,960 〝あれは何?〞と聞くと  彼は〝知らない〞と 17 00:01:46,560 --> 00:01:52,760 飛行機は水平線のかなたに消え その後 爆発がありました 18 00:01:57,600 --> 00:01:58,760 夢でした 19 00:02:01,480 --> 00:02:06,960 午後の便を予約していましたが 夢のことが忘れられません 20 00:02:07,120 --> 00:02:10,160 乗るべきかどうか 迷いました 21 00:02:12,080 --> 00:02:14,920 係の人が      券に手を伸ばします 22 00:02:21,840 --> 00:02:22,800 渡せません 23 00:02:22,920 --> 00:02:24,160 ごめんなさい 24 00:02:24,280 --> 00:02:26,760 夢におびえていました 25 00:02:28,720 --> 00:02:32,560 引き返して車に乗り 家に帰りました 26 00:02:35,320 --> 00:02:37,560 その夜 ニュースを見ました 27 00:02:37,680 --> 00:02:42,280 事故があったはずだと 確信していたんです 28 00:02:44,400 --> 00:02:45,200 事故はなく 29 00:02:45,760 --> 00:02:49,240 ただの思い込みだと 安心しました 30 00:02:50,000 --> 00:02:54,040 そして1月15日 私は家を出て 31 00:02:54,120 --> 00:02:57,280 パム・シーグル 32 00:02:54,720 --> 00:02:56,640 ラガーディア空港へ 33 00:02:58,800 --> 00:03:02,160 月に一度 ニューヨークへ 34 00:03:00,280 --> 00:03:03,760 アイリーン・ シュレファー 35 00:03:02,600 --> 00:03:04,800 乗るのは決まって 5時の便です 36 00:03:07,520 --> 00:03:11,400 でも その日は      もっと早い便で行こうと― 37 00:03:11,960 --> 00:03:17,040 2時45分の便を予約したのを 忘れていました 38 00:03:17,360 --> 00:03:21,200 同僚の1人が  私に言いました 39 00:03:21,320 --> 00:03:24,120 〝空港に行かなくていいの?〞 40 00:03:25,840 --> 00:03:29,600 タクシーをつかまえて 言いました 41 00:03:29,720 --> 00:03:33,120 〝ラガーディア空港まで  20分で行って〞 42 00:03:33,280 --> 00:03:36,120 〝ただし事故は    起こさないでね〞 43 00:03:41,240 --> 00:03:46,480 2009年1月       米国経済は最悪の状態でした 44 00:03:46,920 --> 00:03:50,480 バリー・レナード 45 00:03:46,920 --> 00:03:50,640 誰もが 困難な時期を過ごし 46 00:03:51,000 --> 00:03:54,040 国の将来を 案じていました 47 00:03:55,160 --> 00:03:57,560 天気の影響が心配でした 48 00:03:57,680 --> 00:04:01,960 遅延や欠航がないことを 祈りました 49 00:04:03,560 --> 00:04:04,440 すみません 50 00:04:04,560 --> 00:04:05,480 大丈夫 51 00:04:06,400 --> 00:04:08,880 夫が搭乗手続きをする間 52 00:04:09,000 --> 00:04:12,200 席がどうなるか 心配でした 53 00:04:11,000 --> 00:04:14,520 テス・ソーサ 54 00:04:12,320 --> 00:04:14,920 どうしても家族全員で 55 00:04:15,040 --> 00:04:17,480 一緒に       座りたかったんです 56 00:04:21,560 --> 00:04:22,880 外は寒いな 57 00:04:24,000 --> 00:04:26,920 シャーロット行きは 旅の最後でした 58 00:04:27,520 --> 00:04:31,200 遅れの原因となった 雲や雪が去り 59 00:04:27,520 --> 00:04:31,200 ジェフ・スカイルズ 副操縦士 60 00:04:31,560 --> 00:04:34,160 ニューヨークは晴天でした 61 00:04:34,520 --> 00:04:36,520 機長とは初仕事です 62 00:04:36,640 --> 00:04:40,680 機長は30年 私は24年 勤めていましたが 63 00:04:40,800 --> 00:04:43,880 顔すら知りませんでした 64 00:04:44,360 --> 00:04:49,120 彼はプロ意識が高く    独特の雰囲気がありました 65 00:04:50,440 --> 00:04:54,720 搭乗して          席が離れていると知りました 66 00:04:55,200 --> 00:04:59,280 ダミアンを抱えたテスは 19Eの席へ 67 00:04:55,200 --> 00:05:00,840 マーティン・ソーサ 68 00:04:59,400 --> 00:05:02,600 私の席は23B 69 00:05:02,720 --> 00:05:06,400 ソフィアは23Eで   私と通路を隔てた一番右 70 00:05:06,920 --> 00:05:08,280 一緒じゃないの? 71 00:05:08,920 --> 00:05:10,520 その時 私は― 72 00:05:10,720 --> 00:05:17,360 母親として 子供や夫と一緒に 座る権利があると思いました 73 00:05:19,200 --> 00:05:25,240 だから席を変えるよう  しつこく言い張りました 74 00:05:25,560 --> 00:05:27,800 すみません 席を変えて 75 00:05:27,920 --> 00:05:29,280 娘と一緒に 76 00:05:29,480 --> 00:05:32,720 まず座って     離陸後に調整します 77 00:05:33,000 --> 00:05:34,600 娘はまだ4歳なの 78 00:05:35,800 --> 00:05:37,480 私が代わります 79 00:05:38,320 --> 00:05:39,200 どうも 80 00:05:39,280 --> 00:05:41,400 とても助かりました 81 00:05:41,600 --> 00:05:47,720 席の変更が その後      娘の命を救う結果となりました 82 00:05:49,320 --> 00:05:53,480 母親は落ち着きがなく 注意が必要でした 83 00:05:53,600 --> 00:05:55,560 〝席についてください〞 84 00:05:55,680 --> 00:05:57,640 ベルトを着用させます 85 00:05:57,760 --> 00:06:00,800 でも よくあることです 86 00:05:57,760 --> 00:06:01,200 ドリーン・ウェルシュ 客室乗務員 87 00:06:00,920 --> 00:06:03,560 家族が1組なんて 楽な方です 88 00:06:05,680 --> 00:06:09,400 その時 不安を感じ始めました 89 00:06:10,840 --> 00:06:16,000 実際に立ち上がって     飛行機を降りようとしました 90 00:06:19,440 --> 00:06:20,520 降りるわ 91 00:06:22,680 --> 00:06:23,520 通して 92 00:06:25,080 --> 00:06:27,840 乗務員が言いました 〝座って〞 93 00:06:27,960 --> 00:06:29,400 〝座ってください〞 94 00:06:31,600 --> 00:06:35,400 私が席に座ると   右側に座った男性が 95 00:06:35,600 --> 00:06:40,800 気を遣って         優しく声をかけてくれました 96 00:06:42,240 --> 00:06:45,920 手伝いましょうか? 