1 00:00:06,666 --> 00:00:08,875 ‎NETFLIX オリジナルシリーズ 2 00:00:26,833 --> 00:00:30,666 ‎おぼれた巨人 3 00:00:36,958 --> 00:00:39,750 ‎しばらく閉鎖となり… 4 00:00:44,958 --> 00:00:49,875 ‎嵐が去った朝 ‎ある報告を受けた 5 00:00:49,958 --> 00:00:54,291 ‎漁師の発見したものを ‎町民が知る前のことである 6 00:00:55,041 --> 00:00:57,541 ‎科学者である同僚と私は 7 00:00:57,625 --> 00:01:02,041 ‎最初 誇張か ‎光による錯覚だと思った 8 00:01:02,875 --> 00:01:06,333 ‎しかし目撃者が ‎増えていったので⸺ 9 00:01:06,416 --> 00:01:09,916 ‎調査に乗り出したのだ 10 00:01:10,041 --> 00:01:12,791 ‎スティーブン 急いで 11 00:01:13,833 --> 00:01:15,166 ‎すぐ行く 12 00:01:16,875 --> 00:01:19,250 ‎60トンはあるぞ 13 00:01:19,333 --> 00:01:20,791 ‎80トンかも 14 00:01:20,875 --> 00:01:23,458 ‎骨だけで30トンはある 15 00:01:24,250 --> 00:01:29,833 巨大な骨格ゆえに 年齢の推定は困難だった 16 00:01:29,958 --> 00:01:32,375 しかし 口と鼻の感じから 17 00:01:32,458 --> 00:01:36,583 思慮深く謙虚な青年に 思われた 18 00:01:42,666 --> 00:01:46,291 ‎魅力的で ‎気品のある顔であり⸺ 19 00:01:46,375 --> 00:01:49,750 ‎巨人に備わる荒々しさと ‎矛盾する 20 00:01:54,625 --> 00:01:57,291 ‎彼の壮大で崇高な姿は 21 00:01:57,375 --> 00:02:02,625 ‎神話や叙事詩で描かれている ‎英雄さながらだ 22 00:02:02,708 --> 00:02:07,208 ‎様式化された人間大の像より ‎そう感じ得る 23 00:02:17,916 --> 00:02:22,791 ‎もちろん巨大さにも ‎心底 魅了されたが 24 00:02:22,875 --> 00:02:27,875 ‎何よりも彼の存在自体に ‎興味をそそられた 25 00:02:28,500 --> 00:02:31,375 ‎人生には ‎懐疑がつきものでも⸺ 26 00:02:31,458 --> 00:02:35,708 ‎この巨人は ‎絶対的な意味で存在する 27 00:02:36,333 --> 00:02:39,916 ‎そして気づかせてくれた 28 00:02:40,000 --> 00:02:45,750 ‎我々は不完全でちっぽけな ‎ミニチュアなのだと 29 00:02:47,875 --> 00:02:48,625 ‎見ろ 30 00:02:55,083 --> 00:02:56,750 ‎誰かな? 行こう 31 00:03:10,250 --> 00:03:12,541 ‎ゴムみたいだわ 32 00:03:31,458 --> 00:03:33,250 ‎上は どんな感じ? 33 00:03:36,000 --> 00:03:37,500 ‎面白い? 34 00:03:38,833 --> 00:03:41,000 ‎落ちちゃうでしょ 35 00:03:41,083 --> 00:03:43,291 ‎まったく怖がりだな 36 00:03:45,333 --> 00:03:48,166 ‎まるで巨人は ‎寝ているようで⸺ 37 00:03:48,625 --> 00:03:51,791 ‎今にも脚を閉じそうだった 38 00:03:51,875 --> 00:03:56,666 ‎そして群がるミニチュアを ‎潰しそうに思えた 39 00:04:04,125 --> 00:04:09,916 ‎しかし時が経つにつれ ‎夢見心地な気分は消え始めた 40 00:04:11,291 --> 00:04:14,000 ‎日が沈む前に帰った方がいい 41 00:04:14,208 --> 00:04:16,708 ‎ああ そうだな 42 00:04:24,458 --> 00:04:27,833 ‎次に海岸へ行ったのは3日後 43 00:04:33,125 --> 00:04:37,458 ‎関心があることを察した ‎同僚たちに 44 00:04:37,541 --> 00:04:41,416 ‎巨人の見張りを任されたのだ 45 00:04:41,750 --> 00:04:43,625 ‎不気味ではなかった 46 00:04:43,708 --> 00:04:47,916 ‎私の中では ‎巨人は生きていたからだ 47 00:04:49,208 --> 00:04:53,000 ‎周りに存在する ‎実際の人間以上にである 48 00:05:01,083 --> 00:05:03,333 ‎デカい野郎だ 49 00:05:03,916 --> 00:05:07,916 ‎ここから切れば ‎すぐ太ももの骨に届く 50 00:05:08,291 --> 00:05:10,333 ‎そして次は腰だ 51 00:05:10,541 --> 00:05:12,583 ‎残業になりそうだな 52 00:05:15,583 --> 00:05:20,000 ‎翌日は人の少ない時に ‎行きたくて⸺ 53 00:05:20,083 --> 00:05:23,083 ‎あえて夕方に海岸を訪れた 54 00:05:31,083 --> 00:05:35,541 ‎長い間 海水につかり ‎体が膨張したせいで⸺ 55 00:05:35,625 --> 00:05:38,291 ‎巨人の顔から若さが消えた 56 00:05:38,833 --> 00:05:42,416 ‎今では ブクブクに ‎なってしまい⸺ 57 00:05:42,500 --> 00:05:45,166 ‎腐敗する日が迫っている 58 00:05:47,708 --> 00:05:52,333 ‎これは容赦ない時に対する ‎降伏の始まりだ 59 00:05:52,750 --> 00:05:55,666 ‎人類はその中で生きている 60 00:05:57,125 --> 00:06:01,666 ‎見た目の変化で ‎私の中のためらいは消えた 61 00:06:01,750 --> 00:06:04,583 ‎この死せる生命体は 62 00:06:04,666 --> 00:06:08,541 ‎彼の遺体に触れる勇気を ‎くれたのだ 63 00:06:40,250 --> 00:06:42,000 ‎上から眺めると⸺ 64 00:06:42,083 --> 00:06:45,583 ‎巨人の最後の苦しみを ‎より痛感する 65 00:06:46,166 --> 00:06:49,583 ‎本人は無感覚であることも ‎痛ましい 66 00:06:57,500 --> 00:07:00,166 ‎ついには巨人の顔が 67 00:07:00,250 --> 00:07:03,583 ‎疲弊と無力感の仮面と化した 68 00:07:06,000 --> 00:07:11,875 ‎限りある命の者が至る渦に ‎のまれたのである 69 00:07:14,750 --> 00:07:20,458 ‎巨人の苦難は孤立により ‎さらに悲劇的となった 70 00:07:20,833 --> 00:07:24,708 ‎閑散とした岸にある ‎遺棄船のようだ 71 00:07:27,375 --> 00:07:30,041 ‎“何これ?”“存在の証明” 72 00:07:30,125 --> 00:07:33,958 ‎解体は略奪の始まりに ‎すぎなかった 73 00:07:35,333 --> 00:07:39,166 ‎2日後に ‎やっと気持ちを立て直し⸺ 74 00:07:39,250 --> 00:07:42,458 ‎夢のような光景の最後を ‎直視した 75 00:07:48,583 --> 00:07:50,416 ‎巨大な彼でも⸺ 76 00:07:50,958 --> 00:07:57,291 ‎屈辱的な扱いを受けた今 ‎人間的で弱い存在に見える 77 00:07:58,291 --> 00:08:02,416 ‎しかし その弱さが ‎抑圧された悪意を解放し 78 00:08:02,791 --> 00:08:07,583 ‎切断する度胸を ‎小さな生物に与えたのだ 79 00:08:12,541 --> 00:08:17,000 ‎翌日 海岸へ行くと ‎心の重荷が軽くなった 80 00:08:17,083 --> 00:08:19,750 ‎頭が切除されていたのだ 81 00:08:27,625 --> 00:08:30,833 ‎数週間後に海岸へ行くと⸺ 82 00:08:30,916 --> 00:08:35,250 ‎巨人から人間らしさが ‎消えていた 83 00:08:36,291 --> 00:08:37,291 ‎こんばんは 84 00:08:43,666 --> 00:08:48,041 ‎わずかに残っていた ‎巨人の特徴も 85 00:08:48,125 --> 00:08:50,125 ‎失われてしまった 86 00:08:50,208 --> 00:08:54,750 ‎そのため見物人が ‎ついに いなくなった 87 00:09:08,416 --> 00:09:12,708 ‎数ヵ月経ち ‎巨人が忘れ去られた頃 88 00:09:13,291 --> 00:09:17,625 ‎彼の様々な体の部位が ‎町に出回り始めた 89 00:09:25,083 --> 00:09:26,583 ‎ほとんどは骨である 90 00:09:26,583 --> 00:09:27,625 ‎ほとんどは骨である 91 00:09:26,583 --> 00:09:27,625 〝バラード精肉店〞 92 00:09:27,625 --> 00:09:28,625 〝バラード精肉店〞 93 00:09:28,625 --> 00:09:31,041 〝バラード精肉店〞 94 00:09:28,625 --> 00:09:31,041 ‎巨大だが ‎肉体のない断片の数々 95 00:09:31,041 --> 00:09:31,791 ‎巨大だが ‎肉体のない断片の数々 96 00:09:31,875 --> 00:09:35,541 ‎これらは ‎記憶の中の巨人よりも 97 00:09:35,625 --> 00:09:39,208 ‎彼の壮大さを ‎物語っているようだった 98 00:09:42,875 --> 00:09:47,541 ‎町の酒場やホテル ‎飲食店を調べれば⸺ 99 00:09:47,625 --> 00:09:54,541 ‎壁や暖炉に飾ってある巨人の ‎鼻や耳も見つかるであろう 100 00:09:55,333 --> 00:09:55,833 ‎さあ 入場券を 101 00:09:55,833 --> 00:09:57,208 ‎さあ 入場券を 102 00:09:55,833 --> 00:09:57,208 〝見せ物小屋〞 103 00:09:57,208 --> 00:09:57,291 〝見せ物小屋〞 104 00:09:57,291 --> 00:09:57,916 〝見せ物小屋〞 105 00:09:57,291 --> 00:09:57,916 ‎おい 出ていけ ‎見るならカネを払え! 106 00:09:57,916 --> 00:10:01,125 ‎おい 出ていけ ‎見るならカネを払え! 107 00:10:01,541 --> 00:10:07,375 ‎彼の男性器が運ばれた先は ‎北西の海岸を回るサーカス 108 00:10:07,458 --> 00:10:10,375 ‎見せ物小屋に ‎置かれたのである 109 00:10:11,166 --> 00:10:16,916 ‎かつて精力のあった男性器は ‎目を見張るほど巨大で 110 00:10:17,000 --> 00:10:19,875 ‎すっかり テントを独占 111 00:10:19,958 --> 00:10:23,833 ‎しかし クジラの性器と ‎見なされている 112 00:10:28,833 --> 00:10:31,791 ‎海岸にいた見物人でさえ⸺ 113 00:10:31,875 --> 00:10:36,833 ‎もう巨人を海の獣としてしか ‎覚えていない 114 00:10:38,083 --> 00:10:40,875 ‎しかし私の中では生きている 115 00:10:41,583 --> 00:10:43,916 ‎よく巨人の夢を見る 116 00:10:44,333 --> 00:10:50,041 ‎町の通りを大股で歩きながら ‎自分の断片を回収し⸺ 117 00:10:50,125 --> 00:10:52,916 ‎海へ戻っていくのだ 118 00:12:16,000 --> 00:12:17,916 ‎日本語字幕 内村 真希