私にも5歳の子が 97 00:06:48,200 --> 00:06:51,000 襟に国旗を付けていました 98 00:06:51,400 --> 00:06:56,760 髪もきちんと整えていて  とても落ち着いた人でした 99 00:06:57,160 --> 00:07:00,080 大丈夫です     お気遣いありがとう 100 00:07:05,640 --> 00:07:07,440 1549便 誘導を要請 101 00:07:07,560 --> 00:07:12,680 誘導路FBを経由し     Eの手前で約3分 待機せよ 102 00:07:13,800 --> 00:07:17,240 その日の勤務は 3~11時でした 103 00:07:14,680 --> 00:07:17,240 パトリック・ハートン 管制官 104 00:07:18,240 --> 00:07:23,960 引き継ぎを受け 機械を設定し 周波数を合わせると 105 00:07:24,120 --> 00:07:25,880 仕事を始めました 106 00:07:27,080 --> 00:07:29,120 カクタス1549 4番滑走路へ 107 00:07:29,240 --> 00:07:31,680 カクタス1549 離陸を許可 108 00:07:31,800 --> 00:07:34,520 カクタス1549 離陸します 109 00:07:34,680 --> 00:07:37,760 機長は滑走路に入り 言いました 110 00:07:38,040 --> 00:07:39,440 〝君が操縦を〞 111 00:07:39,600 --> 00:07:40,640 操縦します 112 00:07:40,800 --> 00:07:42,960 加速を始めました 113 00:07:45,920 --> 00:07:47,960 機長が速度を読みます 114 00:07:48,080 --> 00:07:50,480 80 V1 引き起こし 115 00:07:50,600 --> 00:07:53,480 操縦桿を引き 滑走路を後に 116 00:08:03,240 --> 00:08:08,160 飛行機事故の記事を   読んだことがありました 117 00:08:08,280 --> 00:08:11,880 多くは離陸後      90秒以内に起こります 118 00:08:12,200 --> 00:08:15,760 それで90秒数える 習慣がつきました 119 00:08:15,880 --> 00:08:17,520 安心するんです 120 00:08:20,280 --> 00:08:25,600 私は数え始めました 〝1秒 2秒 3秒〞 121 00:08:25,720 --> 00:08:28,200 4秒 5秒 122 00:08:28,560 --> 00:08:34,800 突然止まって 周りを見ました 〝いくつまで数えたかしら?〞 123 00:08:35,600 --> 00:08:39,120 82秒 83秒 124 00:08:40,840 --> 00:08:45,680 そして思いました     〝よかった あと少しだわ〞 125 00:08:45,800 --> 00:08:46,640 すると… 126 00:08:49,440 --> 00:08:52,680 機体は激しく揺れていました 127 00:08:52,800 --> 00:08:56,600 状況を理解できませんでした 128 00:08:56,720 --> 00:09:01,440 上空900メートルで   何が起こり得るというのか 129 00:09:04,680 --> 00:09:05,880 大丈夫です 130 00:09:09,320 --> 00:09:12,120 その直後 においがしました 131 00:09:12,400 --> 00:09:17,080 そのにおいは例えて言うなら 電気による火災のようでした 132 00:09:23,280 --> 00:09:26,120 インターホンを手にしました 133 00:09:29,880 --> 00:09:32,840 つながらないのは 初めてでした 134 00:09:37,200 --> 00:09:38,000 大丈夫? 135 00:09:38,120 --> 00:09:39,400 立たないで 136 00:09:40,000 --> 00:09:42,960 客室を前に進みながら 137 00:09:43,080 --> 00:09:46,600 棚に触れ       熱くないか調べました 138 00:09:46,880 --> 00:09:48,360 座ってください 139 00:09:52,680 --> 00:09:56,880 隣の席の人は     窓の外を見ていました 140 00:09:57,400 --> 00:09:59,600 私を見て言いました 141 00:09:59,840 --> 00:10:03,200 〝エンジンが落ちそうです〞 142 00:10:03,600 --> 00:10:08,120 シートベルトを外して 窓に近づきました 143 00:10:12,120 --> 00:10:14,440 私は〝いい話と悪い話が〞と 144 00:10:14,640 --> 00:10:18,840 〝エンジンは落ちない   でも動いてもいない〞 145 00:10:30,120 --> 00:10:32,720 飛行機にはよく乗りますが 146 00:10:32,840 --> 00:10:36,400 ブラッド・  ウェンツェル 147 00:10:32,840 --> 00:10:37,280 あんな音を聞いたのは 初めてでした 148 00:10:37,600 --> 00:10:39,880 左にある窓を見ると 149 00:10:40,160 --> 00:10:43,160 エンジンから    火花が散っています 150 00:10:47,440 --> 00:10:49,280 突然 止まりました 151 00:10:51,680 --> 00:10:53,360 とても静かでした 152 00:10:55,680 --> 00:10:57,080 何も聞こえない 153 00:10:59,120 --> 00:11:02,520 上空約900メートルに 到達した時 154 00:11:02,640 --> 00:11:06,200 右上に鳥の群れが 見えました 155 00:11:02,640 --> 00:11:06,200 ジェフ・スカイルズ 副操縦士 156 00:11:09,960 --> 00:11:15,360 あまりに近過ぎて     回避は不可能に思えました 157 00:11:17,520 --> 00:11:22,000 鳥は機体の下を      通り過ぎるかに見えました 158 00:11:25,280 --> 00:11:28,400 途端に両エンジンが 推力を失い 159 00:11:28,520 --> 00:11:34,680 機体は下降を始め 急激に 速度を落としていきました 160 00:11:35,480 --> 00:11:40,560 その瞬間 ショックのあまり 頭が真っ白になり 161 00:11:40,680 --> 00:11:42,800 目がかすみました 162 00:11:44,160 --> 00:11:45,400 エンジン始動 163 00:11:45,560 --> 00:11:48,400 機長が行動を開始します 164 00:11:49,000 --> 00:11:50,840 オン オフ 165 00:11:50,960 --> 00:11:53,560 補助動力装置APUを始動させます 166 00:11:53,680 --> 00:11:54,520 APU 167 00:11:54,600 --> 00:11:57,320 こう言って     操縦を代わりました 168 00:11:57,440 --> 00:11:58,560 〝私が操縦する〞 169 00:11:58,640 --> 00:11:59,560 操縦交代 170 00:11:59,640 --> 00:12:03,520 機首を下げ     滑降飛行を試みます 171 00:12:04,880 --> 00:12:08,400 落下を利用し       速度を出すしかありません 172 00:12:14,760 --> 00:12:18,120 地上に真っ逆さまだと 覚悟しました 173 00:12:20,120 --> 00:12:21,200 思いました 174 00:12:21,960 --> 00:12:27,200 アイリーン・ シュレファー 175 00:12:22,680 --> 00:12:27,200 〝夫に電話しなくちゃ  もう死ぬんだから〞 176 00:12:29,040 --> 00:12:30,720 私は洗車の最中で 177 00:12:30,840 --> 00:12:35,640 妻は飛行機が故障したと おびえていました 178 00:12:32,600 --> 00:12:35,640 デヴィッド・ シュレファー 179 00:12:37,760 --> 00:12:39,720 きっと大丈夫だよ 180 00:12:39,920 --> 00:12:42,400 〝墜落する〞と言いました 181 00:12:42,640 --> 00:12:48,320 〝離陸後に何かにぶつかって  機体から火が出てる〞 182 00:12:48,440 --> 00:12:51,000 火が出てるだって? 183 00:12:51,120 --> 00:12:54,000 深刻な事態だと気づきました 184 00:12:54,440 --> 00:12:58,480 緊急事態だというのに 何もできません 185 00:12:58,600 --> 00:13:04,320 妻が落ち着くよう話を聞き 状況を理解するだけです 186 00:13:04,720 --> 00:13:07,080 アイリーン 聞こえるか? 187 00:13:07,640 --> 00:13:08,520 アイリーン 188 00:13:09,280 --> 00:13:11,000 電話が切れました 189 00:13:15,000 --> 00:13:18,640 その前日       妻と私は乳がん検査の 190 00:13:18,760 --> 00:13:20,880 結果を待っていました 191 00:13:22,320 --> 00:13:27,360 結果を待つ間       不安でたまりませんでした 192 00:13:27,480 --> 00:13:29,880 私は神に祈りました 193 00:13:30,200 --> 00:13:33,400 〝連れていくのなら  妻でなく私を〞 194 00:13:30,200 --> 00:13:33,680 バリー・レナード 195 00:13:34,760 --> 00:13:37,640 その後 電話が鳴りました 196 00:13:42,080 --> 00:13:44,800 妻に問題はありませんでした 197 00:13:44,960 --> 00:13:47,000 愛してるよ じゃあ 198 00:14:00,520 --> 00:14:03,960 妻の身代わりになる約束が 199 00:14:04,080 --> 00:14:07,040 果たされるのならそれでいい 200 00:14:08,160 --> 00:14:11,400 エンジン始動   燃料制御器 作動 201 00:14:11,560 --> 00:14:14,440 エンジンの再始動を 担いました 202 00:14:14,640 --> 00:14:18,440 ヘッドホンをしていても 点火の音が 203 00:14:18,560 --> 00:14:21,240 聞こえるほど静かでした 204 00:14:21,360 --> 00:14:22,640 APU始動 205 00:14:25,040 --> 00:14:28,360 エンジンの再始動を 諦めました 206 00:14:28,480 --> 00:14:30,000 エンジン始動 207 00:14:30,120 --> 00:14:32,000 完全に壊れていました 208 00:14:32,160 --> 00:14:33,720 APU始動 209 00:14:34,320 --> 00:14:39,920 不時着するしかない状況の中 我々は場所を探しました 210 00:14:40,040 --> 00:14:44,040 しかし見えるのは    道路や家 高層ビルだけ 211 00:14:44,160 --> 00:14:47,000 ニューヨークに   空き地はありません 212 00:14:48,320 --> 00:14:52,320 カクタス1549        1万5000フィートに上昇せよ 213 00:14:52,440 --> 00:14:55,840 パトリック・ハートン 管制官 214 00:14:52,440 --> 00:14:56,680 カクタス1549に 西への旋回を指示し 215 00:14:56,800 --> 00:15:00,320 カクタス1549 左旋回 270度 216 00:15:00,440 --> 00:15:02,160 通信を終えました 217 00:15:03,320 --> 00:15:06,680 マイクを切った後 声が聞こえました 218 00:15:06,800 --> 00:15:08,360 カクタス1549 219 00:15:06,800 --> 00:15:09,640 実際の音声 220 00:15:08,480 --> 00:15:11,000 鳥の衝突で   両エンジン停止 221 00:15:14,840 --> 00:15:20,680 途端に心臓の鼓動が早まり 胸から飛び出しそうでした 222 00:15:22,760 --> 00:15:26,200 機長は管制官と  話していましたが 223 00:15:26,320 --> 00:15:31,880 高度が低かったため      空港までもたないと思いました 224 00:15:32,080 --> 00:15:35,880 カクタス1549    31番滑走路が利用可能 225 00:15:36,520 --> 00:15:37,360 無理だ 226 00:15:38,640 --> 00:15:39,800 では どうする? 227 00:15:39,920 --> 00:15:44,960 テターボロ空港への  着陸を勧められました 228 00:15:45,080 --> 00:15:49,600 右手にテターボロ空港がある 着陸するか? 229 00:15:53,200 --> 00:15:58,320 機長が返事をする前に   こう言いそうになりました 230 00:15:58,600 --> 00:16:01,560 〝無理ですよね?〞  すると彼は 231 00:16:02,000 --> 00:16:04,400 無理だ ハドソン川へ 232 00:16:06,440 --> 00:16:10,200 辺りは不気味なほど 静かでした 233 00:16:10,320 --> 00:16:14,680 誰もが現実なのか    確かめているようでした 234 00:16:17,640 --> 00:16:21,760 警報装置が次々と 作動していました 235 00:16:21,880 --> 00:16:25,440 スピーカーの声は 〝衝突注意〞や 236 00:16:27,080 --> 00:16:30,440 〝ギアを下ろせ      フラップを下げろ〞と 237 00:16:31,560 --> 00:16:34,920 警報ベルが     絶え間なく鳴ります 238 00:16:38,440 --> 00:16:42,160 そんな中 機長は   冷静に乗客に告げます 239 00:16:42,280 --> 00:16:45,480 〝こちら機長 衝撃に備えよ〞 240 00:16:46,120 --> 00:16:48,720 こちら機長 衝撃に備えよ 241 00:16:48,840 --> 00:16:52,440 機長が言ったのは   〝衝撃に備えよ〞でした 242 00:16:52,560 --> 00:16:55,640 落ちるのだと 実感しました 243 00:16:52,560 --> 00:16:56,120 マーティン・ソーサ 244 00:16:56,600 --> 00:17:01,000 どうなるか分かりません 無事に着陸するか 245 00:17:01,120 --> 00:17:05,480 それとも墜落して  バラバラになるのか 246 00:17:05,880 --> 00:17:09,320 娘のシートベルトを 固く締め 247 00:17:09,480 --> 00:17:13,160 上から覆いかぶさりました 248 00:17:13,280 --> 00:17:15,760 衝撃から守ろうとしたんです 249 00:17:15,880 --> 00:17:19,040 それしかできませんでした 250 00:17:25,760 --> 00:17:27,160 すみません 251 00:17:27,960 --> 00:17:32,680 隣の人が息子を抱くと言うので お願いしました 252 00:17:33,320 --> 00:17:34,960 男性の腕にいる方が 253 00:17:35,080 --> 00:17:38,920 生存の確率が高いと 思いました 254 00:17:35,080 --> 00:17:38,920 テス・ソーサ 255 00:17:39,040 --> 00:17:40,400 大丈夫 256 00:17:41,840 --> 00:17:43,240 何とかなる 257 00:17:44,680 --> 00:17:47,800 その時 口から出た言葉は 258 00:17:47,920 --> 00:17:50,920 考えとは別のものでした 259 00:17:47,920 --> 00:17:50,920 ジム・ウィテカー 260 00:17:51,800 --> 00:17:54,440 実は予定外の搭乗でした 261 00:17:57,240 --> 00:18:02,440 私はアメフトの球場に関わる 仕事をしていました 262 00:18:03,400 --> 00:18:05,480 会議が早く終わり 263 00:18:07,480 --> 00:18:13,200 ラガーディア空港に直行すると カウンターで聞きました 264 00:18:13,640 --> 00:18:15,080 〝次の便に空席は?〞 265 00:18:16,200 --> 00:18:19,000 恐らく運命なのでしょう 266 00:18:19,120 --> 00:18:21,640 一席だけ空いていました 267 00:18:23,760 --> 00:18:26,600 こちら機長 衝撃に備えよ 268 00:18:27,160 --> 00:18:30,440 その放送を実際に聞いたら 269 00:18:30,800 --> 00:18:32,840 多くは亡くなります 270 00:18:33,640 --> 00:18:38,800 〝あなたは死にます〞と      丁寧に言われるようなものです 271 00:18:39,640 --> 00:18:43,640 私の役目は        不時着時の姿勢の指示です 272 00:18:44,080 --> 00:18:45,360 頭を下げて 273 00:18:45,480 --> 00:18:49,080 身構えて 頭を下げて 姿勢を低く 274 00:18:49,240 --> 00:18:55,000 その瞬間 自分が死ぬという 現実を受け入れました 275 00:18:55,360 --> 00:18:58,200 それから後は 276 00:18:55,360 --> 00:19:00,840 ドリーン・ウェルシュ 客室乗務員 277 00:18:58,480 --> 00:19:01,600 途方もない 悲しみに襲われました 278 00:19:01,920 --> 00:19:05,360 あんな思いは   二度とごめんです 279 00:19:07,320 --> 00:19:12,440 通話は2度切れ 3度目に 機長の放送がありました 280 00:19:12,560 --> 00:19:14,080 〝衝撃に備えよ〞 281 00:19:16,440 --> 00:19:19,920 私は 〝墜落するわ〞と言い 282 00:19:17,680 --> 00:19:21,240 アイリーン・ シュレファー 283 00:19:20,440 --> 00:19:22,520 別れを言いました 284 00:19:24,400 --> 00:19:29,000 妻の最後の言葉を聞き 私も愛を伝えました 285 00:19:27,160 --> 00:19:30,760 デヴィッド・ シュレファー 286 00:19:29,120 --> 00:19:33,760 みんなを頼むと言われ 本当にショックでした 287 00:19:35,920 --> 00:19:39,080 実際の音声 288 00:19:36,200 --> 00:19:39,080 リンカーントンネルの 北2.4キロ 289 00:19:39,200 --> 00:19:41,240 高度は       270メートル以下 290 00:19:41,360 --> 00:19:44,120 レーダー上にあるが 高度が低い 291 00:19:44,240 --> 00:19:46,240 まだ飛行中か? 292 00:19:46,600 --> 00:19:47,560 飛行中です 293 00:19:47,760 --> 00:19:49,000 事故が起こる 294 00:19:49,120 --> 00:19:52,400 高度は次第に下がりました 295 00:19:54,840 --> 00:19:57,200 ついに管制官が一番― 296 00:19:54,840 --> 00:19:58,360 パトリック・ハートン 管制官 297 00:19:57,320 --> 00:20:00,040 避けたい セリフを言いました 298 00:20:00,160 --> 00:20:02,200 〝レーダーから消失〞 299 00:20:02,320 --> 00:20:06,920 普通なら          墜落の直前に言うセリフです 300 00:20:07,440 --> 00:20:10,640 カクタス1549 レーダーから消失 301 00:20:11,840 --> 00:20:16,000 ハドソン川の        上空270メートルを飛行中 302 00:20:16,360 --> 00:20:19,400 川に向かって    下降しているようだ 303 00:20:19,520 --> 00:20:24,800 信じられないという思いで 胃が痛くなりました 304 00:20:26,240 --> 00:20:28,560 近年まれに見る― 305 00:20:28,680 --> 00:20:32,960 悲惨な飛行機事故に  関わったと思いました 306 00:20:33,200 --> 00:20:37,440 ハドソン川へ行くと 言っていました 307 00:20:44,760 --> 00:20:49,120 ジョージ・ワシントン橋が 窓から見えました 308 00:20:52,640 --> 00:20:54,480 すれすれでした 309 00:20:54,720 --> 00:20:55,640 それから 310 00:20:54,720 --> 00:20:58,240 ブラッド・  ウェンツェル 311 00:20:57,080 --> 00:21:00,800 機体は徐々に 勢いを増していき 312 00:21:01,480 --> 00:21:06,880 スピードを上げながら    下へ下へと落ちていきました 313 00:21:08,800 --> 00:21:12,920 〝奇跡はない 死ぬんだ〞と  思いました 314 00:21:17,000 --> 00:21:18,840 娘を思いました 315 00:21:21,200 --> 00:21:24,560 マンハッタンの    高層ビルより低くなり 316 00:21:24,680 --> 00:21:27,680 川に落ちると思いました 317 00:21:29,280 --> 00:21:34,400 機体は壊れても        生き残れると確信していました 318 00:21:35,840 --> 00:21:40,040 どうやって脱出するかを 考え始めました 319 00:21:40,800 --> 00:21:43,240 どのドアから出るのか 320 00:21:43,680 --> 00:21:48,320 火災が発生し 金属が散乱するでしょう 321 00:21:47,680 --> 00:21:51,200 パム・シーグル 322 00:21:48,440 --> 00:21:52,160 水中の暗闇にいる 自分が見えたのです 323 00:21:56,160 --> 00:22:00,320 前の椅子を持ち     頭を下にして待ちました 324 00:22:00,440 --> 00:22:03,240 ジェフ・スカイルズ 副操縦士 325 00:22:00,440 --> 00:22:03,720 着水の直前 機長が聞きました 326 00:22:03,840 --> 00:22:05,720 〝他に何かできるか?〞 327 00:22:05,840 --> 00:22:08,880 私は答えました  〝何もできません〞 328 00:22:18,280 --> 00:22:22,560 窓から水面が     近づくのが見えました 329 00:22:24,880 --> 00:22:30,160 前の席にひざを立て掛け 赤ん坊を引き寄せました 330 00:22:31,320 --> 00:22:32,720 彼女は体を倒し 331 00:22:33,920 --> 00:22:35,640 機体は川の中へ 332 00:22:37,280 --> 00:22:39,760 大変な衝撃でした 333 00:22:44,920 --> 00:22:45,880 〝神よ〞 334 00:22:46,000 --> 00:22:49,240 〝赤ん坊を離さないよう  力をください〞 335 00:22:46,000 --> 00:22:49,240 ジム・ウィテカー 336 00:23:01,840 --> 00:23:02,920 その後は 337 00:23:04,880 --> 00:23:05,720 無です 338 00:23:10,280 --> 00:23:15,600 直後に水が足首の辺りまで 上がってきました 339 00:23:17,840 --> 00:23:20,560 それからは    まさに大混乱です 340 00:23:30,800 --> 00:23:34,000 窓には隙間が  できていたので 341 00:23:34,120 --> 00:23:36,320 水が下からだけでなく 342 00:23:34,120 --> 00:23:37,680 マーティン・ソーサ 343 00:23:36,440 --> 00:23:39,800 窓からも 流れ込んできました 344 00:23:40,640 --> 00:23:44,000 ベルトを外し  娘を抱えました 345 00:23:44,880 --> 00:23:49,280 娘は泣き叫び       私自身もおびえていました 346 00:23:52,520 --> 00:23:56,640 みんなパニックで 判断力を失っていました 347 00:23:55,760 --> 00:23:59,320 ブラッド・  ウェンツェル 348 00:23:56,880 --> 00:24:01,200 誰かが乗客たちに 指示を出す必要が 349 00:24:01,320 --> 00:24:03,440 あると思いました 350 00:24:04,440 --> 00:24:05,720 立ち上がれ 351 00:24:05,880 --> 00:24:08,200 立って前に進んで 352 00:24:08,320 --> 00:24:11,800 荷物を取ろうとする人に 叫びました 353 00:24:11,920 --> 00:24:14,720 〝荷物なんて    どうでもいい〞 354 00:24:17,760 --> 00:24:21,280 それでも        やめない人に言いました 355 00:24:21,400 --> 00:24:23,560 〝人が溺れてもいいのか?〞 356 00:24:24,120 --> 00:24:25,040 行って 357 00:24:26,800 --> 00:24:30,320 叫び続けました    〝行け 立ち止まるな〞 358 00:24:30,440 --> 00:24:31,800 〝飛行機を降りろ〞 359 00:24:33,280 --> 00:24:35,120 飛行機を降りろ 360 00:24:37,000 --> 00:24:40,360 抱えていた赤ん坊は 無事でした 361 00:24:41,960 --> 00:24:45,200 母親にその子を返しました 362 00:24:50,800 --> 00:24:52,160 そして〝行こう〞と 363 00:24:58,240 --> 00:25:01,720 息子を連れ      這って前に進みました 364 00:25:02,480 --> 00:25:03,440 通して 365 00:25:03,560 --> 00:25:07,760 仕方がありません   通路では人が押し合い 366 00:25:07,880 --> 00:25:10,800 潰される可能性が ありました 367 00:25:07,880 --> 00:25:10,800 テス・ソーサ 368 00:25:17,280 --> 00:25:20,440 でも途中から   進めなくなります 369 00:25:23,120 --> 00:25:26,560 誰もが私を      追い越していきました 370 00:25:26,680 --> 00:25:30,040 生き残りを懸けた 戦いなのです 371 00:25:32,560 --> 00:25:38,680 右を見ても左を見ても     人が座席によじ登っていました 372 00:25:39,800 --> 00:25:41,520 叫び声がしました 373 00:25:42,240 --> 00:25:46,200 1人の女性が 胸に赤ん坊を抱え 374 00:25:43,840 --> 00:25:47,480 ブラッド・  ウェンツェル 375 00:25:46,320 --> 00:25:49,360 おびえた顔を していました 376 00:25:49,560 --> 00:25:53,320 あんなにおびえた顔は 初めて見ました 377 00:25:58,800 --> 00:26:00,640 利己的な自分が 378 00:26:01,080 --> 00:26:05,800 〝飛行機を降りろ      出口はもう目の前だ〞と 379 00:26:05,920 --> 00:26:08,880 振り向くと     彼女が叫んでいます 380 00:26:14,200 --> 00:26:18,200 思い直しました     〝彼女を助けなかったら〞 381 00:26:18,960 --> 00:26:21,200 〝二度と熟睡できない〞 382 00:26:22,920 --> 00:26:25,640 行け そこをどいてくれ 383 00:26:25,760 --> 00:26:28,600 人をなぎ倒して戻りました 384 00:26:28,720 --> 00:26:29,960 どいてくれ 385 00:26:31,920 --> 00:26:32,760 前に行け 386 00:26:32,880 --> 00:26:34,680 みんなが道を空けず 387 00:26:35,440 --> 00:26:37,920 私は腹を立てました 388 00:26:38,120 --> 00:26:39,000 どけ 389 00:26:40,240 --> 00:26:44,000 2人を抱え         〝一緒に行こう〞と言いました 390 00:26:46,640 --> 00:26:50,960 おぼつかない足取りで 通路を歩きます 391 00:26:57,000 --> 00:26:59,080 彼女は気を失いました 392 00:26:59,200 --> 00:27:01,760 奥さん しっかり 393 00:27:03,960 --> 00:27:07,240 アドレナリンが  あふれ出しました 394 00:27:07,360 --> 00:27:09,840 それくらいの恐怖でした 395 00:27:07,360 --> 00:27:10,920 アイリーン・ シュレファー 396 00:27:09,960 --> 00:27:12,520 危険が 目の前まで来てると 397 00:27:12,640 --> 00:27:15,440 確信していました 398 00:27:23,880 --> 00:27:25,080 その時 電話が 399 00:27:28,440 --> 00:27:29,640 夫でした 400 00:27:30,040 --> 00:27:34,480 着陸したか聞かれ   水の中だと答えました 401 00:27:35,360 --> 00:27:40,080 水の中でも 点火する  危険はあると思ったので 402 00:27:40,200 --> 00:27:42,200 脱出しろと言いました 403 00:27:40,200 --> 00:27:42,200 デヴィッド・ シュレファー 404 00:27:42,320 --> 00:27:45,240 すぐ飛行機の外に出るんだ 405 00:27:45,880 --> 00:27:47,400 前に進みました 406 00:27:51,360 --> 00:27:54,320 ドアに人が押し寄せています 407 00:27:54,440 --> 00:27:57,640 私もその群れに加わりました 408 00:27:59,600 --> 00:28:03,440 ドアの外に出ると そこにあるのは 409 00:28:04,320 --> 00:28:05,280 混乱です 410 00:28:10,560 --> 00:28:13,640 水は冷たく    機体は沈んでいく 411 00:28:13,760 --> 00:28:16,920 燃料が漏れ      点火の危険があります 412 00:28:17,400 --> 00:28:20,000 遠くに行きたかった 413 00:28:21,640 --> 00:28:24,560 その時        後ろの人が動きました 414 00:28:27,320 --> 00:28:28,880 電話が切れました 415 00:28:29,440 --> 00:28:30,320 ちくしょう 416 00:28:36,320 --> 00:28:39,240 泥に はまったみたいでした 417 00:28:40,240 --> 00:28:43,040 冷たくて重かったんです 418 00:28:44,920 --> 00:28:48,840 翼の上に戻れるか  辺りを見回しました 419 00:28:50,640 --> 00:28:55,400 すると数人が        岸に向かって泳いでいました 420 00:29:00,040 --> 00:29:02,240 ボートが見えました 421 00:29:07,240 --> 00:29:09,440 よじ登ろうとしますが 422 00:29:09,560 --> 00:29:12,120 手が滑って登れません 423 00:29:17,160 --> 00:29:20,120 ようやく中に飛び込みました 424 00:29:22,000 --> 00:29:27,880 後ろにいた若い女性が     手足をジタバタさせていました 425 00:29:29,280 --> 00:29:30,600 パスポートが 426 00:29:30,720 --> 00:29:33,960 また水に落とされました 427 00:29:37,600 --> 00:29:41,240 アドレナリンが   噴き出した状態でも 428 00:29:41,360 --> 00:29:43,480 冷たい水は危険です 429 00:29:43,600 --> 00:29:46,200 手足の感覚を失いました 430 00:29:48,080 --> 00:29:51,600 すぐ助けが来ないと 溺れ死にます 431 00:29:57,360 --> 00:29:59,320 前に進むんだ 432 00:29:59,480 --> 00:30:03,880 出口に着くと       〝赤ちゃんよ〞と誰かが叫び 433 00:30:04,240 --> 00:30:05,720 抱き上げました 434 00:30:04,240 --> 00:30:05,720 ブラッド・  ウェンツェル 435 00:30:06,960 --> 00:30:07,800 大丈夫? 436 00:30:08,480 --> 00:30:11,720 それ以降      親子を見失いました 437 00:30:17,160 --> 00:30:19,160 外では人が密集し 438 00:30:19,840 --> 00:30:21,320 大混雑です 439 00:30:23,000 --> 00:30:28,880 翼の上は いっぱいで     ボートにしか場所がありません 440 00:30:31,360 --> 00:30:34,520 でもボートは翼の下でした 441 00:30:37,080 --> 00:30:38,640 ひっくり返します 442 00:30:39,000 --> 00:30:40,760 飛び乗りました 443 00:30:43,360 --> 00:30:45,600 奥まで這っていきます 444 00:30:46,480 --> 00:30:51,000 ボートが少し沈み    他の人が乗ってきました 445 00:30:52,360 --> 00:30:57,880 唯一 気掛かりだったのは  沈んでいく飛行機のことです 446 00:30:58,360 --> 00:31:01,720 〝みんな脱出したのか?  死者の数は?〞 447 00:31:02,880 --> 00:31:04,480 〝中では何が?〞 448 00:31:10,480 --> 00:31:12,200 人間は誰でも 449 00:31:12,640 --> 00:31:14,440 いつか死にます 450 00:31:12,640 --> 00:31:16,160 ヴァリー・コリンズ 451 00:31:14,560 --> 00:31:17,960 生き続ける人は どこにもいません 452 00:31:19,040 --> 00:31:21,320 でも今日だとは思いません 453 00:31:21,440 --> 00:31:26,360 いつだって明日や来月   来年があると思っています 454 00:31:26,760 --> 00:31:31,480 それが突然       当然ではなくなりました 455 00:31:37,160 --> 00:31:39,600 本当に悪夢のようでした 456 00:31:40,800 --> 00:31:46,520 狭い場所に閉じ込められて 逃げることもできません 457 00:31:47,600 --> 00:31:50,680 水は深くなり溺れる寸前です 458 00:31:52,920 --> 00:31:54,560 それだけは嫌 459 00:31:56,120 --> 00:31:58,880 でも我に返って思いました 460 00:31:59,000 --> 00:32:03,800 〝飛行機から降りなくちゃ  子供が3人もいるのよ〞 461 00:32:04,760 --> 00:32:07,880 後ろには行けません 前に進んで 462 00:32:08,000 --> 00:32:09,440 私は叫びました 463 00:32:09,560 --> 00:32:12,760 〝後ろには行けない  前に進んで〞 464 00:32:12,880 --> 00:32:17,160 それが私にできる 唯一のことでした 465 00:32:13,480 --> 00:32:17,160 ドリーン・ウェルシュ 客室乗務員 466 00:32:18,880 --> 00:32:21,000 私は ただ夢中になって 467 00:32:21,400 --> 00:32:24,400 押したり叫んだりしました 468 00:32:24,920 --> 00:32:31,400 前で立ち止まっている人たちを 何とか動かそうとしたんです 469 00:32:31,520 --> 00:32:34,840 前に進んで さあ早く! 470 00:32:38,960 --> 00:32:42,480 ふと見ると 非常口が開いていました 471 00:32:41,560 --> 00:32:45,080 マーティン・ソーサ 472 00:32:42,600 --> 00:32:46,160 通路の先が 明るくなっていたんです 473 00:32:49,440 --> 00:32:52,960 妻が息子を抱いて 立っていました 474 00:32:53,280 --> 00:32:55,000 ほっとしました 475 00:32:55,720 --> 00:32:58,320 妻は気を失うことなく 476 00:32:58,920 --> 00:33:01,440 腕の中の息子も無事です 477 00:33:02,120 --> 00:33:03,320 出血もない 478 00:33:07,960 --> 00:33:10,200 2人とも無言でした 479 00:33:11,800 --> 00:33:13,960 とにかく外に出ようと 480 00:33:20,520 --> 00:33:25,240 ひざまで冷たい水に漬かり 翼に立つなんて予想外です 481 00:33:25,360 --> 00:33:26,840 しかも子連れで 482 00:33:25,360 --> 00:33:26,840 テス・ソーサ 483 00:33:29,960 --> 00:33:31,960 叫び出しました 484 00:33:36,200 --> 00:33:40,680 誰かは分かりませんが ある男性が 485 00:33:40,800 --> 00:33:45,560 私を指して言いました  〝子供たちを受け取って〞 486 00:33:45,680 --> 00:33:50,440 こう思いました      〝私にもできることがある〞 487 00:33:54,560 --> 00:33:59,400 母親に向かって言いました 〝赤ちゃんを渡して〞 488 00:34:05,360 --> 00:34:07,960 他の乗客が息子を受け取り 489 00:34:08,080 --> 00:34:11,880 濡れた体を        みんなが温めてくれました 490 00:34:13,240 --> 00:34:15,400 次に娘を受け止め 491 00:34:17,840 --> 00:34:19,600 抱いてくれました 492 00:34:21,080 --> 00:34:26,120 まるで使命であるかのように しっかりと 493 00:34:32,160 --> 00:34:36,160 前に行く途中      救命胴衣を拾おうとして 494 00:34:36,360 --> 00:34:38,520 自分の足を見ました 495 00:34:41,200 --> 00:34:44,840 衝突の瞬間     とがった鉄の破片が 496 00:34:44,960 --> 00:34:49,560 足に刺さったようですが 気づきませんでした 497 00:34:50,600 --> 00:34:52,640 アドレナリンのせいね 498 00:34:55,720 --> 00:35:01,200 口から血が出ていることは まだ気づいていません 499 00:35:01,440 --> 00:35:03,280 ひどい姿でした 500 00:35:07,000 --> 00:35:10,440 滑り下りると    血が飛び散りました 501 00:35:11,400 --> 00:35:14,400 みんな驚いて私を見ました 502 00:35:19,520 --> 00:35:20,680 フェリーよ 503 00:35:21,880 --> 00:35:23,080 フェリーを見て 504 00:35:24,880 --> 00:35:26,640 ようやく誰かが 505 00:35:26,760 --> 00:35:30,080 助けてくれると 思いました 506 00:35:26,760 --> 00:35:30,240 アイリーン・ シュレファー 507 00:35:30,400 --> 00:35:32,120 安心しました 508 00:35:32,320 --> 00:35:33,720 ここよ 509 00:35:34,640 --> 00:35:35,880 早く来て 510 00:35:41,560 --> 00:35:43,120 でも次の危険が 511 00:35:43,960 --> 00:35:47,400 全員が          手を挙げて叫び出しました 512 00:35:47,520 --> 00:35:48,720 止まって! 513 00:35:50,720 --> 00:35:56,880 とてつもなく巨大な船が  目の前にやって来たのです 514 00:35:59,920 --> 00:36:01,320 止まりません 515 00:36:07,160 --> 00:36:11,320 フェリーにぶつかり また水に落ちました 516 00:36:16,160 --> 00:36:18,040 うんざりしました 517 00:36:18,400 --> 00:36:23,600 ようやく終わりかと思えば そうではなく 518 00:36:23,720 --> 00:36:27,040 またひどいことが 起こるのです 519 00:36:27,240 --> 00:36:32,720 そうして何度も不安と安心を 繰り返していました 520 00:36:38,160 --> 00:36:40,440 フェリーに乗るための 521 00:36:39,240 --> 00:36:42,680 シェイ・チルダーズ 522 00:36:40,560 --> 00:36:43,360 縄ばしごが 下りてきました 523 00:36:43,680 --> 00:36:48,640 つかんだ途端に     フェリーが後ろに下がり 524 00:36:49,040 --> 00:36:51,040 私は水に落ちました 525 00:36:59,480 --> 00:37:04,440 現場に近づくと        視界の端に赤い服が見えました 526 00:37:08,120 --> 00:37:13,680 彼女は ただ縄につかまり 登ろうともしていません 527 00:37:13,920 --> 00:37:18,040 私は言いました    〝あの人の救助が先だ〞 528 00:37:22,760 --> 00:37:24,880 水に飛び込みました 529 00:37:35,680 --> 00:37:38,680 名前を聞くと彼女は 〝シェイ〞と答え 530 00:37:37,160 --> 00:37:40,560 マイケル・  デラニー巡査 531 00:37:38,800 --> 00:37:42,560 私も名前を言い 救出を約束しました 532 00:37:42,920 --> 00:37:45,920 縄を登るのは  無理だと判断し 533 00:37:46,040 --> 00:37:48,200 手を離すよう言いました 534 00:37:48,640 --> 00:37:50,400 彼女は〝ひかれる〞と 535 00:37:50,720 --> 00:37:53,200 〝僕を信じて〞と言いました 536 00:37:54,440 --> 00:37:58,480 縄から手を離した 彼女の腕をつかみ 537 00:37:58,640 --> 00:38:01,080 仲間と懸命に泳ぎました 538 00:38:03,800 --> 00:38:07,240 近くのボートを目指しました 539 00:38:29,400 --> 00:38:32,400 彼女の救助はそこまでです 540 00:38:33,720 --> 00:38:35,720 次の救助に行きました 541 00:38:41,440 --> 00:38:45,600 ニューヨークから  シャーロットに向け 542 00:38:45,720 --> 00:38:47,920 出発した直後のこと 543 00:38:48,040 --> 00:38:53,920 USエアウェイズ1549便が 空中で惨事に見舞われました 544 00:38:55,400 --> 00:39:01,440 機体は155名を乗せたまま 川に着水した模様です 545 00:39:01,560 --> 00:39:03,840 事故のことを聞いて 546 00:39:03,960 --> 00:39:06,480 ケガ人が多いと 思いました 547 00:39:03,960 --> 00:39:07,560 ヒルダ・      ロケディエゲス医師 548 00:39:06,600 --> 00:39:07,920 たくさんの― 549 00:39:09,320 --> 00:39:12,920 死者や行方不明者も いるだろうと 550 00:39:13,040 --> 00:39:15,600 それくらいの事故でした 551 00:39:19,760 --> 00:39:24,440 それから別の場所を 見て回りました 552 00:39:24,880 --> 00:39:29,120 ケガをした乗客で     いっぱいだと思ったのです 553 00:39:32,480 --> 00:39:37,640 しかし実際に目にしたのは 想像していた光景と 554 00:39:37,800 --> 00:39:41,640 あまりにも違っていたのです 555 00:39:48,720 --> 00:39:52,080 人々は ただ座っていました 556 00:39:52,360 --> 00:39:55,560 毛布をかぶって  じっとしています 557 00:39:56,600 --> 00:39:58,120 凍ったかのように 558 00:40:03,680 --> 00:40:07,200 息遣いが聞こえるほど 静かでした 559 00:40:07,440 --> 00:40:11,320 赤ん坊の          かすかな泣き声が聞こえます 560 00:40:18,040 --> 00:40:21,240 首にカードを下げられました 561 00:40:21,360 --> 00:40:24,200 すぐに目的が分かりました 562 00:40:24,400 --> 00:40:25,680 人数確認です 563 00:40:24,400 --> 00:40:27,880 ブラッド・  ウェンツェル 564 00:40:27,000 --> 00:40:30,080 落ち着かない 気持ちでした 565 00:40:30,640 --> 00:40:33,920 生存者の数を  確かめるなんて 566 00:40:41,880 --> 00:40:44,320 突然 発表がありました 567 00:40:43,040 --> 00:40:46,440 ブラッド・  ウェンツェル 568 00:40:44,440 --> 00:40:47,760 〝信じられない  全員が無事だ〞 569 00:40:55,840 --> 00:40:59,160 人生の最もすばらしい 瞬間でした 570 00:40:59,280 --> 00:41:01,840 自分が奇跡の一部だなんて 571 00:41:03,000 --> 00:41:08,880 155名の人が墜落の危機に遭い 全員が無事でした 572 00:41:09,600 --> 00:41:11,680 現実とは思えない 573 00:41:12,520 --> 00:41:14,120 夢のようです 574 00:41:19,320 --> 00:41:20,960 水に長く漬かり 575 00:41:21,080 --> 00:41:24,720 低体温症で       吐き気をもよおしました 576 00:41:24,840 --> 00:41:27,880 病院での治療が必要でした 577 00:41:28,080 --> 00:41:33,120 救急車のところまで 担架で連れられる時 578 00:41:30,480 --> 00:41:33,920 パム・シーグル 579 00:41:33,240 --> 00:41:36,080 事の大きさに 気がつきました 580 00:41:36,200 --> 00:41:38,680 空にはヘリコプターが飛び 581 00:41:38,920 --> 00:41:42,120 マスコミが       フラッシュを浴びせます 582 00:41:43,120 --> 00:41:46,600 質問が飛びます     〝何があったんですか?〞 583 00:41:46,720 --> 00:41:50,120 何が起こったんですか? 生存者は? 584 00:41:50,360 --> 00:41:52,520 教えてください 585 00:41:52,920 --> 00:41:53,960 思いました 586 00:41:54,080 --> 00:41:58,480 〝こっちこそ          何があったか教えてほしい〞 587 00:42:01,360 --> 00:42:06,280 赤十字の毛布を見て    報道陣がカメラを向けます 588 00:42:06,400 --> 00:42:08,080 〝何が起こった?〞 589 00:42:08,640 --> 00:42:10,240 話を聞かせて 590 00:42:10,360 --> 00:42:12,200 私は言いました 591 00:42:12,640 --> 00:42:16,760 娘に父親がいるのは 機長のおかげです 592 00:42:19,960 --> 00:42:22,280 まさか そのセリフを 593 00:42:22,680 --> 00:42:26,120 その後        何ヵ月も言われるとは 594 00:42:28,040 --> 00:42:31,720 次の話題は        〝ハドソン川の奇跡〞です 595 00:42:31,840 --> 00:42:35,560 乗客が当時の状況を語ります 596 00:42:36,160 --> 00:42:38,120 〝34丁目の奇跡〞ならぬ 597 00:42:39,040 --> 00:42:41,600 〝ハドソン川の奇跡〞です 598 00:42:42,360 --> 00:42:46,160 あれは間違いなく 奇跡でした 599 00:42:43,400 --> 00:42:46,160 アイリーン・ シュレファー 600 00:42:47,360 --> 00:42:49,200 感謝しています 601 00:42:49,320 --> 00:42:52,120 でも悪いこともあります 602 00:42:52,240 --> 00:42:56,240 今でも悪夢を見るし 不安を感じます 603 00:43:02,240 --> 00:43:07,080 もしやり直せるなら    1549便には乗りません 604 00:43:07,240 --> 00:43:09,600 今でも つらいですから 605 00:43:10,080 --> 00:43:15,440 私が願っているのは   このような経験を通じて 606 00:43:15,560 --> 00:43:19,000 人間や母親として 向上すること 607 00:43:19,120 --> 00:43:22,400 妻や姉妹 娘としても 608 00:43:28,640 --> 00:43:30,960 あの日 私は幸運でした 609 00:43:31,080 --> 00:43:36,440 おかげで今も生きて 家族と一緒にいられます 610 00:43:36,800 --> 00:43:40,320 この人生で まだやることがある 611 00:43:43,040 --> 00:43:47,560 久しぶりに起きた いい出来事だったので 612 00:43:49,280 --> 00:43:52,440 世間が沸きました 613 00:43:54,320 --> 00:43:57,200 私自身も有頂天でした